司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2008年12月

12月 26 2008

今年(平成20年)の総括

 今年の最終営業日となりました。今回は1年の総括と来年以降の予測をしてみたいと思います。

 今年は何と言ってもアメリカから始まった世界同時不景気が印象的な出来事でした。

実は、今回の不景気は今までの景気循環型の不景気とは違うのではないかと、個人的に感じています。

まず、世界中見渡しても景気の良い国や地域が見当たらないことが上げられます。今までは日本が不景気でもアメリカや中国が好景気だったり、アメリカが不景気の時は日本が空前の好景気だったりと、世界のどこかは好景気の地域があったように思います。

ところが今回はアメリカもヨーロッパもロシアも中国も全てが不景気のどん底に苦しんでいます。石油価格が下落していますので、アラブの産油国まで不況に陥っています。要するに物を買ってくれそうな地域が見当たらない訳です。

 あと、アメリカが次に食べていく産業を今のところ見つけていないことです。これは不景気が長引く可能性を示唆していると思います。

アメリカは製造業を日本に追い抜かれてからは、もっぱら金融業とIT産業で飯を食っていました。ところが、ITバブルはブッシュ政権が始まったころには既に弾けており、その後の8年間は住宅バブルを中心とした不動産と金融業で好景気を演出してきました。

日本の80年代と、そっくりだと言う人もいますが、日本の場合は強かったのは不動産や金融だけでなく、製造業も世界レベルの強さを持っていましたから、不動産と金融が落ち込んだ後も製造業は頑張っていました。

しかし、アメリカの場合は製造業は、もはや見る影もありません。(ビッグ3の凋落を見れば分かります) このような状態でアメリカは次にどのような産業で雇用を生み出していくのか今のところは見えてきません。

 何故、長々と世界経済の話をしたかと言うと、日本の景気は今や世界を抜きにしては語れないからです。そして日本の景気が良くなるかどうかは多重債務に深く関わってくるからです。

今後、日本の不景気が長期化、深刻化した場合、多重債務者が増えることが予想されています。しかし、貸金業者は目前にせまった総量規制をにらんで貸し渋りに走っています。このような状態が続くと、いずれ大きな社会問題になる可能性があり、そうなれば政府は改正貸金業法の見直しをせまられることになるかもしれません。

 多重債務の解決法としては、今後、任意整理が減少して破産や再生が増加することが予想されます。

これは、改正貸金業法でグレーゾーンの見直しが行われますので、グレーゾーンを前提にした手続である任意整理が減少するのは、ある意味、必然と言えるでしょう。ただ、急激に減少するとは考えにくいので、徐々に減っていくという形になるでしょう。

 グレーゾーンが無くなると借金は、そのままの金額が残るようになるので、これを何とかするには破産や再生といった手段で強制的に減額するしかありません。来年以降は、このような解決法が増加してくると思われます。

 以上、来年の予測も含めて総括してみました。

 では、このブログを読んで頂いている皆様、良いお年をお迎え下さい。

 

 

 

12月 17 2008

シリーズ 各業者の対応⑪

 今回は、オリエントコーポレーションとセントラルファイナンスについて取り上げます。

 まず、オリエントコーポレーション(以下、オリコと呼ぶ)については、業務の範囲が非常に広く、様々な種類のカードを発行しており、カード以外にも様々な商品を持っていることが上げられます。

例えば、通常のカードとは別にアメニティと呼ばれるキャッシング専用のカードがあったり、自動車ローンや契約書型クレジット(商品を購入する際に、1回ごとに契約書を書いて、その都度審査をする個別のクレジット契約のこと)も手広く取り扱っています。

 従って、クレジットがらみの債務整理をすると、かなりの確率でオリコが入ってくることになります。まあ、債務整理の常連といったところです。

 この業者は最近でこそ改善されましたが、以前はかなり問題のある業者でした。最も問題になっていたのは取引履歴を正直に出してこないことでした。要するに、ごまかしていたのです。

具体的に説明すると、過払いが見込まれる長期の取引の場合、必ずと言って良いほど、取引当初1年くらいの返済額が極端に少ない金額になっていたのです。

オリコに問いただすと、取引当初は債務者が実際に支払った金額ではなく、別の基準で計算された金額を記載していたと言います。だから、ごまかしではないと主張してきますが、はっきり言って、この主張は無理があります。

何故なら、取引履歴のどこにも、上記の説明が書かれていないからです。これでは、気がつかなかった法律家は、最初から実際に支払った金額として計算してしまいます。(事実、そのようなケースは珍しくなかったと思われます)

 私は、疑い深い性格なので、依頼者から引落口座の通帳を借りて、オリコの取引履歴の返済額と実際に引き落とされた金額をつき合わせてみて発見したのです。(こういう調査をしていなかった弁護士や司法書士は少なからずいたと思います。)

 後に問題となり、最近では、取引当初の計算の基準が分かるような形で取引履歴が送られてくるようになりました。まあ進歩と言えるでしょう。ただ、私としては、「最初から実際に支払った金額で全て記載してこいよ」、と言いたい気分です。

 もう一つ、中部地方で勢力を持っているクレジット会社のセントラルファイナンス(以下、CFと呼ぶ)についてですが、ここもオリコと同じ問題を抱えていました。要するに取引履歴のごまかしをやっていたのです。

 まあ、オリコと同じようにCF自身は、「当社独自の計算基準であり、ごまかしではない」と言ってます。しかし、それならば取引履歴と一緒に実際の支払金額とは違うという注意書きや、独自の計算方法について書かれた書面があってしかるべきだと思いますが、残念ながら、そんな注意書きや書面は入っていませんでした。(よほど非難があったのか、途中から計算方法の書面は入るようになったと記憶しています)

 CFの場合も、私は依頼者の通帳を調べていて気がついたのですが、こういう作業を全ての弁護士や司法書士がやっていたかどうかは非常に疑問です。ごまかしに気がつかなかったケースも多いのではないでしょうか。

 CFに関しても、最近では普通の取引履歴を送ってくるようになりましたので改善されたと言って良いでしょう。改善の度合いはオリコよりも評価できると思います。まあ、当たり前のことをしているだけなので評価するというのも、おかしな話ですが。

 私が債務整理の仕事をしてきて、取引履歴のごまかしという点では最もひどかったのが、今回取り上げたオリコとCFです。ようやく最近まともになりましたが、以前はひどいものでした。

このような経験があるので、私はクレジット会社の印象が良くないのです。

 では、次回はライフカードについて取り上げます。

12月 12 2008

臨時ニュース 主要クレジット会社の合併

 今回は臨時ニュースです。

 オーエムシーカード、セントラルファイナンス、クオークの3社が近いうちに合併することになりました。

クレジット会社では、三菱UFJニコスに続く大型合併と言えるでしょう。これでまた、主要なクレジット会社の数が減ることになります。

 合併の日付は来年4月1日、新しい会社の名前はセディナとなるそうです。

現在、この3社と取引のある人達には果たして、どんな影響があるのか、今のところは分かりません。

 シリーズでは、まだコメントしていませんが、実はオーエムシーカードとセントラルファイナンスは、債務整理をする時に何かと問題のある会社だったので、合併を機会に、この点が改善されることを望みたいものです。

 

12月 05 2008

シリーズ 各業者の対応⑩

 今回は、銀行系カード一般について取り上げましょう。

 前回取り上げた三菱UFJニコス以外の代表的な銀行系カードと言えば、三井住友ビザ、あと各地方銀行の名前を冠した〇〇ビザと呼ばれているカード、外資系ではアメックス(アメリカンイクスプレス)、ダイナース、シティカードなどが上げられます。あと、銀行系とは言えないかもしれませんが似たような特徴を持つ会社としてJCBがあります。

 これらの銀行系カードの特徴と言えば、何と言っても目に付くのが、「担当者が大変、威張っていてエラそうである」ということです。

いかにも銀行系という感じで、「我々は被害者であって何ら落ち度は無い、まともに返済しないような輩に味方する司法書士は、とんでもない連中である」といったニュアンスが会話の中に、にじみ出ています。(私は個人的に、銀行系カードの担当者は、消費者金融よりも嫌いです。自分たちは正義だと言わんばかりの態度が非常に目立つからです)

 従って、銀行系カードの問題点も、この鼻持ちならない意識と密接に関係しています。

 一つには、入出金を日付順に並べた取引履歴を送ってこないことです。こんなことをするのは、銀行系カードとJCBくらいです。

では代わりに何を送ってくるかと言うと、顧客に毎月送っている請求明細の束を郵送してきます。取引期間が長いと、それはもうすごい分厚さで、小包のようなもので送られてくることもあります。

銀行系カードの貸付の特徴として、金銭貸付が多くの場合、翌月一括払いのキャッシング(マンスリークリアと呼ばれてます)と、定額払いのリボルビングローンに分かれていることが上げられます。そして大抵の会社が、リボルビングローンは利息制限法の範囲内で、翌月一括払いのキャッシングは利息制限法超過利息を請求しています。さすがに改正貸金業法が出来てからはキャッシングについても利率を下げてきましたが、つい最近までは違法利息を取っていた訳ですから、正義を気取るのは止めてもらいたいものです。

この明細はショッピングとリボルビングローンと翌月一括払いのキャッシングが混ざっていますから、司法書士の方で超過利息を取っているキャッシングを拾い出して、しかもキャッシングのみの入金は書かれていませんから、キャッシング元金と利息を合計して引落し日で決済したと考えて取引履歴を作成する訳です。

これは大変面倒な作業で、銀行系カードの請求明細が送られてくると正直うんざりします。

しかし、考えてみれば銀行系カードだって交渉する為には利息制限法に引き直した金額は知りたいはずであって、独自にキャッシングのみの取引履歴は作成しているはずです。それを送ってこない訳ですから、嫌がらせとしか言いようがありません。

まあ、苦労して計算した結果、過払いだった場合は、さすがに素直に支払ってきますが、正直、すっきりしません。

 あと、二つ目の問題は、債務が残った時の遅延損害金を厳格に請求してくる傾向があります。意外に思われるかもしれませんが、世間でまともな会社と思われている業者ほど、遅延損害金は負けてくれません。要するに自分たちは正義で払わない方が悪いんだと思っている訳ですから、正当な請求をしてくる訳です。

通常は、最終取引日、悪くても依頼を受けた日(受任日と言います)で話がまとまることが多いのですが、相手が銀行系カードだと最悪の場合、支払日までの遅延損害金を請求されることもあります。まさに容赦なしという感じです。

 あと、分割払いについても、他の業者に比べて条件が厳しい場合が多いです。分割回数を縮めるように請求してくることも多いですし、債務者の家計の状況も詳細に聞いてくる傾向があります。少しでも余裕があると見ると、「もっと一月の支払額は増やせるはずだ」と言ってくることも珍しくありません。

 結論としては、滞りなく使っている分には、銀行系カードは他のカードよりもステイタスがあって、限度額も一般的に大きく、附帯サービスも充実している場合が多いので良いのかもしれませんが、ひとたび、支払が止まった時は他の会社よりも厳しくなる可能性があることは知っておいた方が良いでしょう。(この辺は、大元である銀行と同じですね。貸し出し条件は良いけど、滞った時は血も涙も無いのが銀行ですから)

 では、次回はオリエントコーポレーションとセントラルファイナンスについて取り上げます。