司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

7月 23rd, 2009

7月 23 2009

シリーズ 過払金① 過払いになる取引とは

 さて、今回からは過払金について説明していきましょう。

過払金は今、一番ホットな話題と言ってもよいでしょう。債務者に有利な最高裁判決が立て続けに出た結果、3年ほど前から空前の過払金ブームと呼ばれる現象が起きました。相談で最も件数の多いのも過払金に関することです。

しかし、あまりにも加熱したブームになった結果、ちまたでは怪しい情報も同時に増えてしまったのも事実です。素人の方には怪しい情報かどうかの区別がつかない場合も多いので、相談を受けていると、全く間違ったことを信じている人も大勢いるという状態になっています。

そこで、まずは過払金に対する正しい情報を、このブログで知ってもらおうと思います。これを読んだ皆さんは、今後は怪しい情報に惑わされないで下さい。また、怪しい情報に惑わされている知り合いがいたら、是非、教えてあげて下さい。

 それでは、まず過払いとは、どんな場合に発生するのか、ということです。

かなり有名になって、今では知っている人も増えてきましたが、過払いとは「出資法」と「利息制限法」という二つの法律の制限利率が異なっていることから発生します。

具体的には現状の出資法の制限利率は29.2%ですが、一般的な貸付金額である10万円以上100万円未満の取引の場合の利息制限法の制限利率は18%です。(利率は全て年利です)

この二つは一体、何が違うのかと言うと、出資法に違反すると刑事罰になりますが、利息制限法に違反しただけでは民事上無効になるだけだということです。

もう少し分かりやすく言うと、出資法に違反した業者は警察の捜査の対象になります。そもそも存在自体が違法な業者であって、正規の貸金業者とは呼べません。故に、出資法違反の業者のことを「ヤミ金」と呼びます。(ちなみに広告では出資法以内の利率をうたっておきながら、実際に借りてみると出資法をオーバーしていたという業者もいます。もちろん、これも「ヤミ金」です。)

では、利息制限法の利率をオーバーしているけど、出資法の利率は越えていない業者(消費者金融とクレジットは、ほとんどがこのパターンです)は、どうなるのでしょうか。

これが、いわゆるグレーゾーン金利と呼ばれているものです。消費者金融やクレジットは、このグレーゾーン金利で今まで稼いできた訳です。

先ほど利息制限法の利率を超えると民事上無効になると言いましたが、この意味を分かりやすく説明しましょう。

これは、裁判で争った場合、あるいは法律家が介入した場合は、超えた部分の利息は認められませんよ、ということです。

 では、超えた利息(以下、超過利息と呼びます)は実際に支払われている訳ですが、無効になったら既に支払った超過利息は、どうなるのでしょうか。この答えは、超過利息は利息ではなく元本を支払ったものとみなすのです。

するとどうなるか。超過利息を1回払えば、その時の元本がその分減ります。次の利息は減った元本に対してかかりますから、利率の超過分と減った元本分の両方の効果で2回目の超過利息は相乗効果で更に大きくなります。

2回目の超過利息も元本を支払ったことになりますから、更に元本が減ります。そして、3回目の支払いでは2回目で減った元本に対して利息がかかるので更に、、、、、という具合に相乗効果で元本が減っていく訳です。

 従って、上記のような計算をしていくと、支払い年数が長ければ長いほど元本は急カーブを描いて減っていきます。そこで長い取引の場合、ある時、元本が0円になる時が訪れます。この時が過払いなるかどうかの分岐点です。

元本が0円になっても、まだ取引が続いていた場合、その後の支払いは過払いとなります。要するに支払い超過となっている訳で、その分を取り戻せますよ、というのが過払金の根拠なのです。

元本0円になってからの支払いが長ければ長いほど、過払金の額も大きくなります。だから、過払いの相談を受けると法律家が、「取引年数は何年くらいですか」と真っ先に尋ねるのは、そういう理由があるからです。

ただし、過払いが発生した後も、過払金を打ち消すくらいの大きな額の借入をした場合は、過払いは消滅して、また元本が残ってしまいます。

例えば、10万円の過払いが発生している時に、30万円の借入をしてしまった場合は、差し引き20万円の元本が残ってしまいます。こうなると、また同じように、次の支払いの超過利息で元本を減らしていくことになります。元本が0円になるまでは、しばらく過払いは発生しません。

このように過払金の発生には、各人の取引傾向が強く影響を与えますので、一口に、「何年以上は過払いだ」とは言えないのです。まさに、5年で過払いになる人もいれば、10年でも過払いになっていない人もいます。

従って、あまり断定的に、「〇年以上は必ず過払いだ」などという広告を見つけたら、その事務所は信用しない方が良いでしょう。

 もちろん、断定的でなく、大体の傾向として取引が長い方が過払いになりやすいというのは、あるでしょう。

以下、私の経験で大体の傾向を述べると、5年未満で過払いになっている人は、ほとんどいません。非常に少ないと思います。

5年~7年で、たまに過払いの人が出てきます。でも、この取引年数だと割合としては半分以下です。

7年を超えてくると、一転して過払いの人の割合の方が多くなります。半分以上が過払いだと思います。

10年以上になると、今度は、ほとんどの人が過払いです。過払いにならない人は非常に少数になります。でも、少数でも一応、いるということは覚えておいて下さい。決して100%ではないのです。

 相談をしていると、2年か3年くらいの取引で、「過払いを取り戻して欲しい」と言ってくる人がいます。決して珍しくありません。こういう相談を受けていると、「ああ、間違った情報が氾濫しているんだなあ」と痛感します。その為にも、このブログで正しい情報を獲得して下さい。

 では次回は、「完済している取引について」です。