2月
29
2016
成年後見人に専門職がついた場合、報酬が発生します。
専門職はプロの法律家ですから、法律上の手続きである以上、報酬が発生するのは普通のことです。
けれど、親族の立場からすると、気になる部分でしょう。
今回は、後見制度支援信託の報酬について、ご説明しましょう。
報酬額の決定と、具体的な報酬額
まず、重要な点ですが、報酬の額は家庭裁判所が決定します。
専門職には額についての決定権はありません。
従って、もし、報酬の額に不満があるならば、家庭裁判所に言うということになります。
(専門職に、どうか不満を言わないでくださいね。)
では、報酬の額は、どの程度なのでしょうか。
これは私の経験で申し上げるしかありません。
後見制度支援信託の場合、だいたい15万円から20万円の間ぐらいで決定されることが多いようです。
(名古屋家裁の場合です。他の裁判所は異なるかもしれません。)
司法書士の側から、この報酬額を見た場合、どのような感想があるかと言うと、正直、「安い」と感じている人が大半だと思います。
逆に親族は「そんなに高い金額を支払うのか」と感じる人も多いようです。
高い?安い? 専門職の後見支援信託報酬
司法書士や弁護士にとっては、後見支援信託手続きの報酬は、安いと感じている人が実は多いのです。なぜでしょう。
その理由は、いくつか挙げられます。
- ほとんどの事務処理を事務員に任せることが出来ない
例えば、金融機関への後見人届出などは、専門職本人が行くことが義務付けられています。信託契約も同様です。
つまり専門職の負担が他の仕事に比べて大きいのです。
銀行以外にも専門職が直接どこかへ出向くことも珍しくありません。
それだけ、専門職の時間を拘束していることになるのです。
- 責任が大きい
高額の財産を預かる訳ですから、司法書士も細心の注意を払う必要があります。
一般の仕事なら、財産が大きくなれば、報酬も高くなるものですが、支援信託の場合は、預かる財産の額に関係なく報酬額は、ほぼ一定です。
これが、「報酬が安い」と感じる理由の2つ目です。
- 通常の仕事以外の仕事をしても、ほとんど報酬額に反映されない
例えば、私の経験ですと、相続の手続をしたり、遺産分割後の財産の分配をしたり、確定申告をしたり、未払いの永代供養料の減額交渉をして、遠方の寺院まで支払いに行ったりしたことがありましたが、報酬額はほとんど変わりませんでした。
このような実情を知らない親族の方は、「専門職の報酬は高いんじゃないか」と考えたりしがちだと思います。
「一般的な他の手続きの報酬と比べたら決して高くない、むしろ安い」という事実は分かって頂けたらと思います。
(実際に、家庭裁判所に対して報酬額の引き上げを望む声は、司法書士の中にも結構あります)
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2月
26
2016
後見制度支援信託の場合、信託する金額が決定したら、信託銀行に振り込みます。
その際、家庭裁判所の指示書が必要になります。
(通常の民事信託では不要です。)
信託する金額はどのように決まるのか
まず、司法書士などの専門職が、本人予算収支表を精査して作成します。
そのうえで、適切だと考える信託金額を報告書に書いて家裁に提出します。
しばらくすると、報告書の金額を家裁が妥当と考えれば、指示書が発行されます。
これで、信託する金額が決定します。
しかし、家裁が金額の訂正を求めてくることもあります。
どのようなときに、家裁が訂正を求めてくるのでしょうか。
家裁の信託金額訂正事例
名古屋家裁の基準では、
「手元に200万から300万の現預金を残して、他は全て信託せよ」
となっています。
この基準に従えば、現預金額が1,100万円になった場合、信託金額は900万円ということになります。
手元に200万円残すと900万円ですよね。
従って、私は900万円の信託金で家裁に報告しました。
900万円ですと、三菱UFJ信託や三井住友信託といった手数料の安い信託銀行は選択できません。
しかし、家裁が基準を設けている以上、仕方がないと判断した訳です。
ところが、家裁は「信託金額を1000万円に変更して、手数料の安い信託銀行で再検討」と言ってきたのです。
もちろん、手数料は安いに越したことはありません。
ただ、親族後見人の手元に残る金額が100万円に減ってしまいます。
これでは、万が一のときの出費を考えると、親族後見人は少々不安になります。
家裁に電話して、「基準とは異なりますが、いいんですか」と聞きました。
すると、「手数料が安くなるなら構わない」という回答でした。
親族後見人の万が一の支出に備える金額をある程度確保しておくのか、それとも手数料を安くして、被成年後見人の財産を守るのかの選択です。
家裁は、被成年後見人の財産を守る立場ですから、当然こうなるわけです。
こういうところが、もう少し、融通が利いて欲しいですね。
あるいは、全ての信託銀行が、財産が1000万円以下でも、信託の手数料を無料にしてくれれば、問題ないのですが。
それぞれ、事情があるのでしょう。
申込みから信託手続き終了までの流れ
- 家裁から指示書が送付されたら、原本を添付して信託銀行に申し込みをします。
申し込みの際には、後見登記事項証明書の原本も必要になります。
そして、ここが肝心な部分ですが、信託の申込は
「家裁の指示書が交付されてから3週間以内にする必要がある」のです。
もし、3週間を超えてしまったら、再び家裁の指示書をもらうところから始めなければなりません。
このあたりが、役所っぽいですよね。
従って、申込の手続に手間取っている暇はありません。
信託銀行の中には、「家裁の指示書が交付された後でないと、申込書類の送付を受け付けない」というところもあります。
そうなると結構、タイトなスケジュールです。
できるだけ、早く正確に進めていく必要があります。
だからこそ、信託に際して専門職が選任されているのだろうと私は思っています。
- 信託の申込が済み、信託金の入金が済んだら、信託銀行から信託契約書が送られてきます。
(契約書が2通送られてきて、両方に署名・押印して送り返すと、1通返送されてきます)
これで信託手続は終了になります。
- 最後に、終了報告を家裁に提出します。
(同時に後見人辞任の申立・報酬付与の申立を行います)
では、次回は司法書士の報酬についての、お話をしましょう
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2月
15
2016
後見制度支援信託の制度で、ほとんどの被成年後見人の財産を信託銀行に預けました。
何年か経過して、家庭裁判所から、「追加で信託するように」との指示がありました。
一体、どういうことなのでしょう。
追加信託は、以下の二つの場合に発生します。
- 本人予算収支表が黒字の場合
収支が黒字の場合です。
収支が黒字ということは、財産が毎月、少しずつであっても、増えていくことになります。
そこで家裁は、黒字額が増えていって、手元財産が一定額を超えた場合は、追加信託を求めてきます。
そもそも、親族後見人の手元に残す財産は、一定額を超えないようにすることが、家庭裁判所の基本方針です。
通常手元に残る財産は、万が一の状況を考えての200~300万円程度になることが多いです。
この金額を大きく上回ってきたら、追加信託を求められる可能性があるでしょう。
一定額を超えたかどうかは、毎年1回の定期報告の時しか家裁は分かりませんので、追加信託を指示されるのは、その時になります。
-
生命保険の満期や不動産の売却などで一時的に財産が増えた場合
生命保険の満期は数百万という金額が増えることもありますよね。
不動産の売却なら、千万円単位になることも多いです。
両方とも手元財産の増加になりますので、家裁が追加信託を求めてきます。
特に不動産の売却などは家裁の許可が必要なので、すぐに追加信託を指示される可能性があります。
家裁としては、被成年後見人の財産が増えた場合、きちんと管理し保護しなければと考えているのでしょう。
次回は家裁の指示書について説明しましょう。
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2月
12
2016
定期給付金とは、信託銀行から定期的に指定口座に振り込まれる金銭のことです。
指定方法は様々な種類があり、金額はもちろん、毎月か、3か月おきか、半年おきか、などいろいろ設定できます。
手数料は無料の銀行が多いです。
では、定期給付金は、どうやって金額を決めるのでしょうか?
家庭裁判所から選任された専門職(司法書士・弁護士)が、金額と支払方法を決めることになります。
親族後見人の希望で自由に設定できる訳ではないのです。
専門職は定期給付金を決めるとき、何を基準にするのかというと、本人予算収支表になります。
>>本人収支表について、詳しく知りたい方はこちら<<<
後見制度支援信託を家裁から任された専門職は、本人予算収支表の点検を家裁から求められます。
簡単に言えば、親族後見人が作成した本人予算収支表に、漏れが無いかを確認する作業です。
このようなことを書くとすぐに、「家裁に疑われている」と思ってしまう人がいるのですが、この点検でかえって定期給付金の額が増える人も珍しくありません。
本人予算収支表の支出欄に書き漏れがあったりすると、反映する金額が増えるということです。
今までの私の経験では、減る人よりも増える人の方が多かったです。
家裁が求めているのは、「より正確な収支」であって、減らすことではありません。
もちろん、明らかに被後見人とは関係ない出費があれば別ですが。
さて、専門職が情報を集めた結果、より正確な本人予算収支表が作成されましたら、その収支表に基づいて定期給付金の額が決定されます。
たとえば、収支表が黒字ならば、定期給付金は0円になります。
収入で支出を賄えているので、新たに引き出す必要はないですよね、ということです。
もしも収支表が毎月3万円の赤字ならば、定期給付金は毎月3万円となる訳です。
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2月
12
2016
後見制度支援信託の仕組みに沿った信託商品を提供しているのは今のところ4行です。
三井住友信託銀行
みずほ信託銀行
三菱UFJ信託銀行
りそな銀行
それぞれの銀行によって、特徴があります。
4つの信託銀行、信託商品の比較
手数料が安いのは?
三菱UFJ信託銀行
三井住友信託銀行
維持費もかからず、定期給付金の手数料も無料です。
ただし、一時金を引き出すときや、解約時に手数料がかかる場合があります。
逆に、手数料が高いのは、りそな銀行です。
契約時、契約中の信託管理報酬、一時金の引き出し時に、手数料がかかります。
信託できる金額は?
1,000万円以上でないと信託できない
三井住友信託銀行
三菱UFJ信託銀行
1,000万円以下でも信託できる
みずほ信託銀行
りそな銀行
きれいに2行ずつに分かれました。
信託財産の制限は?
5年以内に信託財産が0円になる場合、信託ができない
(定期給付金を支払った場合)
三井住友信託銀行
三菱UFJ信託銀行
みずほ信託銀行
5年以内に信託財産が0円になる場合でも、信託ができる
りそな銀行
簡単に言うと、手数料が安い銀行は何かと制限があり、りそな銀行のように手数料が高い銀行は自由度が高い、ということになります。
後見制度支援信託における家庭裁判所の判断例
実際に家庭裁判所の判断を見てみると、1,000万円以下で、手数料の高い信託銀行を選択せざるを得ないような場合は、信託自体を不要とするような傾向があります。
私も、りそな銀行しか選べない状態の人の信託を任されたことがありますが、その旨を家裁に報告したら、「信託は不要」という決定が出ました。
(財産は1,200万円を超えていましたが、月々の施設の支払いが高額なため、定期給付金を支払った場合、5年以内に財産が0円になるケースでした。)
後見支援信託における、おすすめの信託銀行は?
私の経験から言うと、三菱UFJ信託銀行が、後見制度支援信託には最も適していると考えています。
手数料が比較的安いのも大きな理由ですが、それ以外にも、以下のようなメリットがあります。
-
全ての事務手続きが郵送で可能
信託銀行は一般的に支店の数が少なく、繁華街にしか無いのが普通です。
郊外に住まわれている方や、忙しい方などには、これは大きなメリットです。
申込の時はもちろん、引き継いだ後の各種変更手続きなども全て郵送で可能です。
- 質問に対する回答が早い
三菱UFJ信託銀行は東京に専門部署を設けて、一括対応をしています。
当然、専門部署には詳しい人材を配置していますので、質問した時の対応が早いです。
他の信託銀行が支店ごとの対応になっています。
支店に電話すると、「詳しいものから、後ほど折り返します」と言われることがほとんどで、時間がかかります。
場合によっては、回答が翌日になることもあります。
以上のことから、特別な理由が無い限り、後見制度支援信託には三菱UFJ信託銀行が、おすすめだと思います。
(今後、各銀行は、信託商品を見直すかもしれません。また新しいことがわかりましたら、お伝えしますね。)
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