司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2011年4月

4月 30 2011

自己破産の際の自動車の扱い

 名古屋地裁における自己破産同時廃止の際の自動車の扱いが変更になりました。

具体的には国産自動車の無価値基準(一定の条件を満たせば無価値と判断してもらえる)が新車登録から5年だったのが7年と延長されたのです。以前よりも評価が厳しくなったと言えるでしょう。

以前は登録から5年以上経過していれば、国産車であれば無条件で無価値と認められていました(ある意味、甘い基準だったと言えます)。故に、ローンが残っていなければ、5年以上の車は手元に残った訳です。今回、この期間が7年に延びてしまいました。(もっとも7年以内でも、車自体に価値が無いことを証明できれば車を残すことは可能です。無論、ローンが残っていないことは絶対条件です)

また、以前とは違って、7年経過していても無条件には認められなくなっています。新たに新車時の価格が300万円以下という条件が加わりました。(レクサスのような外国車なみの高級車が増えてきたのが原因と思われます) しかも、300万円以下であっても、中古車市場で高額の取引がされている可能性がある場合は例え7年経過していても査定書を裁判所に提出しなくてはならないという規定も加えられました。(随分と裁判所が疑り深くなったようです)

今回の変更により、高額の国産車を所有している場合は、以前よりも処分の可能性が高まったと言えるでしょう。

 

4月 22 2011

臨時ニュース 丸和商事倒産その2

 丸和商事の倒産は民事再生という手続によって行われることになりました。武富士の倒産は会社更生という手続によって行われています。何故、異なる手続になったのか考えてみたいと思います。

 民事再生と会社更生の最も大きな違いは、届出期間内に届けなかった場合に救済が受けられるかどうかです。

民事再生の場合、旧クレディアの例でも明らかなように、やむを得ない事情(過払いであることを知らなかったなど)で届出期間内に間に合わなかった場合は、期間を過ぎた後も配当を受け取ることが可能となっている点です。故に、届出期間の周知に関しては、新聞等の広告でも許されていました。(間に合わなかった場合の不利益が少ない為)

一方、会社更生の場合は、届出期間を過ぎてしまうと一切の救済は認められていません。配当を受け取ることは不可能になってしまいます。これが為に、届出期間の周知は徹底することを裁判所から求められます。配当を受け取る権利が無くなってしまう以上、あらゆる方法を使って全国に知らせる必要がある訳です。

武富士の場合で言うと、TVコマーシャルを流したり、過払いになっている顧客に対しATMで届出の必要を知らせたり、あるいは既に完済して取引が終了している元顧客に対しても電話連絡等で知らせたりしています。当然ながら、かなりの時間と費用がかかることになります。

今回、丸和商事からの説明によれば、民事再生を選択したのは、上記のような徹底した周知を行う為には莫大な費用がかかる為(TVコマーシャルだけでも相当な費用でしょう)、費用負担に耐えられない可能性があるからということです。

結果的には債務者にとって民事再生の方が有利な点が多い為、喜ばしい結論だと思います。届出期間を終了しても配当が受け取れる可能性がある方が、ありがたいことは確かです。最も、期間終了後も認められる為には「やむを得ない事情」が必要ですから、過払いであることを知っていながら、ただのサボリで届出をしないというのは止めておきましょう。

 最近の情勢からして、今後も貸金業者の破綻は続くでしょうから、これからは倒産の方法が、民事再生か会社更生かが注目すべきポイントとなりそうです。(会社の規模が大きいところほど会社更生を選ぶ傾向があるようです)

4月 12 2011

臨時ニュース 丸和商事倒産

 本日は予定を変更して丸和商事の話題です。

中堅消費者金融の丸和商事(ニコニコクレジット)が平成23年4月8日付けで、東京地方裁判所に民事再生を申し立て、事実上、倒産しました。

丸和は静岡県掛川市に本社を置く消費者金融で、主に東海地方を地盤に業務を行っていました。私の地元の愛知県では割とポピュラーな業者の一つです。(関東や関西ではマイナーかもしれません)。

静岡県には、もう一つクレディアという消費者金融があり、ここは一足早く平成19年に民事再生を申し立て一度、倒産しております。その後、フロックスと名前を換え(正確にはフロックスという会社を新しく作って、そこに業務を承継させて)破綻後の対応をしております。

これで静岡県の主な消費者金融2社が破綻したことになります。東海地方では結構、インパクトのある事件です。

クレディアの時は、最終的に40%の配当がありました。これは、その後の破綻業者の対応を見ると結構マシな数字であり、果たして丸和が、これだけの配当を確保できるかどうかは未知数です。(私としては期待したいですが)

いずれにしても、今後、債権届出期間が設けられて債権届を呼びかけることになると思われます。クレディアの時は届出期間満了後も救済されましたが、今度も同じように救済されるとは限りません。最悪の場合も想定して、届出期間内に債権届を提出するようにしましょう。

4月 05 2011

オリコの取引履歴

 オリコ(オリエントコーポレーション)は以前から取引履歴に問題のある会社でした。最近はマシになっていますが、それでも完全に改善されたとは言えません。以下、オリコの取引履歴の何が問題なのかを説明します。

 オリコの取引履歴は長期間の取引がある場合、取引当初の入金額(債務者の支払額)が実際の支払額よりも少なく表示されているのです。

最近でこそ、当初の入金額が違うということを別の文書で明らかにするようになってきていますが、それも、ここ数年のことです。私が事務所を始めた頃は、それすら明らかにせず、平気で少ない金額を表示した履歴だけを送ってきていました。

私は、かなり早い時期から依頼人の預金通帳と照らし合わせて引き落とし金額と履歴の金額が違うことに気が付いていましたが、実際には、そこまで確認する専門家は少数派で、少ない支払額のままで過払金を請求していたケースも世の中には多かったのです。昔は過払請求自体が珍しかったので、そんな杜撰な処理でも許されていたのです。

 現在は、オリコの方から、金額が違うことを別の文書で明らかにしていますので、さすがに訂正してから計算している専門家が多いとは思いますが、完全に安心して良いとは残念ながら言えません。一応、オリコの過払請求をする人は注意した方が良いでしょう。

しかし、これも考えてみれば、おかしな話で、そもそも、オリコの方が最初から正しい支払額の取引履歴を送ってよこせば、それで済む話なのです。にもかかわらず、オリコは、わざわざ別の文書で古い時期の入金に関しては、別の入金記録から計算したものが正しい金額なので、専門家の方で勝手に計算して訂正してくれと書いてあります。

何度も言いますが、こんな計算を相手にやらせるオリコの方が、おかしいのです。最初から計算した上で正しい履歴を送れば良いだけです。事実、他の貸金業者は全て最初から正しい取引履歴を送ってきます。保存期間が過ぎたから残っていないという業者はありますが、間違った金額を載せてくるのは今やオリコだけです。(昔はセントラルファイナンスも少ない金額で送ってきましたが、合併してセディナになってからは正しい履歴を送ってくるようになりました。やれば出来るじゃないかという良い見本です)

 一般の人はクレジット会社は消費者金融に比べて、そんなことはしないのじゃないかと思っている人が多いようですが、事実は全然違います。むしろ、取引履歴に関しては、消費者金融の方が誠実なくらいです。昭和の時から履歴が出てくるのは圧倒的に消費者金融の方で、クレジットは昭和になると、もう、ほとんどの業者が「保存期間が切れていて残っていないから開示できない」と言ってきます。

その中でも最も問題のあるオリコの対応ですが、まさに少しでも過払金を減らす為に相手に面倒な計算を押し付けて、あわよくば怠慢な専門家にあたったら見落としてもらえるかもしれないという効果を狙っているとしか思えません。

専門家ですら面倒な計算ですから、素人がオリコの取引履歴を見たら、まんまとオリコの罠にはまってしまう可能性が高いと私は見ています。オリコと長期間の取引がある人は自分で過払請求はやらない方が良いのではないかと私は思います。

 では次回は、自己破産の時の自動車の扱いについてです。