11月 09 2017
死後事務委任契約とは?(任意後見④)
任意後見契約とセットで契約されることが最も多いのが公正証書遺言です。
その次に多いのが、死後事務委任契約です。死後事務委任契約は公正証書でなくても結ぶことが可能なので、任意後見契約を結んだ後に、しばらくしてから新たに契約される場合も珍しくありません。
死後事務委任という名前から想像できると思いますが、死後事務の具体的な内容は、以下のようなことになります。
委任する死後事務の具体的な内容
自分が死んだあとのことは、あまり考えたくないのが普通かもしれません。
けれど、それを考えて書面に残すことで、スムーズに事が運びます。
「立つ鳥跡を濁さず」ということですね。
それならば、エンディングノートでも良いのではないかと思いますよね。
しかし、あくまでもその人の思いをノートに記したものなので、法的効力がありません。
すると、エンディングノートには書いてあっても、残された人たちが話し合って、亡くなった本人の意思とは違うお葬式をすることも充分考えられるのです。
委任する死後事務の具体的な内容は、葬儀・納骨・埋葬・供養などを本人の希望通りにやってもらうために、細かく取り決めておきます。死亡時に連絡して欲しい人の指定や、葬儀会社や寺や墓地などを指定することもできますし、これらに使う費用の上限などを定めておくことも可能です。
死後事務のメインになりますね。
もう1つは、死後の後始末に当たる部分です。死亡した時点での未払いだった各種費用(施設利用費や入院費、光熱費や通信費など)の支払い、家財の処分方法の取り決め、役所等への届出業務の代理、などを定めておくことです。
こまごまとしたことになりますが、役所等への届出の代理などは、きちんと定めておかないと、何もことが進まなくなって、困ることがよくあります。
死後事務委任が威力を発揮するとき
こんなことは親族が行えば良いじゃないかと思った人もいるかもしれませんが、信頼できる親族が近くにはいない、というケースも少子高齢化の時代には珍しいことではなくなっています。
仮に近所に親しい友人がいたとしても、友人はあくまで法律上は他人なので、親切心で死後事務を手伝おうとしても、葬儀会社も施設も病院も役所も友人を代理人とは認めないのが普通です。つまり、友人は善意で動こうとしても動けないという状態に陥ります。
こんなときには死後事務委任契約が威力を発揮します。死後事務委任契約書があれば、友人は契約書を見せることで相手方に本人の代理人と認めてもらえます。死後事務をスムーズに進めることができるのです。
近くに頼れそうな友人もいないという場合は、司法書士などの専門家に死後事務を依頼することも可能です。
死後事務委任の重要ポイント
また、死後事務委任をする場合に重要なポイントとして、費用の問題があります。本人が死亡して相続が開始すると銀行は口座を凍結してしまうので、死後事務の費用が賄えなくなる可能性があります。
これを解決しておかなくてはなりません。
遺産分割協議を経て相続人が確定するのは結構時間がかかるのが普通ですが、死後事務は本人死亡後にすぐに費用が発生しますので、どうしても費用の問題が発生します。死後事務委任契約は、この費用の問題も解決してくれます。
良く行われる方法としては、一定の預り金を本人の生前に死後事務の受任者に渡しておいて、その旨を契約書に記載して、預り証を別途作成して契約書と一緒に閉じこんでおきます。
注意点としては、預り証は法的にきちんとしたものを作成しないと、贈与税がかけられる可能性があるということです。
トラブルを避けるためには、専門家に作成を依頼するのが良いですね。
他人にお金を渡すのが心配な場合は、本人名義の預り金口座を別途開設して、死亡後に死後事務の費用として、受任者がその口座から引き出すことが出来るように契約書に記載しておく、という方法もあります。
信用している人であっても、万が一の心配をせずに済むのは、預り金口座の別途開設ですね。
このような方法で死後の事務を滞りなく進めていけるように締結するのが、死後事務委任契約です。
遺言にしても、死後事務委任にしても、あるいは任意後見にしても、どこかのテンプレートを見てそれを見本として作成して終わってしまう人がいますが、本当は一度専門家の目を通した方が良いのになぁと思います。
ちょっとした一言が無かったりするだけで、後々とんでもないトラブルが発生する事例を私たち専門家は、よく目にしているからです。
その事例は、またいつか別のブログで……。












