司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

6月 22nd, 2011

6月 22 2011

報酬規定

 現在、司法書士の報酬は弁護士と同様に自由化されています。ところが、一部の司法書士・弁護士と依頼人の間で債務整理に関する報酬のトラブルが増えていました。そこで、日本司法書士会連合会(日司連)という全国の司法書士を束ねている組織が「債務整理に関する報酬の上限規定」を発表しました。今後は定められた上限を破ったら規定違反ということになります。(もっとも内容を見ると、かなり余裕を持たせた規定になっていますので、今時、この上限を破っている事務所は少数派だとは思います)

私は個人的には報酬は自由である方が望ましいと思っています。依頼する側にとっても選択の自由はあった方がプラスになることが多いと考えています。しかし、日司連の規定として決まってしまった以上、司法書士は規定を守る必要があるでしょう。これから依頼を考えている人は頼もうとしている事務所が規定違反になっていないかどうかチェックした方が良いでしょう。以下、具体的に報酬基準を列挙します。(この報酬基準には消費税は含まれません。あと、印紙代や切手代などの実費も含まれません)

1 任意整理事件を受任したときは、定額報酬として債権者1社あたり5万円を超える額を請求し、または受領してはならない

2 減額報酬を受領するときは、減額され、または免れた債務を経済的利益として、その経済的利益に10%の割合を乗じた金額を超える金額を請求し、または受領してはならない

3 減額報酬における経済的利益とは、引き直し計算により算出された金額を債権者が認めた場合(その金額を債権者が積極的に争わない場合を含みます)は、その引き直し計算により算出された金額から減額され、または免れた債務の金額を指す。(この規定は大変に重要ですが、要するに専門家に相談に来る前に貸金業者から請求された金額から、利息制限法に引き直して減額したとしても、その減額分から報酬を取ってはいけないと解釈できます)

4 過払金を回収したときは、その回収した金額を経済的利益として、その経済的利益に次の割合を乗じた金額を超える額を過払金返還報酬として請求し、または受領してはならない。

(訴訟によらずに回収した場合) 20%

(訴訟により回収した場合) 25%

と主なものを挙げておきました。(一般の人に分かりやすく書いています)

先にも書きましたが、現在、上記の報酬規定を超える基準を設定している事務所は少ないと思われます。ただ、ゼロではありませんので、ひっかかる事務所は今後は報酬基準を下げる必要があります。

上記の規定の中で最もひっかかる事務所が多いだろうと思われるのが、3番です。この規定では利息制限法による引き直し計算による減額は今や、ほとんど全てと言っていい貸金業者が争いませんので、経済的利益には含まれなくなります。要は、債務整理で減額報酬を取っている事務所は報酬基準を変更せざるを得ないということになります。(変更しなければ今後は規定違反ですから、依頼人は変更するように要求することが出来ると考えて良いでしょう)

ちなみに上記の規定は債務整理限定です。債務整理以外の業務には適用されません。他の業務を依頼している時に、この規定を振りかざして注意したら恥をかくことになりますので注意して下さい。また、この規定には5年間という期限も付いています。いわゆる時限立法というもので、「報酬自由化という大枠の規定は変更していない。あくまでトラブルの増えている債務整理に限って、しかも5年間という期限も決めて限定的に運用するものである」ということです。