司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2015年11月

11月 18 2015

残業代を取り返そう⑤ 意外な展開

以前ブログで、「中小企業でも請求金額によっては、郵便請求のみで支払ってくる場合がある」という話をしました。今回は、まさに、それに当てはまる事例を紹介しましょう。

愛媛県に本社があり名古屋に支店がある会社に対する残業代請求の相談がありました。支店の規模は従業員10人以内という小規模な会社です。勤務形態は、出張が非常に多く、しかも一晩、車を走らせて早朝に相手先に着かなければならないなど、相当なハードワークです。ただ、その分、残業代もそこそこ支払われており、未払い分を計算すると約30万円ほどでした。(ちなみに、この依頼人はハードワークに耐えられず、すぐ辞めてしまったので、請求期間は短く5カ月ほどでした)

当初、私は、「小規模な会社だから、郵便請求だけでは払ってこないだろう」と考えて、長期戦の覚悟をしていました。依頼人から裁判用の委任状ももらっていたほどです。

ところが実際に郵便請求をしてみると、回答には若干、時間がかかりましたが、何と満額回答だったのです。正直、この展開は意外でした。

満額回答だった理由が、「請求金額が少額だったから」なのか、それとも「会社の方針だった」のかは実際には分かりません。ただ、私は前者ではないかと推測しています。

いずれにしても、依頼人にとって非常に満足のいく結果になったことは間違いありません。長く仕事をしていると、こういう全てがうまく運ぶパターンにも出会うものです。印象に残った事例でした。

11月 18 2015

残業代を取り返そう④ 業務日報と推定計算

タイムカードが途中までしか無くて、その代わり「業務日報」が、たくさん残っているという相談がありました。

実際に書類を拝見すると、1年くらい勤めて、タイムカードは半年分くらい手元にあって、他には業務日報が勤務日数の8割くらい残っているという状態でした。また、業務日報には退勤時刻は書いてありましたが、出勤時刻は書かれていませんでした。

上記のような証拠でも、もちろん残業代請求は可能です。業務日報は会社が関与している書類ですから証拠能力は高いと言えます。ただ、今回の場合、出勤時刻は、どうなるのでしょうか。

この依頼人の場合、出勤時刻は、いつも同じ時刻で統一していました。そのことは半年間のタイムカードで証明できます。ですから、特に問題なく、タイムカードが無い期間も同じ時刻で計算しました。(この点で、会社側からの反論はありませんでした)

では、タイムカードも業務日報も無い日付については、どうでしょう。業務日報は8割くらいしか手元に無いので、残りの2割は証拠が無いことになります。

この場合は推定計算というものをします。証拠が残っている日付から、だいたい平均したら、この位の時刻には出退勤しているという推定をして時刻を決めるのです。

では、推定計算は、争いになった場合、どの程度、認められるのでしょうか。

例えば、証拠があまりにも少ない日数しか残っていない場合は、推定計算の確度が下がりますから、会社側も簡単には認めないでしょうし、裁判になった時も減額を求められる確率が上がるでしょう。

しかし、今回のように、証拠が8割もあって、残りの2割を推定しました、というような場合は、相当程度認められるというのが私の実感です。

実際に、このケースでは、郵便による請求のみで、会社側が支払ってきました。

どこまで推定計算が認められるかというのは、正直なところ、ケースバイケースですが、証拠が半分以上あるなら、してみる価値はあると思います。

11月 17 2015

残業代を取り返そう③ 請求金額

以前に、内容証明で支払ってくるかどうかは会社の規模によると書きましたが、それ以外にも、左右される要素があります。それは請求する残業代の金額です。

私の経験では、少額の請求の場合は、たとえ中小企業であっても、内容証明で支払ってくる確率が上がります(100%ではありません。念の為)。

逆に大企業であっても、高額の請求をすると、内容証明だけでは支払わないケースも見られます。

会社側の立場から見ると、少額の請求で争っても、時間と費用の無駄だと考えてもおかしくはないでしょう。

では、いくら位が、内容証明で支払うか、その後も争うかのラインかという問題があります。

これは、「会社によって異なる」というのが最も正確な回答です。ただ、残業代請求を何件もやっていると、だいたいの目途のようなものが経験上分かってきます。

私の経験では、100万円以内だと、内容証明で支払ってくる確率が上がると感じています。(もちろん例外もあります。あくまで確率の話です)

ただし、同じ内容証明でも、支払わなければ次は裁判が待っていると相手方に思わせなければ、上記の確率はもっと下がります。その為には、裁判まで考えている事務所に依頼することが重要だと思います。(例えば行政書士さんの場合は、裁判書類作成権限がありませんので、当然、会社に与えるプレッシャーが低くなり、上記の確率は下がる可能性があります)