司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

相続登記(名義変更)

12月 01 2017

法定相続分での相続登記4つのポイント(相続登記⑫)

相続登記をする場合、圧倒的に多いのは遺産分割協議をしてから、協議書を添付して行う相続登記です。
そして、次に多いのが遺言による相続登記です。

もう1つ、相続登記にはパターンがあり、それが法定相続分による相続登記になります。これは件数としては他のパターンよりも少ないです。なぜ少ないのか、その理由についてご説明しましょう。

法定相続分の相続登記4つのポイント

法定相続分による相続登記には大きな特徴があります。
それが、法定相続人のうち1人からでも申請することが出来るという点です。例え相続人の間で話がまとまっていなくても、そのうちの1人から申請することが可能なのです。(もちろん、法定相続人全員が申請人になって申請することも可能です。)

一見、便利そうにみえる特徴ですが、件数が少ないのには、様々な理由があります。
順番に紹介していきましょう。

  1. 共有者が多いため売りにくい
  2. 法定相続分の登記をすると、その不動産は法定相続人全員の共有になります。すると、不動産売却の際には、共有者全員の同意が必要になります(具体的には全員分の実印と印鑑証明が必要です)。
    もちろん全員が同意すれば売却は可能ですが、1人でも売却に消極的な共有者がいると売れなくなってしまいます。

  3. 相続人間でトラブルが起こる
  4. 法定相続人の一人から申請した場合、他の相続人が知らない間に相続登記が行われてしまうことになるので、そのことで相続人の間でトラブルが起こる場合があります。時には、他の相続人が遺産分割調停などを起こして、登記の変更を求めてくる可能性があります。
    (変更が認められるかどうかは、家裁の判断となります。「登記はそのまま」という判断になる可能性もあります。)

  5. 登録免許税は全員分を支払う
  6. 法定相続人の1人から申請した場合でも、相続登記にかかる登録免許税は全員分を支払う必要があります。誤解されることが多いのですが、1人から申請した場合でも、1人分の登記がされる訳ではありません。
    全員分の登記を1人で行えるということなのです。

  7. 登記識別情報が発行されない
  8. 一般の方が最も気づきにくいポイントしては、法定相続人の1人から申請した場合、申請しなかった他の相続人には登記識別情報(昔の権利証に当たるもの)が発行されません。これが次に売却するときに注意すべき点になります。

    売却の際には、全員分の登記識別情報が必要ですが、提出できない共有者がいる場合は、その人に関しては司法書士に本人確認情報を発行してもらう必要があります。その際に追加費用がかかります。(法定相続人全員で申請した場合は、全員に対して登記識別情報が発行されます)

上記のように、法定相続分の相続登記には注意すべき点があります。
ただし、法的には可能な登記なので(一人から申請する場合も含めて)、申請自体は問題ありません。もし希望される場合は、注意点に対して充分に納得して行うようにしましょう。

>>>相続登記についてもう少し詳しく知りたいかたはこちら<<<

11月 01 2017

戸籍の郵送申請と定額小為替(相続登記⑪)

相続登記の必要書類の中で最も手間がかかるのが、被相続人の出生から死亡までの戸籍であるということは、このブログでも何回かご説明してきました。

出生から死亡までの戸籍について

被相続人の戸籍を遡っていくと、転籍をしていることが良くあります。転籍に関しては、相続人も全て認識しているケースは稀で、取得して見たら気付いたというケースがほどんどです。

転籍先が遠方である場合は(北海道や九州などというケースも珍しくありません)、戸籍取得の為に交通費を払う人はいませんので、通常は郵送申請になります。この郵送申請が結構やっかいなのです。

まず、相続の特徴として、申請する段階では出生までの戸籍が何通あるか分かりません。仮に役所に電話しても、「申請して頂かないと通数は分かりません」と言われてしまいます。従って、申請書の書き方に工夫がいります。

また、戸籍の郵送申請の場合、役所の手数料は定額小為替で支払わなくてはなりません。そのようにルールで決まっています。

定額小為替について
定額小為替とは、郵便局で発行してもらう少額の為替のことで、受け取った人が郵便局で換金できる仕組みです。

定額小為替の種類は金額によって細かく分かれていますが、1枚あたり100円という結構高い手数料が取られます。小為替には50円という額面もありますが、50円の小為替でも手数料は100円なのです!
組み合わせを工夫しないと、手数料が結構高くなってしまいますね。
今後は、役所も支払い方法の電子化などに注力していただきたいと思います。
予算は厳しいのでしょうが……。

ここで先ほどの問題が再び起こります。請求する通数が事前に分からない為、定額小為替をいくら封入すれば良いかが決まりません。この場合、司法書士が行う方法は、多めの金額を封入しておいて余ったら、その分は小為替で返してもらいます。

司法書士の場合は余った分を小為替で返してもらっても、次の仕事で使うことが出来ますが、一般の人の場合は、余分に作成した時の手数料が無駄になりますね。

また、定額小為替には、「発行から6ヶ月以内に換金して下さい」と書かれています。これを真に受けて、返してもらった小為替の換金を忘れて6ヶ月を経過したら、あきらめて捨ててしまう人がたまにいます。実は、これは非常にもったいない行為なのです。

実際には、発行から5年以内ならば郵便局は問題なく換金に応じてくれます。万が一、6ヶ月以上経過した定額小為替を持っていたら、覚えておきましょう。

そして、戸籍を発行する役所の、定額小為替の扱いですが、先ほどの理屈でいくと、6ヶ月以上経過した定額小為替を封入して郵送申請しても大丈夫だと思われる方が多いと思います。
しかし役所は通常6ヶ月以上経過した小為替は受け取りません。
一部受け取る役所もあるそうですが、そのような柔軟な対応をしてくれる役所は少数派なので、あまり期待しないようにしましょう。

相続登記についてもう少し詳しく知りたい方はこちら

9月 06 2017

出生から死亡までの戸籍(相続登記⑩)

ピンとこない出生から死亡までの戸籍

相続登記の必要書類の中で最も取得が大変なのが「出生から死亡までの戸籍」です。
相続を経験されたことが無い方は、言葉を聞いてもピンとこないかもしれません。
相続以外で「出生から死亡までの戸籍」を取得することは、まず無いからです。

銀行でもよく聞かれるのが、「お客様に戸籍や除籍の取り寄せをお願いすると、間違っていることがよくある」とのことです。
被相続人が死亡する直前に入っていた戸籍と相続人の現在戸籍の2通だけ持ってこられる方が多いそうです。

専門家の立場からしても、「出生から死亡までの戸籍」について説明するのは非常に大変です。
大半の人にとっては初めての経験なので、「戸籍の取得」と聞くと、普段、目にしている現在戸籍のことだと思ってしまうからです。

さかのぼるのは大変な昔の戸籍

戦後は「結婚」「引越による転籍」などで新しい戸籍に移ります。
(近隣の引越の場合は移らないこともありますが。)
また、戸籍法の改正があった場合も、新しい戸籍が作成されます。
戸籍法の改正は戦後を通じて数回あります。
そして新しい戸籍が作成されるたびに、その人の出生から死亡までの戸籍の数は増えていきます。
複数の結婚や引越による転籍を経験している人は、戸籍の数もかなり多くなりますね。

また戦前は、今とは全く違う「家督相続」によって戸籍が作られていますので、見慣れていないと、どこに何が書いてあるのかも分からない様式になっています。
戦前は、筆頭者ではなく戸主を中心に戸籍が作られていて、結婚しても戸籍を離れません。
一つの戸籍に何組もの家族が記載されることになり、ページ数も多くなっています。
また、昔は今よりも養子に出されたり、養子を迎えたりすることも多く、関係性が複雑になっています。

しかも、戸籍が機械化されたのは最近のことなので、少し古い戸籍になると手書きで書かれています。
これがときに達筆すぎて大変に読みにくい場合があります。
専門家は見慣れていますから何とか読み解くことが出来ますが、初めてだと相当に苦労するでしょう。

甥姪(おいめい)の戸籍は特に注意

日本は高齢化が進んでいますから、戦前生まれの方も、まだ多く生存しています。それらの方が亡くなった時、戦前までの戸籍を全て取得しなくてはいけません。私の経験では、平均して5~6通は取得していることが多いです。

亡くなった方に子供がいなかった場合は、より取得する戸籍の数が多くなります。
現在は、医療制度が発達していますから、高齢で亡くなる方が多くなりましたね。
その場合、両親や兄弟姉妹も高齢ですから、既に亡くなっていることが多くなります。
そうすると、亡くなった人に子供がいない場合は甥姪が相続人になりますね。
実際そういうケースが増えています。当然、必要な戸籍も膨大になります。
甥姪の数が20名以上になることもありますよ。
そうすると戸籍の数も3ケタにまで増える可能性もあります。

相続人が甥姪の場合

  • 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍
  • 父親の出生から死亡までの戸籍、母親の出生から死亡までの戸籍
  • 先に亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍
  • が全て必要になります。
    揃えるには1か月以上かかることもあるでしょう。
    特に遠方の場合は、出向くことはなかなかできないでしょうから、郵送で請求することになります。

    このように「出生から死亡までの戸籍」を取得するのは、かなり大変な作業になります。少なくとも、普段目にしている現在戸籍(一番新しい戸籍)を取得するのとは訳が違う、と言うことは覚えておきたいですね。

    >>>相続手続は、自分で出来る?司法書士に依頼する? 気になる方はこちら
    <<<

    12月 08 2016

    死亡から何年経つと住民票の除票が取れなくなる? (相続登記⑨)

    相続登記の必要書類の中に住民票の除票または戸籍の附表があります。

    このうち住民票の除票については注意が必要です。
    住民票の除票は、作成されてから5年間しか役所が保存してくれません。
    つまり、死亡時に除票が作成された場合は、5年以上放置すると除票が取得できなくなります。

    他に同じ世帯で生きている人がいる場合は、住民票自体は除票にはなりませんので、5年以上経っても取得できます。
    ただし取得する時に、「死亡した家族の分も記載したものが欲しい」と請求する必要があります。
    何も言わないと、死亡した家族は記載されませんので注意しましょう。

    では世帯で最後に亡くなった場合で、5年以上放置してしまったら、どうすれば良いのでしょう。そういう場合の対処法が実はあります。
    しかし専門的な対処になりますので、そのようなケースでは専門家に相談に行かれるのが良いと思います。

    より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

    https://www.hashiho.com/inherit/registration/

    11月 22 2016

    父と母が亡くなった場合の名義変更(相続登記⑧)

    父・母のうち、どちらかが先に亡くなった時点で相続登記をせずに放置していました。
    その間にもう一方も亡くなった場合の相続登記は、どうなるのでしょうか。

    本来であれば、放置していた名義変更をしてから、後から亡くなった方の名義変更をするというステップを踏むことになるでしょう。
    このパターンだと2件の登記申請をすることになります。
    もちろん、この方法でも正解です。

    しかし、連れ子などがいなくて、両親とも共通の子供が相続人の場合は、登記申請が1件で済む可能性が高いです。
    1件で済めば、登録免許税も安くなりますし、必要書類も少なくて済みます。
    このことについて、きちんと把握している専門家なら、費用も安くしてくれることが期待できます。

    >>>2次相続の相続登記は、遺産分割協議書の工夫が必要<<<

    一方、同様のケースでも、不動産が父母共有名義になっている場合は話が違ってきます。

    何故なら、父が亡くなった時と母が亡くなった時では、移転する(名義変更のことを不動産登記法では所有権移転と言います)不動産の持分が異なるからです。

    具体的には、父が亡くなった日付で「父持分全部移転」母が亡くなった日付で「母持分全部移転」の2件の登記申請が必要となります。

    このように一見、同じように見える名義変更でも、申請方法は全然違うということもありえますので注意が必要です。

    より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

    https://www.hashiho.com/inherit/registration/

    11月 21 2016

    規約共用部のあるマンションの名義変更(相続登記⑦)

    規約共用部とは?

    規約共用部とは、どのようなものなのでしょう。
    耳慣れない言葉で初めて聞いたと言う人も多いのではないでしょうか。

    規約共用部とは、契約時のマンションの規約で、あらかじめ共用部として設定されている場所のことです。
    具体的には、「管理室」「集会所」などが代表的です。
    管理人が住み込みの場合は、「管理人住居」などが含まれている場合もあります。

    これらの場所は、マンション所有者が持分割合で共有し、マンションの専有部分を売却した時は、規約共用部も一緒に移転するという取り決めになっているのが通常です。

    マンションの名義変更の相談を受けた場合、規約共用部の存在を見落としている人も珍しくありません。
    司法書士が指摘して初めて気が付かれる方もいます。

    ただ、規約共用部に関しては、権利の登記の設定が最初からありませんので、実は名義変更は必要ありません。
    専有部分と一緒に動くので不要だと考えられます。
    これは覚えておくと良いと思います。

    登録免許税の金額には注意!法務局から呼び出しも

    また、規約共用部は名義変更は不要ですが、登録免許税の計算には含めなくてはなりません。
    矛盾していますが、法務局では、そのような取り扱いになっているのです。

    これは非常に間違えやすいので、注意するポイントです。
    名義変更はしないので、申請書の不動産の表示には書かれないにもかかわらず、登録免許税の金額欄には規約共用部も含めた金額を書かなくてはいけません。
    ややこしいですよね。
    この金額を間違えると法務局から呼び出されることになります。

    不動産登記(名義変更)には細かいルールがたくさんあります。わからないまま提出すると、法務局から呼び出され、二度手間になります。
    不明な点があれば、専門家に任せるのも1つの方法ですね。

    より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

    https://www.hashiho.com/inherit/registration/

    12月 03 2015

    兄弟姉妹の相続登記は、書類収集が大変!(相続登記⑥)

    被相続人(亡くなった人)には、配偶者は既に亡くなり、子どももいませんでした。
    そこで被相続人の兄弟姉妹が、相続をすることになりました。
    手続はどうなるのでしょうか。
    簡単にはいきません。
    証明しなくてはならないことが、たくさんあるからです。

    兄弟姉妹が相続人になる場合

    日本の民法では、相続順は以下のようになっています。
    まず配偶者は生きていれば必ず相続人になります。
    それ以外には、

    (1)第一順位  子供
    (2)第二順位  直系尊属
    (3)第三順位  兄弟姉妹

    となっています。

    上記の例の場合では、第三順位の兄弟姉妹が相続人となります。
    そのためには第一順位と第二順位が全て生存していないことを証明しなくてはなりません。
    主に戸籍で証明します。
    他の相続人のときとは異なり、膨大な量の戸籍の収集が必要となります。
    正直なところ、司法書士ですら、兄弟姉妹の相続の資料を集めるのは相当に大変な作業です。

    では具体的に何が大変なのかを説明していきましょう。

    ①兄弟姉妹が何人いるかの証明

    これを証明する為には、被相続人の父親と母親、双方の出生から死亡までの全ての戸籍の収集が必要となります。
    なぜ必要なのでしょうか。

    被相続人の父親または母親に、過去のどこかの時点で生まれた、被相続人の把握していない子が存在するかもしれないですよね。
    だから、必要になるのです。

    実際に、ありますよ。
    「うちはそんなこと、一度も聞いたことがないから大丈夫」
    調べてみると、母親が若い頃、誰かと結婚していて子どもを1人産んでいたということは、珍しくありません。

    わたしは何度も、目にしています。

    それに、そもそも父母の戸籍自体が、集めるのに時間がかかることもあります。
    よくお引越しをされている方は注意が必要です。
    本籍も動いていたりすると、特に面倒なことになりやすいですよ。

    ②直系尊属がいないことの証明

    まずは、両親が既に亡くなっていることの証明が必要です。
    しかし、これだけでは済みません。

    祖父母が亡くなっていることの証明も必要になります。
    祖父母は、父方、母方と双方いますので、合計4名分の証明が必要となります。

    ちなみに、祖父母が生年月日から110歳を超えていることが明らかな場合は、生年月日の証明だけで良いということになっています。
    これは、法務局が、110歳を超えていれば亡くなっていると推定してくれる取り扱いになっているからです。

    裏を返せば、110歳を超えていないことが明らかな場合は、祖父母の上の世代の証明も必要となります。
    (若くして亡くなられた場合の相続では、可能性がありますね)

    ③兄弟姉妹で既に亡くなられた方がいる場合は?

    兄弟姉妹は被相続人と年齢が近い場合が多いですね。
    そうすると、被相続人が亡くなられたときには、兄弟姉妹の中にも亡くなられた人がいるケースが多くなります。

    その場合、親に代わって兄弟姉妹の子供に相続権が発生します。

    これを民法では代襲相続と呼びます。

    兄弟姉妹の相続の場合は、代襲相続が発生しているケースが珍しくありません。
    そのときは、亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの全ての戸籍を収集する必要があります。
    子どもが何人いるのかを調べる為です。

    終わりに

    いかがでしょうか。
    ここまで読んできて、うんざりしてきた方も多いのではないでしょうか。
    兄弟姉妹の相続登記は、一筋縄ではいきません。
    あれも足りない、これも足りないと、何度もあとから取る必要が出てくることもよくあります。
    法律に詳しい方でも途中であきらめしまうのも、うなづけますね。
    多少のお金で解決するなら、司法書士に依頼するのも1つの方法です。
    貴重な時間の節約にもなりますよ。

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    12月 02 2015

    「敷地権の無い区分建物」の登記事項証明書の取得方法(相続登記⑤)

    敷地権の無い区分建物とは、どういうものでしょう。
    その登記はどうなっているのでしょうか。
    登記事項証明書を取得するときの注意事項もあります。
    見ていきましょう。

    マンションで、敷地権の表示がある場合

    マンションのことを不動産登記法では区分建物と呼んでいます。
    区分建物の場合、登記の仕方が一戸建てとは異なり、登記事項証明書(登記簿)を見れば、すぐに分かるようになっています。

    具体的には、「専有部分の建物の表示」という項目があり、全体の中の一部を所有していることが表示されているのです。
    (一戸建てには、この表示はありません)

    更に、区分建物の場合、「敷地権の表示」がある場合があります。
    これは必ずある訳ではありません。

    敷地権の表示がある場合は、一戸建てのように土地と建物に登記が分かれていません。
    土地が建物にくっつく形で、建物の登記に土地の登記も含まれているのです。
    従って、建物の登記事項証明書を取れば、土地の登記事項証明書は不要となります。
    (不動産登記法では、「敷地権付区分建物」と呼びます)

    マンションで敷地権の表示が無い場合

    一方、区分建物であっても敷地権の表示が無い場合は、土地と建物の両方の登記事項証明書を取得する必要があります。
    この時に、ちょっと、ややこしいことが起こります。

    区分建物の土地の場合、当然、マンションの住人全員が、その土地の所有者となっています。
    この状態を「共有」と呼び、共有している人を「共有者」と呼びます。
    大規模マンションの場合は、かなりの人数の共有者がいることになります。

    敷地権の表示の無い区分建物の土地の登記事項証明書を、何の指定もせずに取得すると、これらの共有者全員分の情報が記載されたものが出てきてしまいます。
    大規模マンションの場合は相当に分厚い束になり驚く人も多いようです。

    中身は共有者全員の住所・氏名、いつ購入したか、購入した時の借入金額、担保を付けている金融機関の名称などです。

    ここまで読んで「そんなの個人情報の流出じゃないか」と思った人は、残念ながら早合点です。
    上記の情報は公開が義務付けられた情報なのです。
    不動産登記法では、「登記事項証明書は誰でも取得することが出来る」と規定されているからです。

    もともと、不動産登記とは、買主が不良物件をつかませられないように、購入する前に不動産の情報を入手する為に整えられたものです。
    不動産は高額な商品ですから、何かあったら取り返しがつきません。
    それで常に情報を公開して安心して取引できるようにしたのです。

    必要な部分だけ登記事項証明書を取得する方法

    司法書士が敷地権の無い区分建物の登記を引き受けた時は、通常、依頼者以外の部分は記載されていない土地の登記事項証明書を取得して渡します。

    例え公開が義務付けられていると言っても、わざわざ第三者の情報が満載されたものを渡すのには抵抗があります。
    また、何ページにもなる分厚い書類だと依頼者の情報を探すのも一苦労で、分かりにくいというのもあります。
    窓口で特定の所有者を指定して取得するのは可能なのです。

    そこで問題になるのが、最近、増加してきたオンライン申請です。
    オンライン申請は費用も安く窓口に出向く必要も無いので非常に便利です。
    しかし、欠点もあります。
    それが、「敷地権の無い区分建物の土地の登記事項証明書を取る時に特定の所有者の指定が出来ない」というものです。
    つまり、オンラインで取ると必ず共有者全員分が記載されたものが届いてしまう
    のです。

    従って、特定の所有者のものだけを取ろうと思ったら、窓口で申請するか、郵送申請するか、しかありません。
    しかし、どちらもオンライン申請よりも100円高くなります。

    情報が少ない薄い方が高いなんておかしいと思った方もいるかもしれません。
    発行する側からすれば、一人だけ抜き出す方が事務作業としては手間がかかる訳です。

    法務省は、いずれオンライン申請でも、特定の所有者を抜き出して申請できるようにしたいとは言っていますが、目途はたっていません。
    今のところは、窓口か郵送の申請で取得するしかないのが実情です。

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    7月 10 2015

    登記識別情報のシールはがれ、紛失の対処法(相続登記④)

    登記識別情報の失効という手続

    登記識別情報の目隠しシールが気づかないうちにはがれていた、あるいは登記識別情報の記載された紙を紛失してしまった、というような場合、どうしたら良いでしょうか。

    こんな場合に備えて、登記識別情報には「失効」という手続が用意されています。
    登記識別情報を失効した場合、そのパスワードは登記には使えなくなります。
    ようするに無効になるのです。
    クレジットカードを失くした時の「紛失の届出」のようなものだと言えば分かり易いでしょうか。

    登記識別情報の再発行はありません!

    しかし、クレジットカードとは異なる点が一つあります。
    それは再発行が出来ないということです。どんな理由であれ、法務局は登記識別情報の再発行を認めていません。

    これは恐らく、もし再発行を認めてしまったら、大きなトラブルになるからでしょう。
    免許証などを偽造して本人になりすまして再発行を申請してきた場合に、法務局が「なりすまし」を見抜けなかったら大変です。
    何しろ、不動産ですから金額も高額になりますので、謝って済む問題ではなくなります。

    失効後、次に登記するには?

    では失効させた場合、次に登記をする時には、どうすれば良いのでしょうか。

    これについても対策が用意されています。
    司法書士に「本人確認情報」というものを作成してもらうのです。
    これが添付されていれば、「登記の専門家である司法書士が間違いなく本人確認をした」ということで、法務局は登記手続を受け付けてくれます。

    しかし、本人確認情報は司法書士にもリスクがあります。
    登記識別情報を持っていない人に対して、不動産の権利者であることを保証する訳ですから、もし間違っていたら当然、司法書士の責任になります。

    ですから、本人確認情報を作成する場合、追加の費用を頂くのが通常です。
    これは責任が重い立場なので、ご理解頂きたいと思います。
    また、登記識別情報よりも慎重な審査が法務局でされますので、通常よりも時間がかかることも覚悟しておいて下さい。

    例え時間と費用が余分にかかったとしても、他人に見られた可能性がある登記識別情報を放置しておくことは、おすすめできません。
    不動産という高額の財産を安全に維持する為にも、心配だと思ったら迷わず失効手続をしましょう。

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    7月 09 2015

    登記識別情報とは? 昔の権利証との違い(相続登記③)

    不動産登記法が改正されてから、新しく登記を行うと、従来の「権利証」とは異なり「登記識別情報」というものが発行されます。
    今回は、まだ見慣れない人も多いと思われる登記識別情報について説明しましょう。

    権利証から登記識別情報へ

    長らく日本の不動産登記では、所有権を証明する重要書類として「権利証」が使われてきました。
    権利証とは正式名称を「登記済証」と呼び、不動産を譲ることを「権利証を譲る」と表現する場合もあり、金庫などに大切に保管していた人も多かったのです。
    (厳密には、権利証を持っているだけでは所有権の証明にはなりませんが、一般的にはそのように考えられていますね。)

    ところが長く親しまれていた権利証が、不動産登記法の改正により発行されなくなりました。
    その後は、新しく「登記識別情報」という名前の1枚の紙が発行されるようになりました。

    実は、この登記識別情報は、従来の権利証とは大きく性質が異なっています。では何が違うのでしょうか。

    その違いを理解するためには、まず何故、権利証が重要な書類なのかの説明をする必要があります。

    売買、借入時の必要添付書類としての権利証

    不動産の権利を売買で他人に移転する場合、所有権移転という登記手続が必要です。
    金融機関から金を借りて不動産を担保に入れる場合も、抵当権設定という登記手続が必要です。
    その手続をする際に、申請する法務局に対し必ず権利証を添付書類として提出しなければなりません。
    権利証が添付されていなければ、登記は却下されてしまいます。

    権利証を持っていなければ、他人に売ることができない、金を借りて担保に入れることも出来ません。だからこそ権利証は重要書類だったのです。

    これが登記識別情報になった場合、どのように変わるのでしょうか。

    登記識別情報の注意点!重要なのは、紙ではない!

    登記識別情報とは「紙に書かれた12桁のパスワード」です。重要なのは発行された紙ではなくて、パスワードそのものなのです。

    従って、売買による所有権移転登記や、担保に入れるための抵当権設定登記の際に必要なのは、パスワードであって紙ではありません。
    ここが最も大事なところです。

    ようするに、登記識別情報の場合は、紙が手元に置いてあっても、そこに書かれていたパスワードを他人に知られてしまったら、取られたのと同じことになってしまうのです。

    「何と恐ろしいことだ」と思った人も多いでしょう。
    しかし、一応、予防策があります。
    それは、発行された紙には、パスワードが書かれた部分に特殊なシールが貼ってあって読めないようになっています。

    そのシールは一度はがすと、二度と貼れないように特殊な加工がしてあります。
    従って、次に登記手続をするまでは貼ったままにしておけば、見られる心配はなくなります。
    もし、はがれていれば、それは誰かが見たということが分かるようになっているのです。

    では、万が一、はがれていたのを見つけたら、どうしたら良いのでしょう。それは、次回に説明したいと思います。

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