司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

遺産承継業務

1月 15 2017

想定外の相続人がいた!(遺産整理②)

想定外の相続人の存在

相続の相談に来られた女性がいました。
当初のお話では「姉が亡くなったのですが、子供はいないし、両親も先に亡くなっているので、自分と兄が相続人です。相続手続をお願いします」とのことでした。

もう一人の相続人であるお兄さんも同様の認識でした。
わたしも「兄弟姉妹の相続」だから戸籍調査は大変だろうと思って、さっそく役所に行きました。
すると、意外な事実が判明したのです。


古い戸籍に結婚と離婚の記載が見つかり、被相続人(相談者の亡姉)は二度目の結婚だったことが判明しました。
兄も相談者である妹も、この事実は知りませんでした。
しかも、大変短い一度目の結婚期間中に何と子どもが1人生まれていたのです。
その子どもは離婚後、最初の夫に引き取られていて、それきり縁が無いようでした。

追跡調査をした結果、その子どもは生きていることがわかり、結果、法的にその子どもが唯一の相続人になりました。
被相続人とはまったく縁が無くなっていた一人の子どもが相続人になったのです。

感情的に難しい解決

自分達が相続人だと思っていた兄妹は大騒ぎになったことは言うまでもありません。
まるでドラマか映画にでも出てきそうな展開が現実のものとなったのです。

子どもも両親もいないと思っていた姉の世話を兄妹がしてきたこともあり、複雑な思いだったことだと思います。
私が「事務所でお互いに会って話し合ったら、いかがでしょう」と提案しても、承諾されることはありませんでした。
お気持ちは良く分かります。しかし、法的にはどうしようもありません。

相続人として突如連絡を受けた、子どもに該当する方は、物心ついたころから母親とは一度も会ったことが無いし、亡くなったことも知らなかったという話です。
しかし、法的に正当な権利者であることは間違いありません。

この場合の解決方法は、お子様が一旦、相続手続を取って、後は、お子様と、被相続人の兄妹の話し合いで、今までの世話をしてきた部分の贈与を受けるという方法くらいしか無いように思います。
もちろん、お子様の承諾が前提ですが。

結局、兄妹は話し合いを拒否することを、続けられ、弁護士に相談に行かれるようでした。明確な相続人が別にいて、自分たちは相続人ではないことが確定してしまったケースなので、弁護士でも、どうしようもない案件だとわたしは思っています。

もし戸籍を見る機会があれば確認を!

実は、兄妹は、以前に姉の古い戸籍を見たことがあるようなので、発見するチャンスはあったのです。
しかし、思い込みとは怖いもので、一度目の結婚・離婚の記載を見逃していたようです。古い戸籍は見慣れていないと、手書きの旧字で書かれていたりするので、読み取りにくいということもあるでしょう。
戸籍の形式も現在とは全く違いますので、どこに何が書かれているのかも慣れていないと分かりにくいのです。

もし、ご自身で手続きをしていたら、気が付かずに銀行などに戸籍を出して、窓口で「戸籍が足りません」と指摘を受け、足りない戸籍を取得した段階で判明して、銀行から「あなたは相続人ではありません」と言われて手続がストップすることになったでしょう。
具体的な相続手続きの前に判明しただけでも、ご相談を受けた意味はあったと思っています。

この例のように、あとから子の存在がわかることは、何度も経験しています。
あるいは、子は存在していなくても、実は再婚であったことも、ご高齢の方には珍しいことではありません。
たいていの場合、なぜかご兄弟はその事実を知らないこともよくあります。
昔の事情ということでしょうか。
思い込みで、手続きを進めると、意外な事実に出会うこともありますので、手続きをされるときは、このブログのことを覚えておいてくださいね。
いざというとき、驚かずに済みます。

より詳しい情報をお知りになりたい方は、以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/isanseiri/

1月 04 2017

第三順位(兄弟姉妹・甥姪)の相続のための戸籍(遺産整理①)

第二順位の相続人の死亡証明

相続が発生した時、被相続人に子供がいなかった場合、ほとんどのケースで、相続人は配偶者と、第三順位の人(兄弟姉妹・甥姪)になります。
これは、高齢化が進んでいる日本においては、相続が発生したときには、第二順位の直系尊属(両親・祖父母)は既に亡くなっているケースが大半だからです。
従って、第二順位(直系尊属)が相続人になることは非常に稀なケースとなります。

法的には、第三順位の相続手続を進めるためには、第二順位の相続人が既に死亡していることを戸籍等で証明しなくてはなりません。
このとき、第二順位の相続人は永久に遡ることが出来るので、どこまで証明する必要があるのかが問題になります。

この基準が役所によって統一されていません。
すると、非常にやっかいなことが起こり得るのです。

役所ごとの証明基準の違い

例えば、不動産の名義変更の際に提出する役所は法務局ですね。
法務局においては、誕生日から計算して110歳を超えている場合は、それ以上、遡る必要は無いというルールを設けています。
これは、ある意味、合理的なルールで、最高齢の人でも110歳は超えていないので(注)、これ以上遡るのは現実的では無いという理屈です。

(注)2018年4月に112歳の方が存在します。ただし、法務局の基準は、いまのところ変わっていません。もしかすると、110歳以上の方がある程度の人数に達すると、基準が変更されるかもしれませんね。

一方、自筆証書遺言を検認する場合、提出するのは家庭裁判所です。
名古屋家裁では法務局とは全く異なる基準を設けているのです。
(法務局は全国統一基準だと思われますが、家裁は都道府県によって異なる可能性があります)。
家裁のルールは、被相続人の両親が明治または大正生まれの場合は、それ以上遡る必要は無いというものです。

これは、あまり合理的では無い、少々雑な基準ではないかと私は思います。
何故なら、祖父母の年齢では判断しないと言うことになるからです。
この点に関しては、法務局の基準の方が納得がいきます。

遺産整理業務をしていますと、遺言の検認と不動産の名義変更を同時に引き受けるケースがあります。
提出する役所によって基準が異なるのは、正直、戸惑いを覚えます。
まさに縦割り行政の弊害と言えるでしょう。
できれば、基準は統一して欲しいと思っています。
皆さんが書類を準備する場合にも、わかりやすくなりますよね。

より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/isanseiri/

« Prev