司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2010年6月

6月 24 2010

シリーズ 多重債務からの脱出④ 保険

 今回取り上げるのは日本人の大好きな保険です。前回のブログで生命保険と書きましたが、最近流行の民間の医療保険も含めて考えてみましょう。

 日本人は世界の先進国の中でも生命保険が好きな民族と言えるでしょう。1世帯の年間保険料の平均を取ると40万円以上になると言われています。これに医療保険も加えたら相当な金額になります。しかも、一旦、入ると長期間、支払が続きます。あまり長く払っていると固定費として意識の外になり、節約の対象から外れてしまいます。これが怖いのです。(途中で支払保険料が上がることもよくあります)。

保険に入っている人は何故か入ってから支払いが終わるまでのトータルの保険料を計算する人は少ないようです(保険会社もあまり教えていない気がします。教えると入る人が減ってしまうからではないでしょうか)。実は計算してみると莫大な金額を支払っていることに気がつきます。

今、生命保険に入りながら生活が苦しい人に考えて頂きたいのは、「生命保険というのは生活を犠牲にしてまでも払い続けるものなのか」ということです。頑張って生命保険を支払っているうちに多重債務になってしまったら本末転倒です。

それでも心配だという人には、もし世帯主が亡くなった場合、生命保険以外に何がもらえるかを冷静に見てみましょう。

まず、年金を納めている家庭なら遺族年金がもらえます。サラリーマンなら厚生年金に入っていますから結構な額がもらえるはずです。

自分は収入が低くて年金を真面目に払っていないという人は、生活保護がもらえる可能性があります。母子家庭で10歳未満の子どもが2人なら地域によっても金額は違いますが12万~16万円くらいでしょうか。

住宅ローンを組んでいる人は団体信用保険に強制加入しているはずですから、ローン債務者が死亡した場合は住宅ローンが完済されます。残された遺族は住宅に無料で住めるようになるわけです。このことを計算に入れていない人が結構います。(毎年1回の固定資産税は払う必要があります)

その他、母子家庭の場合、児童扶養手当、医療費補助、教育扶助資金給付制度などもあります。このように見てくると一般の日本人が心配する程ではないような気がしてきませんか。もちろん余裕がある時に保険に入るのは構いませんが、生活が苦しい時まで保険に入り続けるのは考え直した方が良いと私は思います。どうしても不安な人は都道府県の共済保険がオススメです。金額的にも非常に、お得になっていますし営利団体ではないので余剰金が発生すれば払い戻し金が期待できます。

 次に民間の医療保険については、生活が苦しい時には生命保険よりも優先的に解約すべきだと私は思います。何故なら、日本にはかなり充実した公的医療保険制度が既にあるからです。最近は負担割合が増えたとはいえ、それでも手厚い保険になっています。特に高額医療費の補助があるのが特筆すべき点です。

この制度は1月当たりに一定の金額以上の医療費がかかった場合は超えた部分が健康保険から支払われるというものです。意外に知らない人もいるので覚えておきましょう。ただ事前に手続をしないと一旦は請求額を支払ってから後に超えた分の還付を受けるという形になりますので注意が必要です。ただ、この場合でも請求額が払えない人には一時的な貸付制度があります。還付を受けたら貸付金を返還すればよいのです。

 では次回は住居費について取り上げます。

6月 17 2010

臨時ニュース 貸金業法の改正

 明日(6月18日)に改正貸金業法が完全施行されます。既に新聞・テレビなどでも報道されているように今回の改正の目玉は総量規制と呼ばれるものです。現在、取引をしている人に影響を与える可能性がありますので、これについてコメントしたいと思います。

総量規制とは、ある程度以上の借り入れを法律で強制的に禁止してしまおうという制度です。(自由主義に反するという意見もあります。私も正直この点は微妙だと思います)

具体的には年収の3分の1以上の借入に関しては、貸金業者の融資をストップするという制度です。(細かく言うと例外もありますが複雑になるので、一般の人は上記の理解で充分でしょう)。

この規制が始まって、最も困るであろうと予想されているのが専業主婦の皆さんです。何故なら専業主婦の場合、本人に収入が無い訳ですから夫の収入証明を提出しなくてはいけません。ところが、専業主婦が融資を受ける際に、夫に借り入れの事実を秘密にしている場合が多いのです。

新たに必要になる書類は収入証明だけではありません。配偶者の同意書、配偶者との婚姻を証明する書類なども必要になってきます。こうなると秘密にしている人は、夫に打ち明けるか、新たな融資を諦めるしかなくなります。

しかし、複数から借り入れをしている場合、新たな借入で返済にあてているケースが多いので、新たな借入が出来ないと返済に行き詰まってしまう人が大量に出る恐れがあります。この点が全く解決されていないので、マスコミ等で騒がれている訳です。

返済に行き詰まった時に最もやってはいけないのが、ヤミ金融に走ることです。ヤミ金融は違法業者なので総量規制には関係なく融資します。だからと言って消費者金融よりも利率ははるかに高いのですから、いずれ必ず行き詰まります。その時は、ヤミ金融に手を出す前よりも、もっと悪い状況になっていることは間違いありません。このブログを読んでいる人は絶対に手を出さないようにして下さい。

融資がストップして、どうにもならなくなったら、まず考えることは専門家に相談することです。債務整理に多少の抵抗があったとしても、ヤミ金融に手を出すよりは良いと考えて下さい。

6月末から7月にかけて多くの専業主婦の方が今まで述べてきたような困難な事態に直面する可能性が指摘されています。くれぐれも間違った選択をしないように注意して下さい。

6月 16 2010

シリーズ 多重債務からの脱出③ 自動車

 今回は家計の支出の中でも住居費と並んで大きな割合を占める自動車について考えてみましょう。

実は、自動車というのは想像以上に大きな支出になっています。車両本体が高額商品であることは、もちろんですが、それよりも家計に影響を与えるのが巨大な維持費です。自動車が他の商品と決定的に違うのは本体価格以外に維持費が、ばく大にかかってくることなのです。

だからと言って私は自動車を否定している訳ではありません。地域によっては自動車が無ければ生活出来ない場所もあるでしょう。仕事で自動車が必要な人も、もちろんいるでしょう。ここでは、自動車にかかっている費用について良く考えてもらって、少しでも負担を減らせるように参考にして欲しいのです。

では具体的に維持費が、どの位かかるのか分析してみましょう。ここでは愛知県で小型乗用車に乗っている場合で考えてみます。改めて見てみると驚いてしまう人も多いと思います。

まず、車検費用が2年ごとに約10万円かかります。1年で約5万円となります。(他に消耗品の交換などがあった場合は、追加費用が加算されます)

ほとんどの人が任意保険に入るでしょうから、これが毎年で約5万円です。(車両保険に入らなければ、もっと安くなるでしょうが、その時は、もし事故を起こした場合は大変な出費になることを覚悟しなければなりません。私はオススメしませんが)

次に駐車場代があります。都会の便利の良いところなら月に2万~3万円、郊外なら月に5000円~1万円でしょうか。これは毎月かかってきますから1年では、かなりの金額になってきます。

そして馬鹿にならないのが毎年納付する自動車税です。2リッター以下の小型車でも年間2万5000円~4万円支払うことになります。(車というのは税金の塊で主なものでもガソリン税、自動車税、自動車重量税と何段階にも分かれて取られています。最初にナンバーをもらう登録費用も役所に払うのだから利用者から見れば税金みたいなものですね)

他にオイル交換、バッテリー交換などの定期的なメンテナンス費用がかかります。年間に直すと1万5000円くらいでしょうか。

そして忘れてならないのがガソリン代と高速料金です。高速料金は今でこそ安くなってきましたが、ガソリン代は昔よりも高くなっています。走行距離の長い人なら月に2万円~3万円くらいかかるのではないでしょうか。

これらの維持費を1年にならしてみると、何とトータルで50万円近くかかっているのです。これは小型車の場合ですから大型車に乗っている場合は60万~70万かかっているでしょう。こうして計算すると、びっくりしてしまった人も多いのではないでしょうか。しかも、この維持費に加えて車両本体のローンも払っている人が多いのですから、以下に家計の負担が重いか分かって頂けたかと思います。

もし、都心の交通の便利な地域に住んでいる人なら思い切って自動車の無い生活を考えてみるのも良いと思います。その覚悟が出来れば、維持費とローンを合わせて年間で100万円近い負担が家計から消えるのです。この生活を10年続ければ自動車を持った時と比べて、何と1000万円もの余裕が家計に生まれることになります。どうでしょうか。考えてみる価値が出てきたと思いませんか。

ただし、この方法は郊外の交通の不便な地域の人は残念ながら使えません。これらの人の場合は、私は軽自動車への乗りかえをオススメします。理由は何と言っても維持費が安いからです。

それでも車好きな人は軽には抵抗があるという人もいるでしょう。そういう場合は次のように考えたらいかがでしょうか。「長い車人生の中で、一時くらい軽に乗ることがあっても良い。いつかまた収入が戻ったら好きな車に乗れば良い」と。このように考えれば、むしろ「いつかまた、好きな車に乗るぞ」と逆に励みになり頑張る意欲が沸いてきませんか。(是非、そうなって欲しいものです)

一方、家計が苦しい時に良く間違う方法に、「収入が減ったから中古車に買い換えよう。でも中古車なんだから前よりも、ちょっと良い車に乗ろう」というものです。これが何故、間違いかというと、中古車であろうと維持費は変わらないからです。むしろ前よりも大型車を選んでしまったら維持費は余計にかかってくることになります。本体価格を下げても家計の負担は大して変わらなかったり、それどころか負担が増える場合があるかもしれません。自動車という商品は常に本体価格と維持費の両方を念頭において考えなくてはなりませんので注意が必要です。

 では次回は生命保険について考えてみましょう。

6月 08 2010

シリーズ 多重債務からの脱出② 固定費の削減

 久々のシリーズ再開です。今回は家計の支出の削減についてですが、その中でも固定費の削減について考えてみます。

家計には固定費と変動費と大きく分けると二つの支出があります。このうち固定費とは毎月(毎年かもしれません)決まった額が出て行く支出のことで例えば税金や保険、教育費、車検費用、駐車場代、住宅ローンや賃貸料、新聞代などが代表的なものです。しかし、これ以外にも、その人にとって必ず毎月支出することが習慣になっていれば、それは固定費と考えるべきでしょう。例えば、飲み代やタバコ代、子どもの習い事、旅行代なども事実上、固定費になってしまっている人が多勢いるのではないでしょうか。

不思議なもので、人は固定費だと認識してしまうと、その費用は聖域となってしまい、削減の対象からはずれてしまうという習性があります。(誰でも思いあたるところがあるのではないでしょうか)。実は自分が削りたくないという気持ちが先にあるのですが、いつのまにか、「これは固定費なんだから削ることは出来ない」と最初から除外してしまうのです。

そこで次に始まるのが変動費の削減です。変動費とは月によって支出の金額が大きく変わる、あるいは支出しない月もあるという費用です。

もちろん変動費も削らないよりは削った方が良いのですが、たいていの場合、たいした支出の減額にはならない事が多いのです。何故なら、その人にとって、あまりコダワリがないからこそ変動費になっているので、人はコダワリがないことには大きな支出はしないものだからです。

従って、収入が急激に減ったときの家計の絞り込みに最も効果があるのは固定費の削減だということに気付かれると思います。しかし、「言うは安く行うは難し」のことわざにもあるように、これがなかなか大変で覚悟がいる為に、多くの人が支出の削減に失敗してしまうのです。

 では次回は固定費の中でも最大の部分を占める、自動車について考えてみましょう。