司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

8月 21 2020

農地の相続 相続登記(22)

農地とは

不動産の登記における農地とは、法務局で取得する登記事項証明書の「地目」の欄に「田」または「畑」と記載されている土地のことを言います。実際には耕作が行われていなくて農地として使われていなかったとしても、地目が田や畑になっていれば農地とみなされます。

農地は売買や贈与の時は農地法の許可が必要

国が定めたルールで、農地は勝手に他人に渡してはいけないことになっています。食料を生産する大事な土地なので、農業以外の目的で利用する人に自由に渡してしまうと、食料生産がどんどん減ってしまいます。

これを防ぐために農地法という法律が作られ、農地の売買や贈与には許可が必要と言うルールになっているのです。農地法の許可証は法務局で登記申請する時の必要書類になっていますので、添付しないと審査が通りません。

農地の相続には許可は不要です

ただし相続の場合は例外として、農地法の許可は不要という取り扱いになっています。
相続の場合は後を継いで農業を続ける確率も高いですし、法律上、亡くなった瞬間に相続人に所有権が移ると考えられているので、許可を条件にすることが難しいという理由もあります。

(マメ知識)
相続人が複数いる場合は遺産分割協議が済むまで相続人のものにならないように思うかもしれませんが、法的には、分割協議で決まった相続人に所有権が移る日付は故人の死亡日になります。分割協議が終了した日ではないのです。

農地を相続した後、売却したい時は許可が必要

最近は農家の相続でも相続人は都会にいて、農地を相続しても使いみちが無いから売却したいという相談も増えています。この時にネックになるのが農地法の許可です。

農地法の許可を取り扱うのは地元の役所の農業委員会ですが、基本的には農地として使ってくれる人が買主でないと、なかなか許可を出してもらえません。食料生産のための農地をできるだけ減らさないというのが農地法の趣旨だからです。

農地以外にして売却したい時は農地転用の許可

農地の地目を例えば「宅地」などに変更することを農地転用と言います。農地転用ができれば農家以外の人にも自由に売却することが可能です。しかし、農地転用するにも許可が必要なのです。
農地転用は比較的住宅街に近い農地などは認められやすい傾向がありますが、周りが全て農地のような環境では認められる可能性は低いです。

農地の移転の日付は許可された日

通常の不動産売買の場合、決済日が所有権移転の日付になることが多いです。しかし、農地の売買の場合は農地法の許可が降りないと所有権が移転しません。もし許可が降りた日が決済日よりも後だった場合は、所有権移転の日付は許可が降りた日になります。

(マメ知識)
よく名義変更と言う言葉を使いますが法的には正確ではありません。正式な用語は所有権移転と言います。登記事項証明書でも所有権移転と書かれています。法的には、所有権がAさんからBさんに移転したという考え方をするのです。

農地の相続は気を付けよう

農地を相続した場合、そのまま農家を続けるのならば問題ありませんが、不要だから売却したいと考えた場合、農地法の許可の問題があります。早めに専門家に相談した方が良いでしょう。

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