司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

10月 06 2020

遺言が無くてトラブルになりやすい事例 (5) 遺言(23)

5:40 PM 遺言

今回は、遺言が無いためにトラブルになりやすい事例の五つ目のお話です。

遺産分割で大変なことになるケースとして、特定の相続人が音信不通の場合があります。

例えば、兄弟が複数いて一人がとても素行が悪く、途中で家を飛び出してから音信不通でどこにいるかも分からない、というようなケースです。

この場合、遺言が残されていないと大変困ったことが起こります。
音信不通の子どもも法定相続人の一人なので、その子を抜きにして遺産分割協議を行うことはできません。仮にその子を除いた協議書を作っても相続手続には使えません。
従って、探し出す必要がでてきます。

仮に見つかっても、相当に相続人同士の仲が悪くなっていることが考えられます。飛び出した子が法定相続分の取得をきっちりと主張してきた場合、「今さら何を言ってるのか」と他の相続人は考えるでしょうから、遺産分割協議は相当に揉めるでしょう。家庭裁判所に持ち込まれるかもしれません。

(マメ知識)
このケースで家庭裁判所の遺産分割調停に持ち込まれた場合、音信不通だった子の法定相続分が認められる可能性が高いです。経験上、昔の素行不良や音信不通の経緯などは、あまり考慮されないことが多いです。理不尽だと思われるかもしれませんが、家庭裁判所はできる限り法定相続分で分けようとする傾向があるということは覚えておいた方が良いでしょう

探しても見つからなかった場合はもっと大変です。家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てなければなりません。申立てには費用も時間もかかります。
その後、選任された財産管理人を含めて遺産分割協議を行います。この時、財産管理人は法的に不在者の法定相続分を主張する義務がありますので、間違いなく音信不通の子の法定相続分を主張します。法定相続分が確保できなければ協議書に印鑑は押さないという態度に出るでしょう。

このように音信不通の子が見つかっても見つからなくても、遺産分割は非常に大変なことになります。ですから、このようなケースでは必ず遺言を残しておくべきです。遺言があれば、音信不通の子を除いた状態で相続手続を進めていくことができます。残された相続人のためにも遺言を書いておきましょう。

(マメ知識)失踪宣告
映画やドラマなどにたまに登場する失踪宣告という制度があります。生死不明で音信不通の状態が7年以上続いた場合、失踪宣告を使うことによって、法的に死亡したとみなされる制度です。
音信不通が7年以上ならば不在者財産管理人ではなく失踪宣告を利用するのが一般的です。

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