司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

9月 4th, 2012

9月 04 2012

会社破産②

会社の経営者が破産を決断するのは、個人よりも難しい場合が多いです。何故なら、自分一人だけの問題に留まらないからです。従業員にとっても取引先にとっても、会社が無くなるというのは大変な事態ですから、なかなか決められないのも無理からぬことでしょう。
しかし、この決断の遅れが原因で取り返しのつかないことになりやすいのも、また会社破産の大きな特徴なのです。

まず、会社破産には個人破産よりも多額の費用が必要です。裁判所の預納金や法律家への報酬などで100万円を超えることも珍しくありません。(前にもブログで書きましたが、事務手続きの大変さを考えたら決して割高ではありません。しかし、絶対額で大きいのは事実です)。しかも、会社破産の場合、代表者個人の破産もセットで行うのが通常ですから、個人破産の預納金や費用もかかってくるわけです。

ずるずると破産の決断を引き延ばして、手形の不渡りなどの決定的な要因により、ついに決心した時には会社にお金が残っていなくて、そもそも裁判所の預納金も確保できなかった、などということになりかねません。

「資金繰りが苦しいから破産するのに、お金が必要なんておかしい」という声が聞こえてきそうですが、これが現実です(個人的には医療における健康保険のような国家的な制度を破産にも用意するべきだろうと思います)。だからこそ、会社破産は早めの決断が必要なのです。

他には、決断が遅れることによって、偏頗弁済が発生しやすくなることがあげられます。偏頗弁済とは、「債権者平等の原則」に反する支払いのことです。破産では、「債権者平等の原則」により、特定の債権者に対して多く支払うことを禁じています。法律上は、消費者金融も、なじみの取引先も同じように扱わなくてはいけません。

資金に余裕がある時は問題ありませんが、資金繰りが苦しくなってくると、つい、なじみの取引先に優遇して支払ってしまったりするものです。これが後に破産手続で問題になります。

会社破産の場合、破産管財人が選任されます。個人破産同時廃止よりも厳しい審査をされます。破産管財人が上記の偏頗弁済を見つけたら、否認権を行使される可能性が高いでしょう。この場合、なじみの取引先から強制的に支払った金額を取り返すことになります。当然、裁判所に与える印象も悪くなるでしょう。

このようなことが起こらない為にも、やはり早めの決断が大切なのです。