司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

12月 19 2025

長期相続登記等未了土地の法定相続人情報 相続登記㊶

Q 長期相続登記等未了土地とは何ですか?

A 長期間、遺産分割協議や相続登記が放置されていて現在の所有者が登記簿からは不明になっている土地が数多くあります。その中で法務局が法定相続人に相続登記をするように促す通知を出した土地を長期相続登記等未了土地と言います。
長期相続登記等未了土地は登記簿に付記登記として記載されますので、登記簿を確認すれば分かるようになっています。

Q 確か相続登記が義務化されたと思ったのですが、今後は解消していくのでは?

A 今後は少しずつ解消していくでしょう。しかし全国には非常に多くの長期相続登記等未了土地が存在するので、解消を促進するために新たに設けられたのが法定相続人情報と言う制度です。

Q 法定相続人情報とは法定相続情報一覧図のことでしょうか?

A いいえ違います。名称が似ているので勘違いする人も多いと思いますが、全く異なる制度です(もう少し区別しやすい名称にした方が良いように個人的には思いますが)。

Q では法定相続人情報とは、どんな制度なのですか?

A 法定相続人情報とは、長期相続登記等未了土地に指定されて通知が出された土地については、法務局が亡くなっている登記名義人の戸籍等を調べて法定相続人の関係図を作成してくれるという非常にありがたい制度です。
通常は相続関係図は相続人が自分で戸籍等の調査をして作成するか、司法書士に依頼して作成してもらうかになります。しかし、長期相続登記等未了土地の通知をもらった場合には、その必要が無くなるわけです。

Q では法定相続人情報を取得するには、どうすれば良いのでしょうか?

A 法定相続人情報の依頼書を法務局に提出して取得することができます。費用は無料です。しかも管轄ではない法務局で取得することも可能になっています。ここまで優遇するのは役所では珍しいですね。その位、所有者が不明の土地を無くすことが重要な課題になっているということでしょう。

Q 他にも長期相続登記等未了土地の相続登記で優遇されていることはありますか?

A はい、あります。上記に添付した登記簿の写真を見て頂くと、長期相続登記等未了土地の付記登記に「作成番号」と言う記載が見つかります。相続登記をする時に、この作成番号を法務局に提供すると何と通常は必要な戸籍や住民票などの書類は不要になるのです。これは大きな優遇措置ですね。

Q 長期相続登記等未了土地の相続登記の流れを教えてもらえますか?

A はい。順番に流れを説明しましょう。
①法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知」が届く。

(法定相続人が複数の場合は任意の一人に届きます)
②法務局に依頼書を提出して法定相続人情報を取得する。
③法務局で該当する土地の登記事項証明書を取得する。
(司法書士に依頼するとオンラインで登記情報を取得します)
④取得した法定相続人情報で、他の法定相続人を確認する。
⑤法定相続人全員の遺産分割協議で、土地を相続する相続人を決める。

(複数で共有にするのも可能ですが、売却の時に不利になる可能性があります。
分配したい場合は一人に名義を変更して、売却してから分配する方法がオススメです)
⑥登記申請の必要書類の収集と作成をする。

(作成番号を提供すれば、一定の戸籍・住民票は省略可能です)
⑦不動産を管轄する法務局に相続登記を申請する。

(相続登記は管轄外の申請はできません)

Q 流れは分かりました。自分でもできますか?

A 長期相続登記等未了土地の相続は放置している間に相続人が増えていくパターンがほとんどなので、法定相続人が通常の場合よりも多くなるのが一般的です。すると戸籍や住民票以外にも必要となる書類も多く準備も大変になります。慣れている司法書士がやっても「大変だ」と思うケースも珍しくありません。ましてや一般の人がやり遂げるのは相当に厳しいと思います。法務局から通知が届いたら、相続登記に詳しい専門家にご相談されることをお勧めします。

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