司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

8月 29th, 2012

8月 29 2012

残債務の請求に関する時効②

残債務の請求に関する時効が途中で中断するケースとして、前回は貸金業者が裁判に訴える場合を取り上げました。実は、代表的な時効の中断するケースが、もう一つあります。

それは、法的には「承認」と呼ばれています。前回は貸金業者の側がアクションを起こして時効を止める手段でしたが、今回は債務者の側のアクションによって時効が止まるケースです。

「承認」は債務者が請求権の存在を積極的に認めることを言います。しかし、認めると言っても心の中で認めたのでは他人には分かりませんので、争いになった時にはっきりしないので困ります。そこで、外形的に分かる方法で「承認」が行われたと判断された場合に問題になるのが普通です。

外形的に分かる方法で代表的なのは、5年の途中で一部の返済をした場合です。例えば50万円の借金のうち、4年目で1万円を支払ったというようなケースです。この場合、「承認」が行われたと判断されて時効が中断します。(支払った時からゼロに戻って再び時効が進行します)。

これを利用して貸金業者が、支払いが長期間ストップしている顧客に対して、「1000円で良いから支払って下さい」、「1000円払ってくれれば、今日は帰りますから」などと言って支払わせるケースがあります。これに乗っかって支払ってしまうと後で、「支払いがあったので時効は中断している。だから、5年経っても、まだ請求権は消滅していない。」と業者に主張されることになります。もっとも、裁判官によっては、このような詐欺的な方法で支払わせた場合は「承認」には当たらないと判断してくれる場合もあるようです。しかし、必ずという訳ではありませんので、時効を完成させる為には。やはり払わない方が確実なのは間違いありません。

他には次回の支払いを約束した書面などが残っていると、その約束をした日付(支払いの日付ではありません)で「承認」があったと判断される場合もあります。「○月○日に3万円支払います」などと一筆書いてしまうと、後々、書いた日付に時効中断だと言われる可能性がある訳です。

このように時効の中断は、債務者の側のアクションによって発生することがあります。これは、債務者の中にも時効を潔しとしないで借金を支払おうという意思がある場合もあるので、債務者の側からも時効を止める手段を作ろうとしたと言われています。しかし、上記のように貸金業者の側に利用されているケースもよく見られるので注意が必要です。