司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

7月 30th, 2015

7月 30 2015

個人の貸金請求①

〈事例〉
京都在住で、1000万円を仕事上の知り合いに貸し付けて、金額が高額なので契約書を書き、署名押印してもらった。その際に、念の為、借主の知人2人を連帯債務者として、一緒に署名押印してもらった。
その後、返済日が過ぎても支払いが無いので何度か催促したが、催促するたびに数万円が振り込まれるだけで、のらりくらりと引き延ばされて、結局、返済日から1年以上が経過しても、合計で60万円ほどしか返済されていない。
もうこれ以上催促しても埒が明かないと思い、ネットで検索したところ、名古屋の事務所で気に入ったところが見つかった。丁度、愛知県に行く用事があったので、思い切って相談した。

(事件の経過)
京都から電話がかかってきたので、「うちは名古屋ですが、事務所に来れますか」と聞いたところ、「愛知県に行く用事があるので、ついでに寄れます」と言われたので、相談を受けました。
内容は典型的な個人間の貸し借りです。ただ一つ変わっていたのが、通常は「連帯保証人」と書かれているところが、「連帯債務者」となっていたことです。
連帯債務者というのは一般的には、あまり聞き慣れない言葉ではないかと思います。法的には連帯保証人と良く似ているのですが、「負担部分」という法的効果があるのが特徴です。これについては説明すると長くなるので省きます。
金額が高額なので、内容証明等で請求しても満額支払ってくる可能性が低いと考え、いきなり訴訟に踏み切りました。もちろん、貸主も借主も京都ですから、京都の地方裁判所に提訴です。当然、裁判所に出頭して質疑応答するのは貸主本人で、私は書類作成で支援することになります。
連帯債務者3人に同時に提訴しました。こちらとしては誰かが支払ってくれれば良い訳です。
ところが、提訴して、しばらくしたら、借主から自己破産の通知が送られてきました。どうやらこちらの提訴が引き金になって、借主が自己破産を決意したようです。これで、回収の可能性は連帯債務者2人に絞られました。2人は、実際にお金を借りた訳ではないので、客観的に見れば、気の毒ではありますが、私は貸主から依頼を受けているので、ここは非情にならざるを得ません。うらむなら自己破産して責任を押し付けた借主をうらんでもらうより仕方がありません。(そうは言っても、もし借主から依頼を受けていれば、私も迷わず自己破産をすすめたでしょうから、法律家とは因果な商売です)
事実上、他人の借金を合法的に押し付けられた形になった連帯債務者2人は、危機感を感じたのか、双方とも弁護士を付けて争ってきました。お互いが違う弁護士を付けてきましたから、どうも連帯債務者同士の意思疎通は良くないようだと想像できます。(二人が結託して同じ弁護士に依頼した方が、こちらとしては嫌です)
その後、口頭弁論を2回経過し、双方の弁護士からの主だった反論は、「こんな高額を本当に貸したのか信用できない。」とか、「貸した時の経緯を詳しく説明しろ」とか、「貸した金は何に使われたのか知っていたか」とか、です。まあ、率直に言って苦しい言い訳です。何しろ、こちらは署名押印のある契約書を持っていますから、貸付の経緯や詳しい事情など証明しなくても、裁判上は圧倒的に有利です。恐らく弁護士もその辺の事情は良く分かった上で、何か仕事をしていないとまずいから、反論として弱いことを承知の上で言っているのでしょう。
次回は、第3回の口頭弁論ですが、これ以上、強力な反論が出てこないようならば判決を求めるように貸主には伝えてあります。さて長くなってきましたので、続きはまたの機会に致しましょう。