10月
31
2013
債務整理の仕事をしていると、借金について日常的に考えていますので、一般の人よりも詳しくなってきます。私が普段目にしているのは、もちろん家計の借金についてです。しかし、良くテレビや新聞で「国家の借金」について話題になることがあります。これは、果たして「家計の借金」と同じに考えてよいのでしょうか。
結論から申し上げると、「国家の借金」は「家計の借金」とはその性質が全く異なります。ところが性質が全く異なるにもかかわらず、テレビのコメンテーターの中には、これを同じように説明する人が多いのに驚きます。
最も代表的なのは、「Aさんの家計では年収300万円なのに借金が900万円もあります。これでは払っていけないので、いずれ破綻しますよね。日本国家も同じように国家の収入である税収の何倍も借金がありますから、いずれ日本は破綻します」という説明です。国家を家計と同じと考えてしまうと、つい納得してしまいますね。
しかし、国家財政は家計とは全く違います。何故なら国家には「通貨発行」をする権利が与えられているからです。ようは足りなければお金を刷ることができる訳です。
具体的には、国債を発行して借金をしても、その国債を日本銀行が通貨を発行して買い取ってしまえば、日本銀行は日本政府の子会社なので、買い取った国債の返済は不要になってしまうのです。
一般人からしたら、まことにうらやましいシステムですが、本来、これが政府というものです。政府発行の日本円で普段の生活をしている以上、文句を言っても始まりません。
こういう説明をするとすぐに、「じゃあ、政府はいくらでも借金ができるのか?」と聞いてくる人がいますが、もちろん限界はあります。それはインフレ率です。
インフレとは物に対してお金の量が多すぎる時に発生する経済現象です。インフレがあまりにも激しくなると国民生活が破壊されますから、政府としてはこれは防がなくてはなりません。政府が借金を増やして中央銀行が通貨を発行し続けるとお金の量が増えていきますから、いずれインフレ率が上昇して政府は通貨発行を止めなくてはならなくなります。
裏を返せば、インフレ率がたいして上がっていない局面では、政府が国債を発行して中央銀行が通貨を増やしても、たいして問題は起こりません。少なくとも国家財政の破綻などは起こりません。現在の日本はこれに当てはまります。
現在の日本はインフレとは真逆の現象であるデフレに苦しんでいます。デフレとは物に対してお金が足りない現象ですから、日銀の通貨発行はむしろ正しい政策です。ならば、今の日本は借金を増やしても大きな問題は起こらない状態だと言えます。
すると、前回も説明したような必要な公共事業があるのに、「国の借金が多すぎるから公共事業など止めろ」とか、「このままだと国家財政が破綻する」などの言い分は間違いだということが分かるでしょう。
このように「国家の借金」と「家計の借金」は全く意味が違います。この違いを覚えておくと、テレビや新聞のおかしなコメントのウソを見抜けるようになるでしょう。
☆ちなみに地方自治体(都道府県や市町村)に関しては、家計や企業と同じように通貨発行権がありませんので、普通に破綻します。従って、北海道の夕張市が破綻したからと言って、国家財政が破綻するとは全く言えないのです。(夕張市は財政が厳しいからと言って日本円を発行することは出来ません)
10月
22
2013
アベノミクス効果で、ようやく明るい兆しが見えてきた日本経済でしたが、残念ながら来年4月の消費税増税が決まってしまいました。このままいけばデフレ脱却も近いかと思っていた矢先だったので、一時的に気分が落ち込んでしまったのは事実です。
確かに消費税増税は経済にはマイナスに働くでしょう。しかし、増税法案自体を決めたのは民主党の野田内閣でしたから、まあ責めるとすれば本来は昨年の野田内閣に責任があると言えます。(安倍さんは昨年に決まった法案に従ったにすぎません。早い話が野田さんの決めた法案の尻拭いをしているということになります)
増税で景気が落ち込むと言えば、1997年の橋本龍太郎内閣が思い出されますが、あの時は増税とプラスして公共投資の大幅カットや社会保障費のカットなども同時にやりましたから、これが景気悪化をよりひどくしたと言われています。安倍内閣はこれを教訓にして、せめて公共投資の増額や社会保障費の維持などはしていくべきでしょう。
公共投資の増額と言うと目を吊り上げて反対する人がたまにいますが、私はこれはおかしいと思っています。だって必要な公共事業というのは確実に存在するからです。反対している人だって、公共事業の結果作られた道路を使ったり橋を渡ったり空港を使ったりしている訳ですから。本当に反対するんだったら、そういうものは使わないで生活するべきですね。(まあ無理でしょうけど)
かつて無駄な公共事業があったからと言って、今回も無駄だと決め付けるのは明らかにおかしな態度です。だいたい今の日本には必要な公共事業がたくさんあります。
一つは、東北の復興事業
これが無駄だと言う人は、まさかいませんよね。まだ復興されてない場所は一杯あります。むしろ公共事業を加速させるべきでしょう。
二つ目は、東京オリンピックの準備事業
これも反対する人はいないんじゃないでしょうか。オリンピックは7年後にはやってくる訳ですから、会場の整備などを怠ったら日本は世界の評判を落とします。
三つ目は、道路や橋やトンネルのメンテナンス
昨年のトンネル崩落事故を覚えている人は多いと思います。日本の道路や橋やトンネルは高度成長時代に作られた物が多いため、そろそろ耐用年数が切れているものが多いそうです。これを全国でやるだけでも相当な公共事業が必要なんじゃないでしょうか。
以上のように、今の日本には無駄な公共事業なんてしている暇が無いほど、必要な公共事業がたくさんある訳です。だったら公共投資を増やすのは、むしろ正義なんじゃないでしょうか。
よく消費税を増税したんだから公共投資を削れとか言っている人がテレビなどに出てきますが、あの人達は実に無責任です。あの人達の言うとおりにして、「東北の復興が遅れたら」、「東京オリンピックに間に合わなかったら」、「道路や橋やトンネルが通れなくなったら」、彼らは責任が取れるのでしょうか。(まあ、責任なんて取る気が無いから好き勝手言ってるんでしょうけど)
ましてや消費税増税と公共投資の削減をセットでやって大不景気に陥れた97年の悪しき前例がある訳です。景気が悪化したら苦しむのは国民の方ですから、むしろ国民は国会議員に向かって、「増税した以上、景気を落ち込ませないように充分に公共投資をしろ。今なら必要な事業があるから、そっちを優先的にやれ」と言わなければなりません。
幸い安倍内閣は「国土強靭化」というスローガンを掲げていますから、メンテナンスや東北復興などに力を入れる方向性はあるようです。ならば予算をケチらないで、積極的にすすめていってもらいたいものです。
10月
08
2013
先日、約40万円弱の債権回収の相談がありました。この相談者は最初、法テラスに連絡して弁護士を何人か紹介されたそうです。ところが、まともに相談にのってくれた弁護士は結局見つからず、結局、ネットで検索して当事務所にたどりついたそうです。(こういうことがあるから、ネットによる情報公開は大切なのです)
全く法テラスは一体何をしているのでしょうか。この相談者にとっては余分な手間と時間を取られ、さらに引き受けてくれる法律家はいるんだろうかという余分な不安も抱えることになり、はっきり言ってマイナスの影響しか与えていないという印象でした。
紹介された弁護士は非常に冷たい対応だったそうです(金額が低かったからでしょう)。40万円の回収に着手金を30万円要求されたり(間接的に断っているのと同じです)、代理人としての回収を希望しているのに「自分でやれば」とすすめられたりとか。
私が相談にのって詳しく説明した後、「希望されるなら引き受けます」と言ったら、非常に感謝して、引き受けること前提で話をしてくれた人は初めてだと言っていました。
それにしても、いかにも一般市民の味方のような顔をして、こんな対応しかできないのでは、法テラスの存在価値などないんじゃないでしょうか。最初からネットで探して相談に来ていれば、この人は不快な思いをせずにすんだ訳ですから、むしろ有害だとも考えられます。
繰り返しますが、このような対応をしているようでは、法テラスの先行きは暗いと言わざるを得ません。引き受ける気が無いのなら最初から紹介すべきではないのです。それこそ、「140万円以内なら司法書士を、お探し下さい」と案内する方が、よほど市民のためではないか思います。
最近はテレビコマーシャルなども流れるようになって、一般に認知されるようになってきた法テラスですが、認知が高まったということは社会的責任も高まったということです。現状では認知に見合った責任を果たしているとは言い難い状況のようです。「出来ないものまで引き受ける」体質は早急に改善して頂きたいものです。
10月
02
2013
債務整理、特に自己破産や個人再生を検討されている相談者が、よく勘違いしていることに、「家族の財産は、どうなるのか」ということです。
相談していると、家族の収入を必要以上に低くく見せようとしたり、家族の車や不動産について聞くと、口ごもったりする場合が珍しくありません。これは、「家族の収入や財産について話したら、それが影響を受けるんじゃないか」と心配されているからだと思いますが、実はそのような心配はいりません。
債務整理において、「保証人になっていない限り」家族の収入や財産が影響を受けることはないのです。よくドラマや映画などで貸金業者が怒鳴り込んできて、家族に支払いを強要している場面が出てきますが、あれは法律的には完全に違法行為になります。保証人ではない家族には支払義務は全くないのです。
しかし、ドラマや映画などの影響は思ったよりも大きくて、例えば破産を考えている人は、家族の財産も全部処分しなければならないと本気で思っていたりしますので、まずは、「そんなことはない」ということを説明するのに結構な時間がかかったりします。
だからと言って、「じゃあ、事前に家族に財産を移転した後に破産すればいいんじゃないか」と考える人がいるかもしれませんが、残念ながら、そううまくはいきません。
裁判所もその辺は分かっていますので、直前の財産移転には神経を尖らせてきます。裁判所の命令で、「移転した財産を元に戻すように」指示されることもあります。世の中、上手い話はそうないということです。
まあ、1年以上前に移転されている場合は、よほど大きな金額でなければ裁判所もうるさくはないと思いますが、移転日が申立日に近ければ近いほど、相当厳しくチェックされることは覚悟しておいた方が良いでしょう。
一方で、最初から家族のものだと明らかな財産については、問題なく債務整理の範囲外になります。そのことで迷っている人がいたら、ご心配は無用ですから、専門家に相談してみましょう。