4月
07
2020
家屋の名義を子どもに移す場合
親が土地付きの一戸建てを所有している場合、相続対策として、生前に家屋の名義を子どもに移すケースが結構あります。
築年数の古い家屋だと評価額も安くなっているため、税金の負担もそれほど高くならない事が多いというのも理由の一つです。
将来、売却の可能性がある場合は注意
家屋の名義を子どもに移した場合、将来売却する時に税金面で不利になる可能性があるので注意が必要です。
具体的には、譲渡所得税の3000万円控除という制度が使えなくなります。非常に節税効果の高い制度なので、使えないとかなりの税金を請求される可能性があります。
譲渡所得税の3000万円控除とは
親が生存中に居住用不動産を売却した場合、3000万円控除の特例を使えば譲渡益のうち3000万円までは譲渡所得税がかかりません。例えば、売却して、そのお金で施設に入所する場合などは、この制度を利用すれば税金が少なくて済みます。
因みに、あくまで「譲渡益」なので、譲渡益が出ていない不動産の場合は問題になりません。ただし、譲渡益が出ていない事は書面が必要です。具体的には購入した時の正確な価格が分かるもの(売買契約書など)です。これが無いと譲渡益が出ていると判断されてしまいます。
譲渡所得税の3000万円控除には条件がある
譲渡益が出る可能性がある不動産を持っていて、将来売却する予定があるならば、節税効果の高い3000万円控除の制度は是非使いたいでしょう。しかし、家屋の名義を子どもに移してしまうと、この制度は使えなくなってしまうのです。
では譲渡所得税の3000万円控除を使うためにはどうすればよいのでしょうか。
それは、家屋の一部分でも良いから親の所有のままにしておくことです。たとえ10分の1でも親の所有になっていれば利用可能です。
※上記を満たせば必ず使える訳ではありません。他にもいくつか条件があります
親が死亡後の売却にも同様の制度がある
親が亡くなった後に住んでいた不動産を売却する場合にも、同じような制度があります。住む予定の相続人が無く、被相続人(亡くなった親)の空き家になった不動産を売る場合は、譲渡所得税の3000万円控除が使えます。ただし、いくつかの条件を満たす必要があります。詳細は国税庁のウェブサイトをご覧ください。
この時にも、通常の3000万円控除のときと同様に、家屋の一部が被相続人(亡くなった親)の名義になっていることが必要です。
売る可能性が少しでもあるなら、親の名義は残しておくべき
この制度を使うためには、家屋の名義の一部を親のままにしておかなくてはなりません。将来売却の可能性があり、3000万円控除の条件を全て満たしているならば、子に名義を移すときは、多くても10分の9くらいに留めておくのが良いでしょう。
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婚姻20年以上の夫婦の贈与の特例とは
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住用の不動産を贈与した場合、2000万円までは贈与税がかからないという制度があります。これ以外に1年間に110万円までは贈与税の非課税枠がありますから、プラスして使えば2110万円分の不動産を贈与税無しで贈与することが可能です。
婚姻20年以上の夫婦の贈与の特例は得なのか
一見、「2110万円も贈与税がかからないなんて、何てお得な制度なんだ。早速、使わなければ」と思えてしまいます。実際に、この制度の人気は高く使う人も多いです。しかし、ちょっと待ってください。本当に夫婦の贈与の特例制度は誰にとってもお得なのでしょうか。
夫婦間には相続の時に1億6000万円もの控除がある
意外と知られていませんが、夫婦間では相続の時に1億6000万円までは相続税がかからないというルールがあります。ですから、ほとんどの世帯では夫婦間の相続では税金がかかりません。
生存中に2000万円分の贈与を急ぐ必要は、あまり無いのです。
生前贈与には贈与税以外の税金がかかる
「贈与税が無ければ得になる」と多くの人が考えてしまう理由として、贈与税以外の税金のことを気付いていない人が多いことがあげられます。
不動産を生前贈与すると、贈与税以外に登録免許税と不動産取得税という2種類の税金がかかってきます。
登録免許税とは
登録免許税とは、不動産の贈与による移転登記(名義変更)をする際に法務局で請求される税金です。登録免許税を払わないと、登記申請自体を受け付けてもらえません。そして贈与の場合にかかる登録免許税は、固定資産評価額の2%です。評価額の高い不動産の場合は結構な金額となります。
不動産取得税とは
不動産を贈与や売買で取得した場合、取得した人に不動産取得税がかかります。金額としては、固定資産評価額のだいたい3%くらいが目安となります。だいたいと書いたのは、様々な軽減措置があるので、個別に検討しないと正確な金額は分からないからです。
相続の場合は税金が優遇されている
一方、不動産を相続で取得した場合は、かなり税金は優遇されています。
例えば登録免許税は評価額の0.4%なので、贈与の時の5分の1で済みます。また不動産取得税については相続で取得した場合は非課税となっていますので支払う必要はありません。
これらにプラスして相続税の1億6000万円控除がある訳ですから、夫婦間の税金に関しては圧倒的に相続で取得した方が有利です。
夫婦間の不動産の贈与は税金以外の理由が必要
このように税金面では例え婚姻20年以上の特例を使ったとしても相続で取得した方が有利ですから、夫婦間で不動産の贈与をするならば税金以外の理由が必要です。
人は合理的な考えだけで行動する訳ではありませんので、感情的な理由で贈与することがあっても構わないと私は思います。ただしその場合は「税金面で得する訳ではない」、ということは分かった上で贈与を行ってください。そうしないと後で後悔することになります。
古い家屋の場合は、それほど問題にならないかも
どうしても生存中に贈与したい、という希望をもっている人からの相談は実際にあります。特に築年数の古い家屋のみの贈与の場合は税金の額が小さいので、強い希望があれば贈与を選択しても良いかもしれません。
築年数の古い家屋の場合、評価額がかなり低いことが多いので、登録免許税や不動産取得税が安く抑えられるからです。
同じ理由で利用価値の低い土地の場合も評価額が低いので検討の余地はあるでしょう。
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