司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2012年4月

4月 27 2012

ヴァラモス→ギルド

株式会社ヴァラモスが、また商号を変更しました。新しい商号は株式会社ギルドと言います。恐らく、ネオライングループではなくなったことが、きっかけだとは思いますが、それにして良く商号を変える会社です。

 変更したのは商号だけではないようです。以前にブログに書きましたが、判決を取っても支払わない業者ではありましたが(その後、差押を通告すると支払ってきたことはありました)、少なくとも控訴はしてきませんでした(ひょっとして、控訴されている人もいたかもしれませんが、私は今まで無かったです)。

 ところが、商号が変わってから会社の方針も変わったらしく、今回は、判決で勝った後に控訴してきました。それにしても一体、何を理由に控訴するつもりなのか理解に苦しみます(控訴理由書は、まだ送られてきていません)。争点になりそうなものは見当たらないので、まさに時間稼ぎとしか思えません。

 裁判は、これからなので今後どういう態度に出るかは、まだ分かりません。支払がより悪くなっていないことを願いたいと思います。

4月 17 2012

過払金の時効

このブログでも何度か取り上げていますが、過払金返還請求には時効があります。具体的には完済してから10年経過すると請求が法的に認められなくなってしまいます。

それなら、現在、残高がある状態で長期間の取引がある場合は、時効の問題は生じないだろうと思ったら、大間違いなのです。

例えば、以下のような取引の場合(決して、珍しくありません)、残高のある長期間の取引でも時効の問題が生じてしまいます。

では、具体的に紹介してみましょう。

今は平成24年4月ですから、平成4年から平成14年3月まで取引をして一旦、完済しました。完済は店頭に出向いて行い、その時、契約書も返還されて、カードも店に返却したとします。

その後、5年ほど経った平成19年に再び契約して新たにカードも発行して再び取引を始めました。そして、現在、取引が継続していて残高は約50万円あります。この人が司法書士事務所に相談に来たとします。

この場合、本人の意識としては全体の取引期間は10年以上なので、きっと過払いになっているに違いないと思っていることでしょう。ところが、過払金の時効が大いに影響してしまうのです。

まず、契約書の返還やカードの返却、取引を止めていた期間の長さから言って、前半の取引と後半の取引は分断されていると判断される可能性が極めて高いでしょう。

そうなると、前半の取引の完済は平成14年3月ですから、相談に来た時には1ヵ月前に時効が完成していて(時効完成は平成24年3月です)、本人にとって長期間の取引だったはずの前半部分の取引は、丸ごと時効にかかって請求できなくなってしまいます。

すると残るのは、後半部分の取引だけになり、後半の取引期間は5年しかありませんから、残高が残ってしまう可能性が非常に高くなります。

結果として、このケースの場合、あと1ヶ月、早く相談に来ていたら過払金が請求できたのに、わずか1か月の差で過払金どころか残高を支払わなければならなくなった、などということが起こる訳です。(現実に似たような事例で、相談があります。もちろん、ぎりぎり間に合ってセーフだった人の相談もあります)

従って、取引の途中で完済して、その後、しばらく取引の無い空白期間のある人は、完済した時期から10年が経過していないか良く思い出した方が良いでしょう。

ぎりぎりの時期で微妙だという人は、一度、業者に連絡して自分の取引履歴を請求して取引を確認してみることを、おすすめします。(取引履歴の請求は業者の法的義務になっていますので、基本的に業者は断ることが出来ません。請求にあたって理由も不要とされていますから、聞かれても「確認したいから」で問題ありません)

それで、もし、途中完済の時期から10年がせまっていたら、急いで専門家に相談した方が良いでしょう。

4月 12 2012

スマートフォンのブラックリスト

携帯電話からスマートフォンへの買い替えが若者を中心に広まっていますが、これが若者のブラックリスト化に拍車をかけているという記事がダイヤモンドオンライン(週刊ダイヤモンドのネット配信サービスです)に掲載されていました。

一見、スマートフォンとブラックリストは何の関係も無いように思えますが、実は携帯販売の仕組が変更になったことによって新たに引き起こされた事件のようです。

携帯販売は以前は、販売奨励金というものが携帯事業者から販売店へ支払われていて、それが元手になって携帯の機種変更が非常に安く抑えられていました。ところが、同じ機種を長く使っている人よりも頻繁に機種変更をした人の方が販売奨励金の恩恵を多く受けられて得になるシステムはおかしいとの批判が起こり、販売奨励金が廃止されたのです。

この廃止により、端末価格が高騰して、携帯を買い換える人が激減することを恐れた事業者が新たに編み出したのが端末代金の分割払い契約です。

今や国内の携帯契約数の実に3分の1が分割払いを選択しているそうです。そして、分割払いを選択した場合、支払情報がクレジットカードの延滞情報を扱っているCICに登録されているのです(このことを知っている携帯ユーザーは多分、少数派でしょう。)

そうすると当然に、端末の分割払いを延滞した時は、CICにブラックリストとして登録されてしまいます。すると何と携帯の延滞により、クレジットカードの申込みが出来なくなったりする訳です(この時点まで本人は気が付かない可能性があります)。

事実、販売奨励金が廃止になってから、この携帯がらみのブラックリストは激増しており、2010年の21万人から、昨年は145万人となっています。(半端じゃない増え方ですね)

また、最近流行のスマートフォンは高額な為、分割払いを選択する傾向が高く、より問題を深刻化させているようです。これが一見、関係の無いように見えるスマートフォンとブラックリストのつながりです。

若いうちに知らない間にブラックリストに登録されて、社会人になってクレジットカードがどうしても必要になった時に作れなかったということになりかねません。この記事を読んだ人は充分に注意して下さい。また、周りの人にも注意してあげて下さい。

4月 06 2012

破産しても支払義務が残る債権

一般的な認識だと、自己破産をすれば、全ての債権の請求からは解放されると考えられていますが、残念ながら一部の債権では支払義務が残るものがあります。

例えば、最も分かりやすいのが税金です。滞納した税金も債権の一つですが、この滞納税金に関しては破産をしても逃れることが出来ません。この辺はテレビドラマなどでも説明されていることがあるので、ご存知の人も多いかもしれません。

一方、あまり知られていないのが不法行為に基づく損害賠償請求権の一部が非免責債権(破産しても免責されない、ようするに支払義務が残ること)になっていることです。

これには2種類あって、一つは「悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権」です。この場合は、破産でも免責されないと法律で規定されています。

これは、悪意で不法行為を受けた被害者を守る為の規定です。もし、この債権を免責可能にしてしまうと、悪意で不法行為を他人に加えて、その後で破産すれば損害賠償から逃れられることになってしまいます。これでは、反社会的な行動を助長する恐れがあります。

もう一つは、「人の生命や身体に対して、故意または重過失による不法行為の損害賠償請求権」です。

故意または重過失とは、悪意よりも軽い意識で不法行為を加えたしまった場合でも、対象が人の生命・身体であれば、やはり破産しても免責は受けられませんよ、ということです。

これは、被害の対象が生命や身体の場合、ことの重大さを考慮して、例え悪意でなくても、故意・重過失であれば免責を許さないと法律で決めたものです。(この部分は、実は破産法が改正された時に新たに加えられたものです)

このように破産しても免責が受けられない債権というものがあります。今回取り上げなかった債権もありますので、知りたい方は専門家に、お聞き下さい。いずれにしても、破産すれば、どんな債権でも免責されるとは思わないでいて下さい。