司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2022年5月

5月 25 2022

リンク債権回収の「請求書」時効(102)

リンク債権回収から届く請求書

リンク債権回収からの請求を放置していると「請求書」というタイトルの書面が届くことがあります。内容はだいたい以下のとおりです。

リンク債権回収の請求書の内容

他の債権回収業者に比べると内容はとてもシンプルで表現もていねいです。

「このまま放置されると一層の信用低下につながり、遅延損害金も加算されるので、あなたの不利益になりますよ。つきましては請求金額を直ちにお支払いください。」ということが書かれて、他には契約日や契約内容などの請求債権の情報が記載されています。

また、元の借入業者の表示は「日立キャピタル」などが多い印象ですね(もちろん他の業者の場合もあると思います)。

リンク債権回収の請求書の特徴

通常は「期限までに支払いも連絡もない場合は、法的手段を取ります」などの脅し文句や、「期限までに連絡して和解を結べば請求金額を減額します」などの甘い言葉が書かれていることが多いのですが、リンク債権回収の請求書にはそのような言葉はありません。

これは債権回収を専門にしている業者にしては珍しく、とてもシンプルな書面となっています。

リンク債権回収の請求書が届いた時の解決法

脅し文句や甘い言葉が無いシンプルな内容なので、逆に信用できると思って連絡したり支払ってしまう人がいるかもしれませんが、それは危険です。

連絡すれば誘導されて不利益なことを約束させられる可能性がありますし、支払いをすれば時効での解決が困難になります。

5年以上支払いが無い場合は消滅時効で解決できる可能性が高いので、まずは専門家に相談しましょう。

消滅時効について、より詳しい情報が知りたい場合は消滅時効のページをクリック

リンク債権回収について、他のブログ記事が読みたい場合は、リンク債権回収の不当請求のページ をクリック

5月 13 2022

貸付停止措置と過払金の消滅時効 過払金請求(70)

過払金の消滅時効

貸金業者に対して過払金請求をすると、できるだけ減額しようとしてきます(営利企業ですから、ある意味予想できる行動です)。その時に最も多く主張してくるのが「この部分は時効だから払わない」というものです。

最近の貸金業者における過払金の時効の主張には、大きく分けて以下の2種類があります。

  1. 取引が途中で分断されているため、古い取引の終了時から10年以上経過している。だから古い取引で発生している過払金については消滅時効が成立しているので支払わない。
  2. 取引の途中で貸付停止措置が取られている。従って特段の事情に当たるので、貸付停止措置よりも前の取引で発生している過払金については消滅時効が成立しているので支払わない

1.の主張については、これまでも何回か取り上げてきたので、今回は2.の貸付停止措置による時効の主張について解説したいと思います。

貸付停止措置とは

貸付停止措置とは、貸金業者が「もうこれ以上は貸せない」と判断して、追加の貸付を停止する措置のことです。貸付停止措置がなされる理由としては、以下のようなものが考えられます。

  1. 信用状況の悪化(支払いが何度も遅れるなど)
  2. 仕事の退職
  3. 借りた当初からの支払延滞
  4. 高齢であること
  5. 新たな分割和解契約を結ぶ

などです。

貸付停止措置が取られると、「過払金充当合意がある取引であっても特段の事情に当たるので個別に時効が進行する」と貸金業者は反論をしてきます。

過払金充当合意とは(ちょっと難しいかも。分からない時は結論だけ読んでください)

最高裁判所の判断によれば過払金充当合意とは「発生した過払金を、その後の新たな貸付金に充当する合意」のことです。この合意は貸金契約書には書かれていませんが、貸金業者との取引内容を合理的に解釈すれば認められる、と判断されています。

例えば、過払金がある時点で5万円発生して、その後すぐに3万円借りたとしたら、借りた時点で過払金5万円は貸付金に充当されて2万円になりますよ、という意味です。

素人の方から見ると一見当たり前に思えるかもしれません。しかし、過払金充当合意が無ければ、過払金5万円と新たな貸付3万円は別個に存在していて、過払金5万円は独立して時効期間が進行することになり、債務者にとって非常に不利になります。

(最高裁判所は、例外的に「特段の事情」がある場合は、取引が終了する前に過払金の消滅時効が進行すると判断しています)

一方、最高裁判所の言う「特段の事情」が無ければ、過払金充当合意によって取引が続く限り過払金は確定せず、最後の取引が行われた時点から過払金全額の時効が進行することになります。これならば一部の金額が時効で減額されるということにはなりません。

最高裁判所の言う「特段の事情」とは

最高裁判所は、「過払金充当合意は新たな借入金債務の発生が見込まれる限り、過払金をその都度清算しないという趣旨を含む」と判断しています。

これは裏を返せば、「新たな借入金債務の発生が見込まれなくなったら」過払金は発生する度に清算することになるので、消滅時効も個別に発生した時から進行する、ということになる訳です。

貸付停止措置は特段の事情に当たるのか

貸金業者としては特段の事情が認められた方が過払金を減額できるので、「当社は〇年〇月〇日に貸付停止措置を行ったので新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった、これは最高裁判所の言う特段の事情に当たる。よって〇年〇月〇日以前の過払金は時効により消滅している」と強硬に反論してくるケースが多く見られます。

しかし実際には、この貸金業者の反論が特段の事情と認められる場合は、それほど多くはありません。

貸付停止措置があっても特段の事情とは認められない場合

単に「信用状況の悪化」や「仕事の退職」などで貸付を停止した場合などは、特段の事情に当たるとする根拠としては弱いと思われます。なぜなら、その後返済される見込みができた場合は新たに貸付を開始しているケースがほとんどだからです(停止は一時的なものと考えられるからです)。

「信用状況の悪化」や「仕事の退職」などの理由で貸付停止措置が取られたのならば、貸金業者の反論をひっくり返せる可能性は高いと思いますから、あきらめてはいけません。(もちろん反論に反論をぶつけていくことになるので、交渉や裁判が長引くことは覚悟しましょう)

特段の事情が認められる可能性が高い場合

途中で新たな分割和解契約を結んでしまったり、貸金業者が貸付業務を廃止して回収のみを行うようになったりした場合は、新たな貸付が行われる可能性は無いと考えられるので、特段の事情に当たると判断される可能性は高いでしょう。この場合は貸金業者の時効の主張を受け入れた方が良いかもしれません。

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