5月
30
2008
今回のテーマは「第1回期日」です。いよいよ、裁判所に行くことになります。どのように手続きがすすんでいくかを、お話ししましょう。
申立がすんで、しばらくしたら裁判所から呼出状が届きます。1回目の期日が決まるわけです。では、1回目の期日では何が行われるのでしょう。
実は1回目の期日では業者は関係ありません。調停委員と申立人(債務者のことです)の間で話し合いが行われます。調停委員は名古屋だと通常、二人つきます。弁護士や役所を退官した人などが多いですが、困ったことに債務整理に詳しくない人が選ばれている場合があります。そういう調停委員に当たってしまったら、とにかく不当な処理をされないように申立人自身が注意する必要があります。
一回目の期日の一番重要なテーマは、「支払能力の有無」です。調停委員の質問も、このテーマに集中します。特定調停は圧縮した債務を3年間で支払っていく手続ですから、申立人の家計に3年間で払っていけるだけの毎月の余裕資金が出ているかがポイントになります。
意外に知られていないのですが、実は特定調停で最大の関門は第1回期日です。ここで、「あなたは特定調停で支払っていくのは無理」と判断されて調停が終了してしまう人が結構いるのです。あるいはもっとストレートに、「あなたは破産するべきです。専門家の事務所に行きなさい」と言われてしまう人もいます。全ては支払能力が無いと判断された結果です。
この判断が適切な場合もあるので、一概に厳しすぎるとは言えないのですが、先ほども挙げた債務整理に詳しくない調停委員にあたった場合、不適切な判断になるケースがあります。例えば典型的なのが、長期間の取引があるのに申立書に記載された残債務額で支払能力を判断してしまうことがあります。本来あってはいけないことなのですが、実際こういうトラブルは全国で起こっているようです。
従って、申立人としては、全ての業者の債務が利息制限法に引き直されて計算されているかどうかを確認する必要があります。期日までに取引履歴が裁判所に送られている場合が多いので、期日の直前に取引履歴の「謄写請求」を裁判所に対してすれば、取引履歴のコピーを持参して期日に臨むことが出来ます。期日になっても取引履歴が裁判所に送られていない時は、調停委員に対して取引履歴の請求を強く頼みましょう。取引履歴が無ければ正確な負債額は分からない訳ですから、正確な支払能力の判断も当然出来ないはずです。
このような関門をくぐり抜けて、第2回の期日が決定したら、特定調停の80%は成功したと言って良いでしょう。実は業者との交渉が始まる2回目の期日の方がスムーズに進むことが多いのです。
特定調停の最大の関門は、第1回期日の支払能力の判断である。今回は、これを覚えて頂いて、次回は2回目の期日について説明しましょう。
5月
27
2008
本日は臨時ニュースが入りましたので、シリーズに割り込んで、お伝えします。
昨年9月に民事再生を申し立てていた、お騒がせ消費者金融クレディアが本年5月21日に東京地裁に対して再生計画案を提出しました。その計画案によると、私が思っていたよりも、過払請求債権者に対して配慮した内容になっています。(クレディアの民事再生に引っかかって、あきらめかけていた過払債権者には朗報です)
提出された計画案では、「一律40%の弁済率で一括返済。ただし、30万円までの少額債権については全額弁済する」とのことです。この計画案が通れば、民事再生としては、かなり割の良い弁済率で返還が受けられることになるでしょう。
民事再生には債権者の頭数の半数以上が反対すると不認可になるという決議要件があります。(通常の民事再生の場合は個人再生と違って、積極的同意が必要。つまり、何も言わない無言の債権者は反対したとみなされる)
過払債権者は全国に多数いますので、この集団に賛成してもらえない計画案では認可されないとクレディアは考えたのでしょう。
なかなか良い計画案ですが問題は銀行などの債権者が納得するかどうかです。銀行などは高額債権者になりますので、ここから強い反対が出ると計画案が通らない可能性もあります。悩ましいところです。
何故かと言うと、たとえカット率が同じでも、高額債権者ほどカットされる金額は多くなりますから、面白く無い訳です。他にも、30万円以下の全額返済の規定などは、過払債権者にとっては非常に大きいですが、何千万・何億と貸している金融機関から見たら、ほとんど意味の無い金額になります。しかし、30万円でも何万人という債権者に返したら結構な金額になってしまいます。明らかに、この規定は過払債権者を意識したものだということが分るでしょう。金融機関にとっては、こんな金があるなら弁済率を少しでも上げろと言いたくなるでしょう。
この計画案は過払債権者にとっては、なかなか良いものです。クレディアに債権届をしている過払債権者は積極的に賛成して、この計画案を通す方向で協力するべきだと思います。
5月
20
2008
3回目のテーマは申立の方法です。
裁判所には初めて行く人がほとんどでしょうから、最初は不安でしょう。しかし、特定調停は「素人が申し立てる」ことを前提にした制度なので、いろいろと便宜が図られています。
例えば、私の良く行く簡易裁判所では、特定調停の申立書は鉛筆書きでも良いことになっています。これは素人が申立書を書くと書き直す場合が多いからです。全ての裁判所に適用されているかどうかは不明ですが、特定調停に関しては、このように素人のことを考えた取り扱いがなされている場合が多いのです。
申立用紙は裁判所に置かれています。用紙の形式は裁判所によって若干異なるようです。ここでは、名古屋を例にして説明しましょう。
だいたい裁判所の様式に沿って書いていけばよいのですが、いくつか注意点があります。
まず、申立書は業者1社につき1枚必要です。業者ごとに事件番号がつき、それぞれ別の事件として扱われるからです。
次に、権利関係者一覧表に業者をまとめて書くのですが、この時、調停を行う業者と調停を行わない業者を分けて書くことが認められています。特定調停のメリットの一つですね。
あとは申立人の家計の状況を細かく書く欄が設けられていますから、前もって自分の手取り収入と家計の支出の状況を把握しておく必要があるでしょう。これが後にとても重要な資料になります。
窓口に持って行くと担当官がチェックして多くの場合、間違いを指摘されて一部書き直しを命じられます。この時、鉛筆書きが許されている裁判所だと消して書き直せるので、非常に便利です。
書き直しがOKならば、申立が受理されて事件番号が業者ごとに付けられます。この時に受理証明書をもらっておくと良いでしょう。手数料がかかりますが、家に帰ったら、すぐに各業者に対して、この受理証明書を郵送すれば特定調停が決着するまでの数ヶ月の間、取立・請求を合法的に止めることが出来ます。しばらく落ち着いて冷静になる時間が得られるので、是非やりましょう。
5月
02
2008
特定調停シリーズ2回目のテーマは「どこに申し立てるのか?」です。
特定調停は簡易裁判所に申し立てます。簡易裁判所は、裁判所の中で一番多く設置されている裁判所です。では次に、どこの簡易裁判所に申し立てれば良いかを調べる必要があります。これを「裁判所の管轄」と呼びます。
特定調停における裁判所の管轄の原則は、「債権者の所在地」です。この場合、特定調停ならではの特例があります。普通、「債権者の所在地」と言ったら、業者の場合は本店の所在地になりますが、そんなことを言ったら特定調停のほとんどを東京の裁判所に出さなくてはならなくなり、これでは素人を対象にしている制度としては現実的ではありません。従って、特定調停の場合、「債権者の所在地」は支店の所在地で構わないという取り扱いがなされています。しかも、業者が複数ある場合(複数あるのが普通ですね)、最も多くの業者の支店がある所ならOKということになっています。
これで、たいていの人は自分の住まいの近くで申し立てることが出来るはずです。しかし中には、取引の途中で引っ越す人もいます。そういう場合、全ての業者の取扱支店が遠方にあるというケースも出てきます。こういう人の為に特定調停は更に特例を認めてくれる場合が多いのです。
もし、上記のケースに当てはまる人がいたら、取引の途中で引っ越した事情を裁判所に説明して、現在の住所の近くで受け付けてもらえないか、粘って説得してみて下さい。私の経験では、ほとんどの場合、認めてくれるケースが多いようです。「何事もチャレンジ」の精神で熱意をもって説明しましょう。