司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

10月 9th, 2012

10月 09 2012

公正証書と強制執行

司法書士会で強制執行の研修があったので行ってきました。過払金を払わない業者が増えてきたので、最近では強制執行も身近になってきて多数の参加者で会場はほぼ満員でした。

私も強制執行は何度もやっていますので、まあまあベテランの方だと思っていました。確かに研修の大半は知っていることだったので、少し退屈をしていましたが、中には掘り出し物の情報もあり、本日は、その中の一つを紹介しましょう。

公正証書というものがあります。公証人役場というところに行って、公式に約束を証明してもらうものと考えて頂ければ良いでしょう。この中でよく使われるものの一つとして、執行受諾文付公正証書というものがあります。少し長いので省略して執行証書と呼ばれます。

執行受諾とは、もし、この約束を守らなかったら強制執行されても文句は言いませんという取り決めのことです。この取り決めが書かれている公正証書のことを執行証書と呼びます。具体的には、離婚の時の養育費や慰謝料についての執行証書、個人間の貸金についての執行証書などが代表的です。

この執行証書を作っておくと、非常に有利なことがあります。それは、いざ相手が約束を守らなかった時に、いちいち裁判をしなくても、いきなり強制執行が出来るという点です。これだけ有利な点があるからこそ、執行証書は頻繁に作られ利用されます。

しかし一つ問題があります。強制執行をする時には、この執行証書を相手方に送達(郵便で送り受け取りの証明をもらう)しなくてはなりません。強制執行をするということは相手方が約束を破っている時ですから、当然、相手方は警戒しています。そんな時に執行証書が送達されてきたら、「これはヤバイ」と思って金目の物は隠してしまう恐れが充分にあるわけです。

これを防ぐために、執行証書は予め作った時に送達してしまった方が良いということなのです。作った時に送達してしまえば、強制執行の時に改めて送る必要はありません。これなら、文字通り、いきなり強制執行をすることが可能となります。

公正証書を作る時は、相手方も一緒に公証人役場に行って中身を確認したりすることも多いので、それなら、すぐに同じものを送達しなくても良いだろうと考えて、送らない人が多いらしいです。これが後になって、影響が出てくる可能性があるわけです。(弁護士でも気付いていない人が、いるそうです)

いや、良い情報を聞けたと思っています。こういうことがあるから、知っていることでも研修には出た方が良いなと感じます。