司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

その他

2月 16 2018

申告期限を過ぎると相続税が大幅に高くなる?(相続税⑧)

相続税の基礎控除を超えた財産がある場合、相続税の申告をする必要があります。
この申告には10か月という期限が設けられていて、期限内に申告しないと、非常に高い相続税を支払うことになる可能性がありますので注意が必要です。

なぜ申告期限を過ぎると高くなるかというと、相続税を安くするための特例が使えなくなってしまうからです。

相続税を安くするための特例はいくつかあります。
例えば、代表的な相続税の特例である小規模宅地の特例について考えてみましょう。小規模宅地の特例を適用した場合、宅地の相続税評価額(固定資産評価額ではありません)に対して、最大で80%の減額が出来るという非常にお得な制度です。

夫が亡くなって、妻と子ども2人が相続した場合を考えてみましょう。
相続財産は、自宅が1億・他の不動産が3億5,000万・預貯金が5,000万だったとします。
相続財産の合計は5億円ですね。

ここで自宅に対して小規模宅地の特例を使うと、1億の評価が約8,000万円減額されて2,000万円となります。
減額の効果はどうなるのでしょう。

小規模宅地の特例を使うと、相続税の計算のための相続財産は、自宅2,000万、他の不動産3億5,000万、預貯金が5,000万ですから、合計4億2,000万円です。
これで相続税を計算すると、だいたい5,000万円くらいの税額となります。
計算方法は省きますね。

一方、申告期限を過ぎて小規模宅地の特例を使えなかった場合、相続税の金額は約1億3,000万円ほどと一気に跳ね上がります。
その差、約8,000万円です。
これだけの違いがある訳ですから、相続税の申告期限は必ず守る必要があります。
くれぐれも注意しましょう。

申告期限10か月なら、余裕だと思っている人にも、意外な盲点があります。

それは、相続で揉めたときです。

遺産分割協議がうまくいかず、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てたりすると、あっという間に申告期限を過ぎてしまいます。
ましてや、調停でもうまくいかなかった場合は、裁判です。もはや決着がつくのは何年後になるかわかりません。

申告期限の延長も考えられますが、必ず認められるわけではないようです。
申告期限後の3年以内の分割見込書というのもあるのですが、相続人の負担が大きくなるのは間違いありません。

できれば、生前対策を行って、揉める要素を失くしておきたいところですね。

>>>遺言で相続の争いを回避<<<

>>>生命保険で相続の争いを回避<<<

>>>相続税の基礎控除について知りたい人はこちら<<<

1月 04 2018

離婚による財産分与を円滑に行うポイント(名義変更)

離婚には大変な労力が必要とされます。
その理由は、ただ別れたら終わりではなく、それまでに築いてきた財産を2人で分ける作業があるからです。
ときに、この作業でお互いを傷つけあい、疲れ果ててしまうことがあります。
離婚による財産分与を、少しでも円滑にすすめることはできないのでしょうか?

離婚による財産分与で不動産を譲り受けた場合、不動産登記(名義変更)をする必要があります。この際、注意すべき点が2つあります。

  • 後でごね出す?協議離婚の場合
  • 1つは、協議離婚の場合、不動産の登記に相手方の協力が得られるのかという問題です。

    協議離婚の場合の不動産登記(名義変更)は、相手方の実印、印鑑証明、権利証(登記済証・登記識別情報)が必要になります。譲り受ける人単独では出来ません。

    依頼を受けた司法書士が相手方と本人確認のために面談することも必要です。

    円満離婚なら問題ないかもしれませんが、相手方と険悪な雰囲気になっていたとしたら不動産登記(名義変更)に協力してもらうのは難しいかもしれません。

  • 円滑な登記が可能な手続きは?
  • 一方、裁判所の調停・審判・訴訟などによる離婚の場合は、裁判所の判断が出るまでは大変ですが、判断が出た後、不動産の所有権を財産分与により譲るという結果が得られれば、相手方の協力は不要になります。

    結果の書かれた裁判所の調停調書・審判書・判決正本などを添付していけば、譲り受ける人の単独で登記を行うことが可能です。
    もちろん司法書士による相手方の本人確認や面談も不要です。

    離婚をするのですから、相手の顔も見たくないし、何度も裁判所で話したりするのも冗談じゃないと思うかもしれません。
    その気持ちはわかります。

    しかし、大事なのは、財産をしっかりと分与してもらうことですよね。
    大きな目的を確実に達成するためには、裁判手続きを踏むという少し面倒なことは乗り越えたほうが、賢い選択と言えるのではないでしょうか。

  • 意外な盲点!贈与税
  • 2つめの注意点は贈与税です。
    通常は財産分与で不動産を譲り受けても贈与税はかかりません。
    財産分与とは今までの夫婦の財産を清算するのが目的だからです。

    しかし、夫婦の財産を清算するよりも多いと思われるような財産の場合、税務上の財産分与とは認めてもらえない可能性があります。その時は、超えた分に関しては贈与税の対象になるかもしれません。

    たとえば、財産が不動産3,000万円、預貯金1,000万円で合計4,000万円だとします。
    普通に考えれば2,000万円ずつということになります。

    しかし、夫の名義の不動産を妻に譲るとなると、妻3,000万円となり、1,000万円分は財産分与ではなく、贈与だと判断される可能性があるということです。

    すると、1,000万円分に贈与税がかかってきます。
    贈与税は、贈与を受けた方が支払いますので、この場合は妻が支払わなければならなくなります。
    (実際にこうなるというわけではありません。簡単に説明するための例えです)

    このように財産分与と言っても気を付けるポイントがあります。
    離婚をお考えの人は、一刻も早く別れたいと思いがちですが、財産のことを考えると、事前に専門家に相談するのが間違い無いと思います。

    >>>相続登記についてもう少し詳しく知りたい人はこちら<<<

    12月 20 2017

    再婚時の生命保険活用(相続税⑦)

    結婚した総人数に占める、再婚の割合は増えているようですね。
    夫、妻の両方が再婚の人もいますし、どちらか一方が再婚の場合もあります。
    両方をあわせると、結婚した総人数に占める、再婚の割合は25%を超えています。

    ということは、将来の相続に対する配慮も、より必要になってきますね。
    配偶者とは、離婚すれば縁が切れますが、子どもは離婚しようが再婚しようが、ずっと相続の第1順位なわけですから。

    では、生命保険の相続における具体的な活用事例の2つ目をご紹介しましょう。

    将来の法定相続人に、現在の妻の子どもと先妻の子どもがいるようなケースです。

    親にとってはどちらもかわいい子どもで、法的にも同じ権利があります。
    ですが、いざ相続が発生すると、もめてしまうことも十分起こりえます。
    「先妻の子には、財産を渡したくない」
    と、感情的になってしまって、遺産分割協議がどろ沼になってしまうことも……。

    解決するには、生命保険を活用する方法があります。

    具体的には、

  • 契約者:父親
  • 被保険者:父親
  • 受取人:先妻の子ども
  • とする生命保険を契約しておきます。

    保険金額は、最低でも遺留分相当分ですが、相続分相当分でも構わないです。
    ここは契約者が決めることです。
    契約の代わりに、先妻の子どもには前もって遺留分の権利を放棄してもらうと良いでしょう。保険金をもらった上で、更に遺留分の請求まで行ったら、それは先妻の子どもが優遇されすぎになりますから。

    こうしておけば、相続が発生したときも、スムーズに進みます。

    具体的な例を紹介しましょう。

      対策をしない場合

    遺産が6,000万円で、先妻の子1人、現在の妻の子2人だとします。
    相続が発生したら、現在の妻が2分の1で3,000万円、先妻の子が1,000万円、現在の子もそれぞれ1,000万円になります。

    一見何も問題ないように思えますが、財産の大部分が不動産だったりすると、現在の妻が家を手放さなくてはならなくなるなど、不都合も考えられます。

      対策をした場合

    先の生命保険の保険金が、1,000万円だったとします。
    遺言は、現在の妻と子に遺産を相続するという内容にしますと、相続が発生したら、現在の妻が2分の1で3,000万円、現在の妻の子が1,500万円ずつということになります。
    先妻の子の遺留分は1,000万円の2分の1で500万円。
    保険金は1,000万円入っているわけですから、遺留分請求まではしないでくださいねと、前もって契約しておけますね。

    このように相続財産に関しては遺言を残して、現在の妻の子どもに引き継がせるのです。現在の妻や子どもも、そして先妻の子も納得しやすいでしょうし、後の相続争いをかなりの程度防ぐことが出来ます。

    ただ1点、注意したいことがあります。
    あまり、若すぎる年齢で遺言と保険契約をしてしまうと、亡くなったときの財産と契約時の財産が違い過ぎる可能性があります。
    先妻の子のための保険契約時に、財産が1億円あったけれど、何かで失敗しほとんど財産が無くなってしまったりすることがあるかもしれません。
    しかし減った場合はあまり問題にはならないでしょう。

    問題になるのは、極端に財産が増えたときです。
    保険契約時の財産は6000万円だったけれど、亡くなったときには5億円の財産になっていたとしたらどうでしょう。
    保険金1000万円で先妻の子は納得するでしょうか?
    どのように抵抗するかはわかりませんが、争ってくる可能性はありますよね。
    ですから、ある程度の年齢になって、財産が概ね変化がないような状態になってから対策を立てるのが良いでしょう。

    遺留分の権利の放棄を前もってしてもらうことや、正確な遺言を残すときには、ぜひ一度、専門家にご相談ください。
    ここを間違えてしまうと、せっかくのプランが無駄になってしまう危険性があります。

    >>>節税保険にも興味がある人はこちらをどうぞ<<<

    12月 14 2017

    生命保険の活用で遺留分トラブルを回避(相続税⑥)

    相続における生命保険の活用方法は、何も生命保険控除だけではありません。1つ具体例を紹介しましょう。

    例えば、親が1人子ども2人の家族で、主な財産は自宅不動産だけだったとします。
    現金が1円もないことは、ほとんどありえませんが、財産に占める現金の割合が少ないことは、よくあります。
    子ども2人は、長男次男としますね。
    そして親は遺言で不動産を長男に相続させると決めていたとしたらどうなるでしょう。

    遺留分の発生とその後のトラブル

    この場合、相続が起こると次男に遺留分が発生します。
    次男が長男に対して遺留分減殺請求をすると、長男は遺留分相当の遺産を次男に渡さなくてはなりません。
    この例でいうと、普通に相続したとすると2分の1ずつですが、遺留分はその半分なので、4分の1ですね。

    預貯金があれば良いのですが、不動産以外のめぼしい財産がありません。そうすると、長男は遺言で与えられた不動産の一部を次男に渡すしか方法がなくなります。
    渡すといっても、家を切って渡すわけではありません。
    登記により、長男の持ち分が4分の3、次男の持ち分が4分の1となるのです。

    結果的に不動産は長男と次男の共有になり、売却したり抵当権を付けたりするときに必ず次男の同意が必要になります。意見が同じなら良いのですが、違っているとトラブルに発展します。こうなることを避けたいがために、親は遺言で長男に不動産を残したのですが、親の希望は通らなくなってしまうのです。

    生命保険による遺留分問題解決方法

    これを生命保険で解決することができるのです。

    親が生前に生命保険を契約して、契約者と被保険者を親、受取人を長男にしておきます。長男に支払われる保険金を次男の遺留分相当額にしておくのです。
    たとえば、家の価値が4000万円だとしたら、遺留分は4分の1ですから、1000万円です。
    そうすることで、長男は保険金によって次男に遺留分を支払うことが可能になり、めでたく遺言どおりに不動産を単独で所有することが出来るのです。

    遺留分とは割合を主張できるだけで、請求するものは選べません。遺留分相当の金銭が支払われたら、次男は黙って受け取るしかありません。(金銭を断って、不動産の一部をよこせ、とは言えないのです)

    このように生命保険は、相続の際に色々な方法で活用することが可能です。覚えておきましょう。

    >>>節税保険にも興味がある人はこちらをどうぞ<<<

    11月 24 2017

    節税保険(相続税⑤)

    節税保険って言葉を、聞いたことがありますか?
    取り上げられることが増えてきたので、一度くらいは聞いたことがあるかもしれませんね。保険会社としても、大きな市場としてとらえているため、次々に新しい保険が販売されています。

    文字通り、節税につながりますので、売れています。
    ただ、保険商品や加入方法を間違えると、節税が発揮できないだけでなく、税金が増える危険性もありますので、注意が必要です。

    では、上手に利用した具体例を1つ紹介しましょう。

    節税保険の加入例

    父が亡くなり、母と子ども2人(長男と長女と仮定しましょう)が法定相続人のケースで考えてみます。
    父の生前の財産は30,000万円(3億円)と仮定します。

    まずは一般的な方法で、法定相続人が3人なので「500万円×3」で受取金1500万円の生命保険を「契約者父、被保険者父、受取人長男と長女」で生前にかけておきます。これで1500万円の節税効果があります。
    ここまでは、ご存知の人も多いと思います。

    >>>知っておきたい生命保険と相続<<<

    ここからが、本格的な節税保険の加入手法です。
    まずは、贈与から開始します。
    毎年長男と長女に300万円ずつ、合計600万円を贈与します。
    300万円の贈与税は、110万円の年間控除額を差し引いた190万円の10%で19万円ですから、10年続けたら190万円、2人合わせて380万円です。

    そして贈与された300万円を、長男と長女がそれぞれ全額を生命保険契約して保険料として支払います。
    契約内容は「契約者長男と長女、被保険者父、受取人長男と長女」です。
    これを10年続けると、受取額は300万円の10年分、3000万円よりも多くなります(4000万円を下回るくらいでしょうか)。

    こうすると受取額の増加分は、贈与税の合計380万円を上回ります。ようするに得になる訳です。しかも、毎年600万円、父の財産が減っていき、10年で6000万円も父の財産が減りますので、相続税に関してもかなりの節税になります。
    実はこれが最も大きい効果と言えます。
    (ただし、保険料負担者と保険金受取人が同一なので、保険金受取の際は、一時所得として所得税がかかります。)

    元々3億円だった父の財産が、契約した1500万円の保険と、長男と長女への贈与を合わせると、なんと7500万円も減ります。相続税を計算する時点では、かなりの節税につながります。

    このように生命保険を上手に利用することによって、非常に高い節税効果が期待できます。
    実は、資産家や経営者の間では、昔からよく知られている方法です。
    今回は1つの例をご紹介しましたが、いくつものタイプがありますので、資産や目的に合わせて加入することが大切ですね。
    ただし、最近は節税保険について金融庁が問題視していますので、一部の保険には、メスが入るかもしれません。

    現在は、相続税など無関係だと思っていた人も、かかる可能性がずいぶん高くなりました。
    本気で節税を考えてみる必要が出てきたということですね。

    具体的な加入については、家族の事情によって個別にプランを練る必要があることと、契約の仕方が複雑になりますので、一般の方が独力で設計するのはお勧めできません。万が一、間違った契約をしてしまうと高額の税金が発生する可能性があるからです。
    ちなみに生命保険会社に直接相談すると、自社の保険を売りたがる傾向がありますので、注意が必要です。

    もし検討される場合は専門家のサポートを受けたほうが良いですね。

    相続税についてもう少し知りたい方はこちらをどうぞ

    11月 13 2017

    死後離縁

    死後離縁って、聞いたことありますか?
    恐らく、ほとんどの人が聞いたことがないと思います。
    死後離縁とは、養子縁組を行った養親または養子のうち、どちらか一方が亡くなったとき、生存している養子または養親が家庭裁判所の許可をもらって縁組を終了させることを言います。一般的には、亡くなった側の家族と縁を切りたい場合に使われることが多い制度です。

    この説明を聞いても、あまりピンとこないかもしれません。
    こういう状況になる人は、多くはありませんから。
    しかし、本人たちにとってみれば、とても重要な問題であることが多いです。
    一度は親族になったものを、くつがえすほどの思いとは、どういうものなのでしょうか。

    死後離縁は、実務上は圧倒的に養親が亡くなって養子の方から申し立てる場合が多いです。
    養子からみて養親の家族と折り合いが悪いというケースが良くあるパターンです。
    財産の問題、借金の問題、あるいは人間関係にいたるまで、離縁したくなる理由はさまざまです。

    死後離縁の手続は、まずは家庭裁判所に申立をして許可をもらいます。
    その後、市区町村役場に家裁の許可を証する書面を持参して、離縁の届出をすることによって成立します。家裁と役所の2段階になる訳です。

    書面を提出すれば、それで離縁が完了するのかというと、そう簡単ではないのです。
    死後離縁は必ず認められる訳ではありません。
    家裁に正当な理由があると認めてもらう必要があります。

    特に注意が必要なのが、そこそこの財産を養親から相続した場合や、養親が亡くなる前に一定の財産を贈与してもらった場合などです。

    相続や贈与で財産をもらった後の死後離縁は認められにくい傾向があります。養子縁組をする大きな理由の一つに「養親が亡くなった後の祭祀(注)を養子が引き継ぐ」というのがありますので、「財産をもらったのなら養親が死んだ後の祭祀を養子が行うべき」、と家裁が考えるからです。
    (注)祖先を祭ること

    死後離縁を考えているのならば、養親からなるべく財産はもらわないように注意しましょう。
    もし既にもらってしまったならば,家裁を納得させるだけの理由が必要になると覚えておきましょう。
    例えば、養親の家族から大きな嫌がらせを受けたとかいう理由はありそうですね。

    死後離縁の他の記事をご覧になりたい方は以下をクリック

    死後離縁②

    10月 23 2017

    名義預金には注意しよう (相続税④)

    相続税の税務調査が入った時に、税務署員から非常に指摘されることが多いと言われているのが名義預金です。

    名義預金とは、子どもや孫の名義で預金しているにもかかわらず、実質的には親が預金者であると判断されてしまう預金のことを言います。
    財産を何年もかけて、少しずつ子に移して、相続税の負担を減らそうという発想から、よく行われています。

    しかし、やり方を間違えると、名義は子や孫でも、実質は親の預金であるとして、亡くなった後に相続税の対象になってしまうことがあります。

    特に問題になり易いのが、子どもや孫名義の口座であるにもかかわらず、その通帳の印鑑を親が保管していて、印鑑のありかを子供や孫が知らない場合です。これは、親の相続財産とみなされる可能性が高い行為ですから注意が必要です。

    子が通帳を持っていたとしても、印鑑がなければ、実質何も動かせないですよね。
    そうすると、誰が管理しているのか?ということになり、印鑑を持っている親が管理している=親の財産となるわけです。

    また、そもそも子どもや孫が自分名義の口座を親が用意していたことを知らないような場合も、上記の例と同様に相続税の対象になる可能性が高いです。
    子どもや孫が税務署員に、「この口座知ってる?」、「いくらあるか知ってる?」と聞かれて、「知らない」と答えたりすると、アウトになる確率が高いようです。
    これは、簡単に理解できますよね。

    このようなことにならないためには、預金口座は通帳も印鑑も子どもや孫に管理させて、中身がどうなっているかも、しっかり把握させておく必要があるでしょう。

    また、贈与税の年間控除額の110万円以内で毎年決まった時期に預金を移動させていると、「相続税のがれ」とみなされて贈与と認めてもらえない可能性もあります。

    これを防ぐには、110万円よりも少し多い金額を贈与して、毎年確定申告で少額の贈与税を払い続ければ、税務署も文句を言いにくいようです。
    贈与税の申告とともに、公正証書で贈与契約を結んでおけば、なお良いと言えます。
    ただし、贈与税を支払っていても、名義預金と認定されてしまうときもあります。
    例えば、通帳や印鑑を親が保管しているようなときですね。

    いずれにせよ、これで100%名義預金にはならない、と言い切ることはなかなか難しいですが、最低限の注意を怠って、親の財産(相続財産)だと認定されてしまわないように気を付けたいものです。

    10月 19 2017

    相続税の生命保険控除 (相続税③)

    前にも触れましたが、生命保険は民法上は相続財産ではありません。
    従って、遺産分割協議の対象にはならず、受取人に全て渡りますので遺言と同じような効果が期待できます。

    しかし、税法上は相続税の対象として扱われますので、一定の控除額を超えた場合は相続税がかかります。
    ややこしいですね。

    知っておきたい生命保険と相続

    では一定の控除額とは、いくらかと言うと、
    500万円×法定相続人の数
    ということになっています。
    この計算のときの法定相続人の数には、相続放棄をした人も含まれるという取り扱いです。

    勘違いしやすいのが、保険金受取人1人あたりに500万円の控除があると思ってしまうことです。
    しかし、この考え方は間違いなのです。勘違いしたままだと損をする可能性がありますので注意しましょう。
    意外と多い間違いですよ。

    具体的な例で説明しましょう。
    例えば、父が亡くなって、母と子ども2人が法定相続人だとしましょう。
    父が契約者の生命保険が2000万円で、受取人が子ども2人だった場合、いくらの控除がうけられるのでしょうか。

    500万円×2人で1000万円の控除……ではありません。
    正解は、子ども2人の受取保険金額の合計が1500万円まで控除が受けられます。
    なぜなら、法定相続人は3人なので500万円×3で1500万円になり、この金額は生命保険を受け取らない相続人(この場合は母)がいても変わらないからです。

    このように相続には勘違いしやすい制度がいくつもあります。
    勘違いしたまま生前対策や相続手続をしてしまうと非常に損をしてしまう可能性があります。これを避けるためには、素人判断せずに専門家に相談に行かれることをお勧めします。

    10月 12 2017

    小規模宅地の特例で注意すること(相続税②)

    小規模宅地の特例は、宅地の相続税評価額が最大で80%ほど減額されるという、相続人にとっては非常に魅力的な制度です。

    ただし、効果が大きいだけに要件も厳しく、利用するには注意が必要です。
    例えば、相続人が、相続後にすぐに宅地を売却してしまった場合、小規模宅地の特例が使えなくなる可能性が高くなります。

    なぜなら、小規模宅地の特例の適用を受けるためには、原則として、その特例の対象となる宅地等を相続税の申告期限まで保有していないといけないからです。
    保有していないといけないことを、保有継続要件といいます。

    今後、住む予定が無い親の宅地を、子どもが相続してすぐに売ってしまうというのは、いかにもありそうな話です。
    しかし、上記の注意点を知らないと、後でかなりの金額の相続税を支払うことになりかねません。

    「相続税の申告期限まで」というのが法律の縛りなので、もし売却したい場合は、申告期限が過ぎるまで待つのが得策でしょう。
    ちなみに申告期限は、被相続人の死亡後10か月です。

    ※小規模宅地の特例には、他にも様々な要件がありますので自分で判断するのは危険です。安心して利用するには専門家に相談するのが一番だと思います。

    10月 06 2017

    不動産の相続税評価額 (相続税① )

    不動産には、時価、公示地価、固定資産税評価、相続税評価など、様々な価格が設けられています。その中でも最も分かりにくいのが相続税評価でしょう。

    固定資産評価は毎年支払う固定資産税の通知書に評価額が記載されていますよね。
    目にする機会も多く、これが相続税の評価額だと思っている人も多いです。

    実際、建物は相続税評価は固定資産評価を、そのまま使いますので同じ価格となります。分かりやすいですね。
    しかし、土地は非常にややこしい仕組みになっていて、正確な金額は税理士でも、すぐには出てきません。
    ただし概算ならば素人でも計算できます。

    まず都市部の土地の場合は、国税庁が発表している路線価というものがあります。
    この路線価というのは道路に価格が付いていて、その道路に面した土地の価格を計算する元になる金額です。

    具体的には、計算したい土地の路線価を調べて、その路線価に土地の面積をかけると相続税評価の概算が出ます。路線価は1平方メートル当たりの価格を表しているからです。

    国税庁 路線価図・評価倍率表

    何故、概算かというと、間口の狭い土地などの場合、概算の金額に修正が加えられることになっているからです。
    他にも土地の状態により修正になるケースがあるため、正確な金額はすぐには出てきません。
    修正では、概算より減額になるケースがほとんどなので、概算金額が上限(マックス)だと考えておけば、それほど間違えることは無いでしょう。

    一方、地方の土地の場合は、路線価が付いていません。
    ではどうするかと言うと、倍率方式という計算方法になります。
    固定資産評価額に国税庁の発表している地域ごとの倍率をかけることで、金額を出します。

    このように土地の相続税評価額は計算が複雑になっていて、正確な金額が分かりにくい構造になっていることを覚えておきましょう。

    あと余談ですが、良くアパートを建てると相続税対策になると言われます。
    これは、どうしてでしょうか。

    理由は、アパートが建っている土地は上記で計算した相続税評価額よりも更に減額になるからです。
    これは、アパートが建っている土地は換金性が低いと税務当局が考えているからだそうです。
    アパートが建っている土地を、土地だけ買う人は通常いませんよね。
    アパートごと買うということになりますので、すぐには売れないであろうという考え方なのです。
    高収益物件なら換金性が高いような気がしますが、何故かそういう考え方はしないようです。

    更地や現金で持っているよりも相続税評価が低くなるので、資産家の方は、利用していない土地にアパートを建てるのです。

    « Prev - Next »