司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2008年8月

8月 20 2008

シリーズ 個人再生⑧

 お久しぶりです。今回は2回目の面談についてです。

 2回目の面談をむかえるにあたって、前もって再生計画案と言う書類を裁判所に出しておかねばなりません。面談は、この再生計画案について審査するのが目的です。再生計画案とは個人再生のルールに従って減額された金額を、各債権者に対して、どのように支払っていくかを定めた書類です。

では、再生計画案における支払方法について説明しましょう。まず、支払年数は基本的には3年です。特別の事情がある場合は、最長5年まで認められる場合があります(常に認められる訳ではないので、3年と思っていた方が無難です)。支払回数は毎月払いか、3か月おきかを選べます。支払忘れを防ぐ為にも、私は毎月払いをすすめています。あと、少額債権(他の債権者に比べて特に少額の債権)には特例として一括払いが認められています。これは義務ではありませんから、同じように分割にしても構いません(ただ、月払いの金額が数百円になるような時は一括にした方が良いでしょう)。以上のような原則をふまえて再生計画案を作成します。

2回目の面談は、再生計画案が適法に作成されているかどうか、支払いに無理がないかどうかをチェックされます。実際には、計画案は事前に提出してありますので、再生委員も目を通してきています。面談では、簡単な確認だけで5分~10分くらいで済んでしまうことが多いです。(正直、2回目の面談は、やる必要があるのかなと思います。書類審査だけで済ませても良いのでは、というのが私の意見です) 前回に説明しましたが、裁判官の面談の場合は、再生計画案は書類審査になります。支部裁判所や地方の裁判所では、そもそも面談自体がありません。再生委員がついた時だけ2回も面談をするのは、あまりにも負担に違いがありすぎると思うのは私だけでしょうか。

 2回目の面談でも1回目と同じように、再生委員のOKが出ると「この再生計画案で問題無い」という報告書が出されます。そうすると、裁判所は「書面決議に付する決定」を出します。

書面決議とは、各債権者に向けて裁判所が、再生計画案と、その計画案に反対するものは送り返すように書かれた決議用紙を郵送して、一定期間内に返送されなかった債権者は賛成したとみなされる一種の投票行為です。この場合、住宅ローン特則を付けた場合の住宅ローン債権者は投票から除外されます。

書面決議期間が過ぎた後に、返送された反対票をカウントして、以下の条件を満たした場合は再生計画案は否決され、不認可となります。要するに個人再生は失敗したことになるのです。

その条件とは以下の二つです。①再生計画案で示された債権総額(減額された後の金額のことです)のうち、金額にして過半数の反対があった場合 ②再生計画案で示された債権者数のうち、半数以上の反対があった場合(金額ではなく、頭数を問題にしています)

ここだけ読まれると不安になる人も多いかもしれません。しかし、実際には反対をする債権者は、ほとんどいません。たまにいたとしても、上の条件を満たすほどの反対票が集まることは、ほとんどありません。少なくとも私が今まで扱った事件では一つもありませんでした。それは何故かと言うと、個人再生を反対して、つぶしても債権者には何のメリットもないからです。仮に個人再生が、つぶれたとしたら、その債務者が次に考えるのは自己破産です。債権者からしたら、破産されたら一銭も取れない訳ですから、それなら個人再生を認めて、いくらかでももらった方が良い訳です。そのような背景があるので、反対する債権者は実際には、ほとんどいないのです。

 実は、個人再生には2種類の手続があって、今まで説明してきた手続のことを小規模個人再生と言います。これ以外に、給与所得者再生という手続がありますが、あまり使われていません。給与所得者再生には書面決議がありません。一見、有利な手続に思えますが、残念ながら大きな不利益が一方にあります。それは、給与所得者再生では大抵の場合、支払総額が小規模個人再生よりも大きくなってしまうのです。要はたくさん払うことになる場合が多いのです。先ほども説明したように、書面決議は実際には反対する債権者は、ほとんどいません。それならば、支払総額が低い方が債務者にとって良い訳で、結局、小規模個人再生を選択するのが圧倒的に多くなる訳です。

 では、次回は書面決議を無事に通過した後の流れについて話しましょう。

 

 

より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック

http://www.hashiho.com/debt/kojinsaisei/

8月 05 2008

シリーズ 個人再生⑦

 前回からの続きです。申立以降の流れについて説明します。

 最初の書類審査がOKになると1回目の面談日が決められます。名古屋地裁本庁の場合、通常は再生委員が選任されますので、面談は再生委員と本人、それに司法書士が付き添うことになります。名古屋地裁本庁では司法書士の付き添いが認められていて同席することが可能です。個人再生のような複雑な手続を本人だけでやられては指導するのが大変だというのが裁判所や再生委員の考えなのでしょう。ちなみに面談の場所は裁判所です。当たり前だと思わないで下さい。東京では再生委員の事務所(要するに弁護士事務所)で面談をすることが多いと聞きます。

面談では、いろいろなことが聞かれますが、圧倒的に多くの時間を占めるのが「支払能力があるか」と言う点です。この辺りは特定調停と似ていますね。この面談で再生委員のOKが出ると、再生委員が裁判官に対して「問題無い」という報告書を出します。そうすると裁判官は事務的に開始決定を出すことになっています。

ちなみに運良く再生委員が選任されなかった場合は、1回目の面談は直接、裁判官とすることになります。この場合も司法書士の同席は認められています。質問の内容やその後の流れは再生委員がいる場合と同じです。ただ一つメリットがあって、裁判官と面談した場合は面談が1回だけで済みます。これは大きなメリットです。

あと、本庁以外の支部裁判所や地方の裁判所だと、そもそも再生委員がいないので面談自体がありません。裁判官が面談できるじゃないかと思われるかもしれませんが、何故か裁判官も面談しません(するところもあるかもしれませんので、事前に調べた方がいいですね)。要するに、これらの裁判所だと書類審査だけで手続が進んでいくのです。従って、個人再生に関しては裁判所によって、本人や司法書士の負担が全然違ってきます。故に裁判所によって費用を変えている司法書士が多いようです(当事務所でも、そうしています)。

 開始決定が出ると、債権者一覧表が各債権者に郵送されます。各債権者は一覧表に記載された金額に文句がある場合は、債権届を出すことが出来ます。債権届が出された場合、申立人は二つの選択をすることが出来ます。一つは何もせずに債権届の金額を認めることです。届けられた金額が債権額になります。もう一つは、債権届の金額に対して異議を出すことです。

異議を出すと、どちらの主張する金額が正しいのか決めなくてはなりませんから、その為の手続である評価申立が行われます。しかし、現実には異議を出すことは、ほとんどありません。何故かと言うと、500万円を超えない限り債権届を出されても総支払額に変化は無いからです。500万円までの支払額の決め方は、100万円または清算価値の、どちらか多い方ですから、債権額が変化しても支払額に影響がありません。利息制限法の利率に引き直した後の債権額が500万円を超えることは、めったにありませんから、異議を出すこともほとんど無い訳です。

 このようにして債権届出期間が終了した後は、いよいよ2回目の面談になります。続きは次回に譲りましょう。

より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック

http://www.hashiho.com/debt/kojinsaisei/