司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

その他

5月 10 2017

配偶者の短期居住権とは(相続法改正②)

配偶者の居住権の保護(住み慣れた家に住み続けるために)(相続法改正①)
で説明したとおり、被相続人が遺言で配偶者以外の者に、居住している不動産を遺贈した場合、現行の法律では、配偶者は無償で住み慣れた家に居住を続けることが出来ません。

この場合、配偶者は居住の権利を有していない為、不動産所有権を遺言で取得した者から明渡請求を受ける可能性があります。法律上、配偶者はこの明渡請求を拒否することは出来ません。

そこで改正が検討されているのは、被相続人の死亡から遺産分割の話し合いが成立するまでの間、配偶者の居住を保護する為の規定を設けることです。これを配偶者の短期居住権と呼んでいます。

しかし、それでは遺産分割の後はどうなるのか、と言う問題が残ります。それは、相続法改正①で取り上げた「長期居住権」という別の権利規定を設けることで解決しようと考えているのです。
長期居住権については別のブログで説明することにしましょう。

5月 08 2017

配偶者の居住権の保護(住み慣れた家に住み続けるために)(相続法改正①)

現在、相続法の大幅な改正が検討されています。
まだ確定ではありませんが、一応、このような改正が検討されているということについては知っておいても損はありません。
今回は、配偶者の居住権の保護の規定について紹介しましょう。

例えば以下のような事例を考えてみましょう。
夫が亡くなり、相続人は妻と夫の甥姪の4人です。
夫の姪とはほとんど会ったことも無く他人も同然です、夫の姪からは、家を売却したいから出て行ってほしい、と言われています。
妻は出て行かなければならないのでしょうか。
遺言(子どもがいない場合)相続関係図
配偶者の一方が死亡した場合、残された配偶者は、それまで住んでいた家に住み続けたいと思うのが普通でしょう。

しかし、最近は子どものいないケースも少なくありません
高齢化も進んでいるため、配偶者の一方が亡くなったときには両親も亡くなっていることが多いでしょう。
そうなると、残された配偶者との共同相続人になるのは、亡くなった配偶者の兄弟姉妹か甥姪になります。

高齢で亡くなっている場合は、兄弟姉妹も同様に高齢で亡くなっているケースが多くなりますので、必然的に甥姪が共同相続人になるケースが増加しているのです。

自分の甥姪ではなく、配偶者の甥姪ですから、あまり面識がなく他人も同然というケースも多くなります。
このとき、相続財産に預貯金が多くあれば、あまり問題にはなりません。
めぼしい財産が居住している不動産だけ、あるいは不動産が占める割合が高いと問題が生じます。
あまり面識の無い配偶者の甥姪に対して何らかの財産を渡す必要があるのに、元手が無いということになるからです。
この場合、甥姪からは、不動産を売却して現金に換えて分配して欲しいという要求が来る可能性が大きくなります。
預貯金が多くあれば、預貯金を分割する方法もありますので、住み慣れた家を売却することを避けることができます。
(預貯金は減ってしまいますが……。)

また、事例のケースで夫が妻以外の者に不動産を遺贈していた場合、遺贈された者から妻に対して建物明渡請求をされる可能性があり、現状の法律では、この明渡請求を拒むのは難しいとされています。
これらの不都合を一発で解決する方法があります。
甥姪には遺留分が認められていませんので、「妻に不動産を相続させる」という遺言が残されていればよいのです。
しかし、残念ながら日本では遺言を残す習慣が確立しておらず、まだまだ少ないのが現状です。
最近は、徐々に増えてきていはいますけれど。

それで、このような場合の配偶者の保護規定として、現在、改正が検討されているのが、一定の期間、配偶者に住み慣れた家に住む権利(居住権)を認めよう、というものです。

検討されている居住権には、短期居住権と長期居住権の2種類があります。
これについては、別のブログでご紹介しましょう。

配偶者の短期居住権について

7月 22 2016

相続手続は、自分で出来る?司法書士に依頼する?2

前回は、戸籍収集から相続関係説明図の作成までをご説明しました。
今回は、遺産分割協議書の作成と、不動産の相続に関する登記についてご説明いたします。

遺産分割協議書の作成

    相続人の方がご自身で行う場合

相続人が確定し、財産目録を作成した後は、遺産分割協議を行います。
遺産分割を行う際には、法定相続分や遺留分といった決まりごとを把握しておく必要があります。

また、相続登記や金融機関の名義変更に使う為には、遺産分割協議書にも、一定の要件があります。

せっかく作った遺産分割協議書が、法的な不備がある等の理由で、相続登記や金融機関での名義変更で使用できなかった例も少なくありません。
司法書士に再作成してもらい、署名・捺印をすべて取り直さなければならなかったということも起こり得ます。

    当事務所にご依頼頂いた場合

ご要望があれば、遺産分割協議書を作成する前の遺産分割協議の段階からサポートさせて頂くことが可能です。
司法書士は弁護士とは異なり、特定の相続人の代理人として協議に参加することはありません(これをやると、他の相続人とは敵対してしまいます)。

代わりに公平な第三者の立場で、すべての相続人の間で協議するにあたっての分割案作成のアドバイスや、協議で決定した内容が法的に問題がないかのチェックを通してサポートさせていただきます。

相続人の皆さまで遺産分割の方法が決定しましたら、その内容をもとに、各種手続に使用するための要件を満たした遺産分割協議書を作成させていただきます。

不動産の相続に関する登記

    相続人の方がご自身で行う場合

被相続人が残した土地や建物などの不動産を相続した場合、所有者の名義を変更しなければなりません。
名義変更が済んでいない不動産は、長期間手続をせずにいると、相続人の間で新たな相続が発生することもあり、将来トラブルが起こりやすくなります。

所有者が変わったタイミングで名義変更の手続を行うことをおすすめします。
相続登記(名義変更)は、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。
まず、相続する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、その不動産の正確な情報を把握します。
登記事項証明書は法務局へ交付申請を行います。
その後、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等と、相続人の戸籍謄本を収集します。相続人の住民票も必要です。

相続登記を行う際に、「登録免許税」という税金を支払う必要があります。
この税金を算出する根拠となる「固定資産評価証明」も取得する必要があります。
物件所在地の市区町村の役所で取得します。

また、一般的な相続登記では、遺産分割協議書や相続関係説明図の作成が必要となります。

すべての書類が揃った段階で法務局に申請を行います。

このように様々な役所に何回も出向く必要が出てきます。
不足書類に後から気付いた場合、同じ役所に再び行く必要が出てくることもあります。
また、法務局は他の役所に比べて申請書類の間違いに非常に厳しい傾向があります。
不動産という高額な財産を扱っているので仕方がない部分もありますね。
ほんのわずかな間違いでも補正という呼び出しがかかり、その為に再び法務局の窓口まで行かなくてはならなくなります。

    当事務所にご依頼頂いた場合

まずは必要な戸籍関係書類の収集をさせていただきます。
また、対象不動産の登記情報の確認、登記手続に必要な書類の作成を行い、署名・捺印等をいただきます。
これらのことは、慣れているので、間違いがありません。

法務局への登記申請は、司法書士が代理して行います。
登記が完了すると、登記完了証や登記識別情報通知書等の完了書類の受け取りも代行します。
時間の節約もかなりできますね。

相続関係が複雑になっていたり、被相続人が死亡してから時間が経っているなど、トラブルも起こりやすい場合でも、司法書士に依頼すれば、早くて正しく手続きが進みます。

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当事務所は相続による各種手続に早くから積極的に取り組んでいます。開業15年を超えました。
仕事が忙しくて時間が取れない場合、高齢のため役所に何度も行くのが大変な場合、遠方の相続人がいて書類のやり取りが大変な場合など、司法書士に任せることでスムーズに解決できる可能性が高いです。当てはまる方は、経験豊富な当事務所にご相談

>>>相続登記について、詳しく知りたい方は<<<

7月 22 2016

相続手続は、自分で出来る?司法書士に依頼する?

相続手続は、そもそも自分で出来るのでしょうか?
はい、自分で出来ます。
やろうと思えば。
では、なぜ司法書士に依頼する人がいるのでしょう。

当事務所が各種の相続手続をさせていただくのは、相続手続というものが、

    多くの専門知識が必要となる
    複雑で非常に手間がかかる
    失敗したらやり直しがきかない場合がある

からです。

自分の時間を大切にしたい方や、取り返しのつかない失敗は絶対に避けたいという方は、プロに任せたほうが無難ですね。
当事務所の専門知識と経験をご活用いただくことで、少しでも相続人の皆さまの負担を軽減できればという思っています。

自分でする 対 専門家に依頼

相続手続をご自身で行うということは、具体的にどういうことをするのでしょう。
まず相続に関して様々な勉強をして正確な知識を取得しなければなりません。
更に平日に仕事を休んで役所や金融機関等の窓口へ何度も行くことになります。
他の相続人全員から署名・捺印や印鑑証明書を取り付ける必要があります。
そして、失敗しないように慎重に手続きを進めなくてはなりません。

次に、実際に、相続人の方がご自身で行った場合と、当事務所にご依頼頂いた場合とで、どれだけ相続人の皆さまの負担が変わってくるかを具体的にご説明したいと思います。

相続人の方がご自身で行う場合

今回は、戸籍収集から相続関係説明図の作成までを見て行きましょう。

相続が開始した場合に、必要になる書類

    戸籍謄本
    除籍謄本
    改製原戸籍謄本

などの戸籍関係書類です。

遺産分割協議を行う前提として、法定相続人を確定させなければなりません。
そのために、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍を取得する必要があります。

また、他にも添付書類として戸籍関係書類が必要となる場合があります。
相続放棄申述手続や遺言書検認申立といった家庭裁判所での各種申立手続を行う場合や、不動産の名義変更(相続登記)、預貯金の名義変更を行う場合です。
覚えておかれると良いでしょう。

戸籍関係書類を収集する流れ

  1. 被相続人の本籍地の役所から戸籍謄本の取得
  2. 被相続人の戸籍関係書類を収集する場合、死亡時の戸籍から遡って取得していくことが一般的です。
    まず、被相続人死亡時の本籍地の役所に戸籍の請求をします。

  3. 被相続人の戸籍をチェックしながら、出生から死亡までの戸籍をすべて取得
  4. 自分でやろうとして、挫折しやすい最初のポイントは、ここです。
    取得した戸籍を読みながら、死亡時から出生時までの戸籍をすべて収集していきます。
    戸籍を読み解くためには、相続に関する法律知識が必要になってきます。

    戸籍を収集していくと、最終的には5~8通程度の戸籍が必要となることが一般的です。必要な戸籍が1通のみである場合はほとんどありません。
    出生時は親の戸籍に入りますが、婚姻時には新たに戸籍が作成されますので、それだけでも必要な戸籍は2通となります。

    また、戸籍は平成6年に紙形式での保存から電子データでの保存が認められたため、各自治体において、順次戸籍データの電子化が進められました。
    よって、平成6年以前に生まれている方であれば、ほぼ確実に、電子データの「現在戸籍」と改正前の紙で作られた「改製原戸籍(古い戸籍)」が存在しています。

    更に、昭和32~40年の間にも戸籍様式の変更が行われていますので、被相続人の方がご高齢であればあるほど、存在する戸籍は増えていきます。

    出生時から死亡時までの一連の戸籍を取得するということは、上記のように改正された戸籍も含めて全て取得しなくてはいけないということです。

    どの戸籍が必要かを把握するだけでも知識がないと大変です。

    また、古い戸籍なると、手書きで書かれており、始めて見る人にとっては、まるで古文書のように読みにくいものとなっています。
    これを一つ一つ読み解いていくのは非常に困難な作業となります。

    更に、出生時に戦前の親の戸籍に入っていた場合、戦前の戸籍を取得することになります。戦前は家族法が現在とは異なり、「戸主制度」に基づいて戸籍が編成されていますので、新戸籍が作られるのは婚姻では無く家督相続が起こった時になります。
    従って、戦前の戸籍を読み解く為には旧家族法の知識が必要です。

  5. 本籍地が移転していた場合、全ての役所から戸籍謄本を取得
  6. 自分でやろうとして、挫折するポイントの2つ目がこれです。

    被相続人が、婚姻により、居住地を変えていた場合や、引越しをした際には、市区町村をまたいで本籍地が移動している場合も少なくありません。
    その場合には、出生まで遡ってそれぞれの役所から戸籍を取得する必要があります。

    また、最近では、市町村合併等により市区町村名が変更になっている場合もあり、どの役所に請求をすればいいのかが分かりにくくなっていることもあります。
    郵送で請求手続が行えるとはいえ、この作業を複数回繰り返すことは非常に手間がかかります。

  7. 法定相続人を確定する
  8. 実は、難しい、法定相続人の確定。
    ここで挫折する人もいます。
    そもそも、何のために戸籍がたくさん必要になるのかというと、目的は1つです。
    法定相続人を確定することです。
    法定相続人を全員確定するのに必要な戸籍を全部集めなければなりません。
    戸籍関係書類の収集において一番難しいのが、この相続人の判断
    です。
    どのような場合に誰が法定相続人となるのかという知識が必要となります。
    もし、法定相続人の抜け漏れがあった場合は、相続手続完了後でも、一からやり直さなければいけません。
    兄弟姉妹が相続人である場合、また、「代襲相続」や「数次相続」が発生している場合には、被相続人以外の複数の方の出生から死亡までの戸籍を収集する必要があります。
    こうなると、戸籍の量が膨大になります。
    全て集めると、厚さ数センチになります。

  9. 法定相続人全員の戸籍と必要書類の収集
  10. ここまでで、ようやく相続人が確定しました。
    さて、ここから、もうひと仕事あります。

    相続人が確定した段階で相続人全員の現在戸籍を取得する必要があるのです。
    また、被相続人や相続人の住所を確認するための書類として、被相続人と相続人の戸籍の附票や住民票を取得する必要があります。

    この附票というのが、わかりにくいですね。
    戸籍謄本からは住所の移動までは分かりませんので、それを補完するために「戸籍の附票」や「住民票(本籍地入り)」といった書類が必要になるのです。

  11. 相続関係説明図の作成
  12. 相続関係説明図の作成は、上記の戸籍収集に付随する業務です。
    相続関係説明図を作成することで、不動産の名義変更(相続登記)を行う際に戸籍の原本を還付してもらえるといったメリットがあります。
    相続関係説明図を作成する場合には、必ず記載しなくてはならない事項等が決められています。
    相続関係が複雑になった場合は特にですが、慣れていないとレイアウトだけでも、時間と労力がかかります。

当事務所にご依頼頂いた場合

最低限、被相続人の氏名と死亡時の住所をお知らせ頂くことで、必要となるすべての戸籍関係書類を収集させていただきます。
((尚、被相続人の最後の本籍や被相続人の子・親・兄弟姉妹に関する情報(氏名・住所・本籍等)についてもお知らせいただければ、より短期間でスムーズに取得できます。))

また、相続登記に使用することができる要件を満たした相続関係説明図を作成させていただきます。

相続関係説明図には、作成者として司法書士の氏名及び印鑑を押させていただきますので、よりご安心いただけるものになるかと思います。

(次回へ続く)

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当事務所は相続による各種手続に早くから積極的に取り組んでいます。開業15年を超えました。
仕事が忙しくて時間が取れない場合、高齢のため役所に何度も行くのが大変な場合、遠方の相続人がいて書類のやり取りが大変な場合など、司法書士に任せることでスムーズに解決できる可能性が高いです。
当てはまる方は、経験豊富な当事務所にご相談ください。

>>>遺産整理について、詳しく知りたい方は<<<

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