司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

9月 27th, 2016

9月 27 2016

借金の消滅時効期間は5年か10年か  時効(時効援用7)

借金の消滅時効期間は大きく分けて5年の場合と10年の場合があります。それぞれ、どのような場合に5年になり、10年になるのでしょうか。

まず、借りた側と貸した側の双方ともが個人の場合は、借金の消滅時効期間は10年となります。この「双方とも」というところがポイントです。

一方、借りた側または貸した側の、どちらか片方が会社または個人事業主だった場合、法律上、「商事債権」という扱いになり、消滅時効期間は5年に短縮されます。

では実務上はどうかと言うと、圧倒的に5年の場合が多いです。債務整理の相談で、貸した側が個人と言うケースはほとんどありません。大抵は、貸金業者から借りた借金の相談で占められています。貸金業者は会社か個人事業主ですから、結果的に5年ということになります。

しかし、事例としては少ないですが、10年になる場合もあります。例えば、以下のようなケースです。

(1)信用金庫から個人が借りた場合
最高裁昭和63年10月18日判決において、「信用金庫の行う業務は営利を目的とするものではないというべきであるから、信用金庫は商法上の商人には当たらないと解するのが相当である」と判示されており、これにより信用金庫は会社ではないとされています。したがって、会社ではない信用金庫が貸主である貸金の消滅時効期間は、10年になります。
ただし、信用金庫が貸主の場合であっても、会社か個人事業主が営業の為に借りた場合については、商事債権となりますので、時効期間は5年となります。
ちなみに一般の銀行については会社ですから、誰が借りても5年です。

(2)住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の住宅ローン
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)は、会社ではありませんので、住宅金融支援機構の住宅ローンの時効期間は、10年になります。

(3)信用保証協会の求償権(代わって請求する権利)
信用保証協会が主債務者に代わって債務の弁済をした場合、主債務者に対して求償権を取得することになります。そして、求償債権の消滅時効は、信用保証協会が代位弁済をした時点から進行します。
信用保証協会は会社ではありません(最高裁昭和60年2月12日判決)ので、信用保証協会の求償権の時効期間は、通常の債権の時間と同様に10年となります。ただし、信用保証協会が、商人である主債務者(たとえば、個人事業者など)の委託に基づいて保証したときは、求償権は商事債権となり(最高裁昭42年10月6日判決)、時効期間は5年となります。
現実には、委託に基づいて保証しているケースが多いので、5年になることが多いです。
ちなみに、民間の保証会社が保証している場合は、会社ですから当然に5年になります。