司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

6月 26 2020

アパートの家財道具の処分を大家に頼まれたら 相続放棄⑮

5:33 PM 相続放棄

亡くなった親族が賃貸アパートに住んでいた場合、その親族が部屋に残してあった家財道具(専門用語で残置物と言います)の処分を大家さんに頼まれることがよくあります。
しかし、相続人が相続放棄を考えている時は処分について注意が必要です。詳しく説明しましょう。

相続放棄をするには、全ての財産について相続してはいけない

相続放棄は借金を相続しないための手段として使われることが多い手続です。そのため借金にばかり焦点があたりがちですが、プラスの財産も相続することができません。もしプラスの財産を相続してしまったら「単純承認」とみなされ、後で相続放棄をすることができなくなります。(単純承認とは、プラスもマイナスも含めた全ての財産を相続することです。)

一度、単純承認すると後から撤回できない

ここで重要なのが「一度、単純承認してしまうと後から撤回することができない」ということです。例えば、プラスの財産を一旦相続してから、後で相続した財産と同じ金額を返還したとしても、単純承認した事実は変わらないということです。
少しでも借金の方が多くなる可能性があるならば、単純承認しないように気を付ける必要があります。

家財道具(残置物)はプラスの財産になるのか

では亡くなった親族が賃貸アパートに残した家財道具はプラスの財産になるのか、という点が問題になります。これを判断するのに重要なのが、家財道具に価値があるのかどうかです。例え低額でも価値がある場合はプラスの財産になると考えられます。

交換価値がある家財道具(残置物)は処分できない

注意すべきポイントは、「捨ててしまうのなら相続にはならないんじゃないか」という思い込みについてです。非常に多くの人が誤解していますが、価値のあるものは相続しないと処分できません。つまり「捨てる(処分する)」という行為は、価値があるものについては相続したことと同じになってしまうのです。そうなれば単純承認とみなされ相続放棄ができなくなる可能性があります。

一括で廃品業者に引き取ってもらうのは危険

大家さんに「残った家財道具を片付けてくれ」と頼まれて、廃品業者に一括で引き取ってもらうというのは誰もが考える方法だと思いますが、相続放棄を検討している場合は気を付けなければなりません。もし、その中に低額でも価値があるものが含まれていた場合、処分行為イコール単純承認とみなされてしまうかもしれません。

これを防ぐためには、処分する前に全ての家財道具について、きちんと査定してもらって、「価値が無い」という証明書を取っておくことです。価値が無ければゴミと同じですから処分しても単純承認にはなりません。

価値があるものが含まれている場合

残された家財道具の中に価値があるものが含まれている場合は難しい対応になります。価値があるものは処分できませんから、相続人の家に引き取るか、倉庫でも借りて保管することになります。
相続放棄をしない相続人がいる場合は、その相続人に後の処理は全て任せるのが正解です。相続放棄をする相続人は、なるべくかかわらないようにするべきです。

相続財産管理人を選任してもらう

未払いの賃料がある時で、相続人が保管することもできないし、全ての相続人が相続放棄をする場合は、大家さんに「相続財産管理人を家庭裁判所で選任してもらってください」と言うしかないでしょう。
全ての相続人が相続放棄をして相続人がいなくなった場合、債権者(未払い賃料がある場合は大家さんも債権者の一人です)は家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらうことができます。
相続財産管理人に残された家財道具を処分してもらえば最も合法的な対応になります。

ただし、この方法にも欠点があります。それは費用と時間がものすごくかかるということです。この負担を大家さんが嫌がって話が進まないということは良くあります。

放置するしかない場合もある

相続人全員が相続放棄をして、誰も保管する人がいなくて、更に大家さんも「片付けてくれ」と言うだけで何もしない場合、放置するしかない時もあります。

もちろん心情的には「放置するのは悪い気がする」と感じる人は多いでしょう。しかし、下手にかかわることで相続放棄ができなくなったら、それこそ大変です。

相続放棄の法的効果は「最初から相続人ではなかったものとみなす」ですから、「私は相続放棄をする(あるいはした)ので、処分行為にあたる家財道具の片づけはできません」と断るしかないでしょう。大家さんとの関係は悪くなるかもしれませんが、法律で決められている以上、仕方がありません。

亡くなった親族の残された財産には気を付けよう

このように相続放棄を考えている場合は、亡くなった親族の残された財産には気を付ける必要があります。家財道具以外でも、例えば自動車があった場合は、勝手に廃車にするのは危険です。必ず事前に査定をして、値段が付くようならば家財道具と同様の選択になります。

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