司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

12月 3rd, 2015

12月 03 2015

持っている財産で決まる?後見制度支援信託の現状(成年後見②)

最近、全国の家庭裁判所で強力に推し進められているのが、「後見制度支援信託」と呼ばれる制度です。

この制度は、そんなに古い制度ではありません。
最近になって急に増加しました。

自分が関わった時に、どうして良いのか分からないという人も多いのが実情です。
そこで、詳しく説明しようと思います。

後見制度支援信託の概略

後見制度支援信託とはどういうものなのでしょう。

被後見人さんの、財産はどのくらいありますか?
一定額以上の財産をお持ちの場合、財産の一部を手元に残して、残りを信託銀行に預けるよう、家庭裁判所から指示が出ることがあります。
信託銀行からのお金の引き出しに関しては家庭裁判所の指示書が必要となります。

家庭裁判所が、被後見人さんのお金の管理に関して、より積極的に関わる制度ということです。

一定額とは、いくら位なのかと気になりますよね。
これは各家庭裁判所によって異なるようです。

ちなみに、名古屋家庭裁判所の場合は、1000~1200万円以上あると、この制度の対象となるケースが多いようです。

では手元に残る一部の財産とは、いくら位なのでしょう。
これも名古屋家裁の場合ですが、だいたい200万から300万の間というのが相場のようです。

後見制度支援信託の2つのパターン

①複数後見方式
既に親族後見人が付いていて、その上で更に、司法書士や弁護士などの専門職が二人目の後見人として選任されます。

この場合、権限分掌が行われることが多いです。
権限分掌とは、親族後見人が身上監護、専門職後見人が財産管理というように権限が分かれていることを言います。

そして、専門職後見人が信託手続を進めて、信託が終了した段階で後見人を辞任して、全ての権限を再び親族後見人一人に戻すというパターンです。

②リレー方式
バトンタッチするパターンです。
誰から誰にバトンタッチするのでしょうか。

専門職後見人から、後見人候補者(親族の場合が多い)にです。

新規に成年後見の申立がされた時に、先ほどの一定額以上の財産があることが確認できた場合、まずは専門職後見人一人を選任します。
そして信託手続を任せて、信託が終了した段階で専門職後見人は辞任して、後見人候補者
にバトンタッチするのです。

後見制度支援信託2つのパターンの現状

現状では、①のパターンが圧倒的に多いです。
しかし、①のパターンは徐々に少なくなっていくと思われます。
それは、②のパターンが同時に行われているからです。

そのうち、一定額以上の財産がある人は、ほとんどが新規申立の時点で信託が終了している状態になります。
名古屋家裁の予想では、①パターンのピークは2016から2017年ごろです。

では次回は、具体的な手続について、お話をしたいと思います。

>>>成年後見について、もっと詳しく知りたい方は<<<

12月 03 2015

兄弟姉妹の相続登記は、書類収集が大変!(相続登記⑥)

被相続人(亡くなった人)には、配偶者は既に亡くなり、子どももいませんでした。
そこで被相続人の兄弟姉妹が、相続をすることになりました。
手続はどうなるのでしょうか。
簡単にはいきません。
証明しなくてはならないことが、たくさんあるからです。

兄弟姉妹が相続人になる場合

日本の民法では、相続順は以下のようになっています。
まず配偶者は生きていれば必ず相続人になります。
それ以外には、

(1)第一順位  子供
(2)第二順位  直系尊属
(3)第三順位  兄弟姉妹

となっています。

上記の例の場合では、第三順位の兄弟姉妹が相続人となります。
そのためには第一順位と第二順位が全て生存していないことを証明しなくてはなりません。
主に戸籍で証明します。
他の相続人のときとは異なり、膨大な量の戸籍の収集が必要となります。
正直なところ、司法書士ですら、兄弟姉妹の相続の資料を集めるのは相当に大変な作業です。

では具体的に何が大変なのかを説明していきましょう。

①兄弟姉妹が何人いるかの証明

これを証明する為には、被相続人の父親と母親、双方の出生から死亡までの全ての戸籍の収集が必要となります。
なぜ必要なのでしょうか。

被相続人の父親または母親に、過去のどこかの時点で生まれた、被相続人の把握していない子が存在するかもしれないですよね。
だから、必要になるのです。

実際に、ありますよ。
「うちはそんなこと、一度も聞いたことがないから大丈夫」
調べてみると、母親が若い頃、誰かと結婚していて子どもを1人産んでいたということは、珍しくありません。

わたしは何度も、目にしています。

それに、そもそも父母の戸籍自体が、集めるのに時間がかかることもあります。
よくお引越しをされている方は注意が必要です。
本籍も動いていたりすると、特に面倒なことになりやすいですよ。

②直系尊属がいないことの証明

まずは、両親が既に亡くなっていることの証明が必要です。
しかし、これだけでは済みません。

祖父母が亡くなっていることの証明も必要になります。
祖父母は、父方、母方と双方いますので、合計4名分の証明が必要となります。

ちなみに、祖父母が生年月日から110歳を超えていることが明らかな場合は、生年月日の証明だけで良いということになっています。
これは、法務局が、110歳を超えていれば亡くなっていると推定してくれる取り扱いになっているからです。

裏を返せば、110歳を超えていないことが明らかな場合は、祖父母の上の世代の証明も必要となります。
(若くして亡くなられた場合の相続では、可能性がありますね)

③兄弟姉妹で既に亡くなられた方がいる場合は?

兄弟姉妹は被相続人と年齢が近い場合が多いですね。
そうすると、被相続人が亡くなられたときには、兄弟姉妹の中にも亡くなられた人がいるケースが多くなります。

その場合、親に代わって兄弟姉妹の子供に相続権が発生します。

これを民法では代襲相続と呼びます。

兄弟姉妹の相続の場合は、代襲相続が発生しているケースが珍しくありません。
そのときは、亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの全ての戸籍を収集する必要があります。
子どもが何人いるのかを調べる為です。

終わりに

いかがでしょうか。
ここまで読んできて、うんざりしてきた方も多いのではないでしょうか。
兄弟姉妹の相続登記は、一筋縄ではいきません。
あれも足りない、これも足りないと、何度もあとから取る必要が出てくることもよくあります。
法律に詳しい方でも途中であきらめしまうのも、うなづけますね。
多少のお金で解決するなら、司法書士に依頼するのも1つの方法です。
貴重な時間の節約にもなりますよ。

>>>相続登記について、詳しく知りたい方は<<<