9月 09 2021
権利証を失くした時の本人確認証明 生前贈与⑨
権利証を失くしたら(相続の場合)
相続登記で権利証を失くしても通常の手続が可能です。なぜなら相続登記の場合、権利証は必要書類に含まれていないからです。理由は、相続は本人が既に亡くなっているため、本人確認の1つである権利証は必ずしも必要ではないからです。
ただし、亡くなってから長期間放置されていた相続登記の場合、本人の住民票の除票が保存期間が過ぎていて取得できない場合があり、その時は代わりに権利証が必要になることがあります。
権利証を失くしたら(生前贈与や売買の場合)
生前贈与や売買の登記では、登記義務者(不動産を渡す人のこと)の権利証は絶対に必要な書類です。理由は、権利証を持っていることが登記義務者本人であると推定される根拠の一つになっているからです。なぜなら権利証は再発行がされない書類なので、本人しか持っていないだろうと予想されるためです。
ですから我々司法書士は登記完了後に権利証を渡す時、「大切に保管してください。できれば金庫などに入れておくと良いと思います」と伝えます。
よって、もし権利証を失くした状態で生前贈与や売買の登記をしようとすると、通常の手続では行うことができません。
生前贈与や売買における本人確認証明
そこで登場するのが本人確認証明という書類です。本人確認証明とは司法書士が「登記義務者は本人に間違いない。更に不動産を渡す意思があるのも間違いない」ということを書類に細かく記載して、職印を押して保証する書面です。いわば司法書士が権利証が無い登記義務者に対して保証人になるようなものだ、と思って頂ければ分かり易いかと思います。本人確認証明は司法書士に重大な責任を負わせているのです。
本人確認証明は厳格な確認が必要です
権利証を失くしているということは登記義務者本人であるという推定が働かないケースと言えます。実際に他人が登記義務者になりすまして「権利証を失くした」と言って売買をして、代金を受け取ったら雲隠れしてしまったという事件が起こっています。
そのため法務局も権利証が無いケースには神経質になっていて、権利証がある場合に比べて相当に厳格な確認を義務付けています。
厳格な確認とは
例えば、
- テレビ電話によるリモート面談の禁止
- 身分証明は本人から提示
- 電気・ガス・電話などの明細の確認
2021年9月現在、本人確認証明では今流行のリモート面談は認められていません。必ず直接会わなくてはいけません。
身分証明は面談の際に本人から提示を受けて、その場で本人と顔写真を比べて違和感が無いかを確認することになっています。
最近数カ月の電気・ガス・電話などの請求明細の名義が本人になっているかを確認することになっています。ただし明細は家族の名義になっている場合もあるので、その時は別の方法を考えます。
本人確認証明以外の方法(事前通知制度)
権利証を失くした時の生前贈与や売買の登記で、本人確認証明以外の方法も存在します。それは以前のブログで説明したことのある事前通知制度です。
2回目なので詳しい内容の説明は省きますが、事前通知制度を使えば本人確認証明は不要になります。どうしても本人確認証明を使いたくない事情がある時は検討することになるでしょう。
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