司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2022年6月

6月 28 2022

信託銀行の株の相続手続 遺産承継(遺産整理)⑱

株主名簿管理人とは

株式会社に代わって株主名簿の作成および備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者のことをいいます。

法律では株主名簿管理人の設置は自由ですが、上場企業の場合、証券取引所が設置を義務付けていますので、必ず設置されています。株主名簿管理人には信託銀行などが指定されていることが多いです。

※昔の商法では名義書換代理人と呼ばれていました

信託銀行と証券会社

信託銀行は株主名簿の事務代行をしている訳ですが、株式の売買取引には関与していません。売買取引を行うのは証券会社になります。
株は売買を前提に持っている人が多いので、ほとんどの場合は証券会社が取り扱い機関になっています。従って相続が発生した場合も、証券会社に対して相続手続を申請するのが通常のやり方です。

信託銀行が取り扱い機関になる場合

しかし中には株をずっと持ち続けて売却するつもりが無いという人も、たまにいらっしゃいます(かなりの少数派だとは思います)。そのような場合、証券会社ではなく信託銀行が取り扱い機関になっているケースもあります。このようなケースで相続が発生した場合は、相続手続の申請は信託銀行にすることになります。

信託銀行の相続手続

信託銀行の相続手続は非常に大変です。証券会社も銀行に比べれば大変なのですが、証券会社以上に大変なことが多いです。その理由は、信託銀行では株式の売却ができないからです。

相続した株の取り扱い機関が信託銀行だった場合、まずは、相続人がどこかの証券会社の口座を持っている必要があります。持っていなければ新しく証券口座を開かなければなりません。

信託銀行から証券会社に移す

証券会社が取り扱い機関ならば、同じ証券会社に相続人の口座を開けば書類も少なく手続きもスムーズに進みます。会社が同じなので情報が共有されるからです。

しかし、信託銀行が取り扱い機関の場合は、別の証券会社に相続人の口座を開き、そこに信託銀行の株を移さなければなりません。別会社ですから必要な情報も多くなり手続も複雑で時間もかかります。

証券会社で換金する

相続人の証券口座に株式の名義を移した後で、始めて相続した株の売却が可能になります。あくまで換金は証券会社でないとできないからです。

このように相続手続と換金を別の会社で進めていく必要があるので、手続のステップが増えて手間と時間が余計にかかることになります。
証券会社の相続と同様に、相続財産に株式が含まれている時は専門家に依頼した方が手間がかからないでしょう。

遺産承継業務について、より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

遺産承継

6月 20 2022

證券会社の相続手続 遺産承継 (遺産整理)⑰

証券会社の相続手続の特徴

証券会社の株式の相続の場合、銀行預金の相続とは決定的に異なる点があります。それは、相続人または代理人の証券口座が必要になることです。

もし相続人または代理人が証券口座を持っていない場合は、別途、新たに口座を開設することになります。

相続用証券口座の開設

相続人または代理人が相続前から証券口座を持っていれば、それを使えば良いのですが(手続をする証券会社と同じ場合は更に便利)、日本ではまだ証券取引は一般的ではないので、証券口座を持っていないことの方が多い印象です。

その場合は相続専用口座を、手続をする証券会社で新たに開設することになります。

相続専用口座とは

相続専用口座とは相続手続のためだけに開設される口座で、手続終了と同時に口座が閉鎖されます。

そんな短期間なら、わざわざ開設しなくても良いのでは、と考える人もいると思いますが、これが無いと手続きができないので仕方がありません。

株式の相続

株式は被相続人名義のままでは換金することができません(この点、不動産と似ていますね)。まずは相続人または代理人の名義にしてから売却する必要があります。そのために相続専用口座が必要になる訳です。

一旦、相続専用口座で相続人または代理人名義の株式に移管してから換金します。換金が終わったら口座は閉鎖されます。もちろん口座を閉鎖せずに株式のまま持ち続けることも可能です。

口座開設の手間

相続専用口座を開設するのは結構な手間です。余分な書類も書かされますし、証券会社とのやり取りで時間も取られます。通常の相続手続に加えて行うことになるので、証券会社の相続手続は銀行よりも大変な場合が多いです。

株式の残高証明書

相続税の申告などがある場合、残高証明書が必要になるでしょう。銀行ならば死亡日を記入して申請すれば、手数料は取られますが比較的簡単に取得することができます。

しかし、株式の場合の残高証明書は、ずっと複雑です。なぜなら株式の相続税評価額は以下のような複雑な計算で算出されるからです。

①被相続人の死亡日が含まれる月の平均株価
②被相続人の死亡日が含まれる前月の平均株価
③被相続人の死亡日が含まれる前々月の平均株価
④死亡日の株価(終値)

上記①から④のうち最も低い株価が相続税評価額となります
※高く評価されすぎないように相続人に優しい評価方法になっています

このように残高証明書についても証券会社は銀行よりも手間がかかります。
相続財産に株式が含まれている場合は、相続手続は専門家に依頼した方が良いでしょう。

遺産承継業務について、より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

遺産承継