司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2009年1月

1月 30 2009

臨時ニュース 最高裁判決について(消滅時効)

 最近、過払金請求に関する重要な最高裁判決が出ましたので、本日はこれについてコメントします。

 今まで取引が10年以上続いている過払請求において、10年以上前の部分は、以下のように判決が分かれて争いになっていました。

一つは、「過払金は一回の取引ごとに消滅時効が進行するので10年以上前に発生した過払金は、例え取引が連続したものであっても時効で消滅する」というものです。まあ、貸金業者に有利な考え方で「消滅時効の個別進行説」と呼ばれています。

二つ目は、「過払金は発生した直後の借り入れに充当されるので、取引が連続している場合は時効は進行しない。従って、10年以上前に発生した場合でも時効消滅はしない」というものです。これは債務者有利な考え方になります。

この二つの説が裁判でも分かれていて決着がついていませんでした。今回の最高裁判決は、この論争に決着をつけたものです。

結果は、「取引が続いている限り時効は個別に進行しない」というものです。つまり債務者有利な判決が確定したことになりますので、このブログを読まれている方には喜ばしい結果と言ってよいでしょう。

 しかし、水を差すようですが、マスコミ報道を見ていると、次のように勘違いする人が出てくる恐れがあるので、ここで注意点を説明しておきます。

まず、この判決は「取引が続いていること、あるいは続いていると同視できること」が条件になっています。

要するに裁判所が「あなたの場合は取引は途中で分断されていて連続していない」と判断した場合は、この判決は適用されないということです。

このことを覚えておかないと、「自分の取引は10年以上続いているが、これで心配ない」と言って過払請求してみたら、実は取引の途中に空白期間が結構あって、裁判所に「分断されているので連続した取引ではない」と判断されてしまうかもしれません。その分断された時が10年以上前だったら最初の取引は時効消滅してカットされてしまうことになります。

残念ながらマスコミの中にも、よく理解していない人がいて、報道だけに接していると上記のように誤解してしまう可能性が充分あります。

 ぬか喜びにならない為にも、気をつけましょう。

 

1月 19 2009

シリーズ 各業者の対応⑫

 久しぶりのシリーズの続きです。今回はライフカードを取り上げます。

ライフカードは他のカード会社に比べてキャッシング比率が非常に高いことで知られており、売上の6割以上がキャッシングで占められています。また、プレイカードと呼ばれるキャッシング専用カードも出しており、キャッシング部門を受け持つライフキャッシュプラザという専用支店も各地に設けていて、事実上、消費者金融に近い形態のカード会社です。

この為、債務整理をするとライフカードが関わってくることも多く、債務整理ではお馴染みのカードです。

 ライフカードで最も注意する点は、何と言っても平成12年5月に会社更生法の適用を受けて一度、倒産していることです。その後、アイフルの完全子会社になることで復活しましたが、過払金の請求を行う上で、この会社更生法が大きな障害になることがあるのです。

具体的には、利息制限法に引き直し計算をした時に、取引期間の長い人だと平成12年5月の時点で既に過払いになっていることがあります。こういう場合、相手がライフだと平成12年5月以前に発生した過払金は全額カットされてしまうのです。(もちろん、それ以降に発生した過払金は問題なく取り戻せます)

これは最高裁判所が、会社更生法の届出期間中に届けなかった過払債権者は、自らの権利を放棄したと判断したからです。

しかし、平成12年の時点で過払金はポピュラーではなく、言葉自体を知っている人も、ほとんどいなかったと思われるので、届出をする可能性は限りなく低く、このような取り扱いは不当だという意見を言う人も大勢います。

実は私も、この件に関しては同じ意見で、平成12年の時点で過払いの届出など非現実的だと思ってます。しかし、相手は最高裁ですから、実際には、この件でライフに勝つのは難しいというのが現状です。ライフと長期の取引がある人は、このことを覚えておきましょう。

ライフは会社更生法を伝家の宝刀のごとくに振りかざしてきますから、昔から長い取引でも平気で取引履歴を出してきます。どうせ平成12年以前は払う必要が無いんだからと言わんばかりです。

分割払いは、まあ普通に応じてくれます。この点は他のクレジット会社と変わりません。

 では次回は、オーエムシーカードを取り上げます。

1月 09 2009

臨時ニュース レタスカード破産

 新年早々、臨時ニュースです。

 中小消費者金融のレタスカードが破産を申し立てました。この程度の規模の貸金業者は、もはや民事再生での再建も難しいようです。

主要業者の経営環境も苦しくなっているなか、今後は中小業者が生き残っていくのは、かなり厳しくなってくるでしょう。倒産件数も増加することが予想されます。

 昨年、沖縄県を地盤にした中小業者のオークスが破綻した時に、以下のような問題が発生しました。

交通機関が未発達の沖縄で、車は県民の必需品でした。車が無いと生活が成り立たないという地域も少なくありません。しかし、県民所得が全国的に見て低い沖縄県では通常の審査では自動車ローンが通らない。そんな時、県民の自動車需要を支えていたのがオークスだったそうです。

沖縄に合わせた審査基準で自動車ローンを通していたオークスが破綻したことで、今、深刻な問題が起きているようです。

 貸金業者は悪だから、全て無くなれば良いという人もいますが、どうも、事はそう単純には運ばないようです。

私も、この仕事をしていて貸金業者に問題が多いことは充分に分かっていますが、だからと言って、無くなったら困る人もいる訳です。

 今後も中小業者が次々と破綻していった場合、貸し渋りの問題が出てくる可能性もあります。

経済全体が不景気に突入している中、予断を許さない状況です。

1月 05 2009

新年のご挨拶

 皆さん、明けましておめでとうございます。

もっとも、このブログを読んでいる方は、生活が苦しくて、おめでたい気分にはなれないという人も多いと思います。

しかし、そういう時こそ冷静になることが重要です。あせっている時に取った行動は得てして失敗に終わることが多いものです。

その為にも、難しいかもしれませんが、新年くらい「明けましておめでとう」と他人に言えるように努力してみましょう。少しは、あせりが消えて冷静になれるのではないでしょうか。

 そして冷静さを取り戻したら、次には自分の苦境は債務整理をすることで何とかならないだろうかと考えてみて下さい。多くの場合は解決に向けて一歩を踏み出すことになると思われます。

もちろん、債務整理にはデメリットもあります。代表的なものは事故情報(ブラックリスト)に登録され、一定期間ローンやクレジットが使えなくなることです。

しかしながら、明らかに家計が破綻しているにもかかわらず、事故情報を気にしている人が何と多いことか、この仕事をしていると気付かされます。

最初に申し上げたように、あせっている為に冷静さを失っているのです。事故情報を気にしている状況は、もうとっくに過ぎていることが明確な人までも、ためらって事態をより悪化させてしまうケースが後を絶ちません。

こんな時こそ冷静になりましょう。一度、時間をかけて計算してみましょう。「自分は本当に自力で、残っている債務を返済できるのか」「出来るとしたら具体的に何年かかるのか」「その返済の為に支払われる金額の合計は正確にはいくらなのか」

これらの事実をきちんと把握した上で、債務整理をやるかどうかを再度、検討してみて下さい。

自分の状況を分析してみることは非常に重要です。是非、試してみて下さい。最初のイメージとは違った答えが出てくるかもしれませんよ。