司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2016年11月

11月 22 2016

父と母が亡くなった場合の名義変更(相続登記⑧)

父・母のうち、どちらかが先に亡くなった時点で相続登記をせずに放置していました。
その間にもう一方も亡くなった場合の相続登記は、どうなるのでしょうか。

本来であれば、放置していた名義変更をしてから、後から亡くなった方の名義変更をするというステップを踏むことになるでしょう。
このパターンだと2件の登記申請をすることになります。
もちろん、この方法でも正解です。

しかし、連れ子などがいなくて、両親とも共通の子供が相続人の場合は、登記申請が1件で済む可能性が高いです。
1件で済めば、登録免許税も安くなりますし、必要書類も少なくて済みます。
このことについて、きちんと把握している専門家なら、費用も安くしてくれることが期待できます。

>>>2次相続の相続登記は、遺産分割協議書の工夫が必要<<<

一方、同様のケースでも、不動産が父母共有名義になっている場合は話が違ってきます。

何故なら、父が亡くなった時と母が亡くなった時では、移転する(名義変更のことを不動産登記法では所有権移転と言います)不動産の持分が異なるからです。

具体的には、父が亡くなった日付で「父持分全部移転」母が亡くなった日付で「母持分全部移転」の2件の登記申請が必要となります。

このように一見、同じように見える名義変更でも、申請方法は全然違うということもありえますので注意が必要です。

より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/registration/

11月 21 2016

規約共用部のあるマンションの名義変更(相続登記⑦)

規約共用部とは?

規約共用部とは、どのようなものなのでしょう。
耳慣れない言葉で初めて聞いたと言う人も多いのではないでしょうか。

規約共用部とは、契約時のマンションの規約で、あらかじめ共用部として設定されている場所のことです。
具体的には、「管理室」「集会所」などが代表的です。
管理人が住み込みの場合は、「管理人住居」などが含まれている場合もあります。

これらの場所は、マンション所有者が持分割合で共有し、マンションの専有部分を売却した時は、規約共用部も一緒に移転するという取り決めになっているのが通常です。

マンションの名義変更の相談を受けた場合、規約共用部の存在を見落としている人も珍しくありません。
司法書士が指摘して初めて気が付かれる方もいます。

ただ、規約共用部に関しては、権利の登記の設定が最初からありませんので、実は名義変更は必要ありません。
専有部分と一緒に動くので不要だと考えられます。
これは覚えておくと良いと思います。

登録免許税の金額には注意!法務局から呼び出しも

また、規約共用部は名義変更は不要ですが、登録免許税の計算には含めなくてはなりません。
矛盾していますが、法務局では、そのような取り扱いになっているのです。

これは非常に間違えやすいので、注意するポイントです。
名義変更はしないので、申請書の不動産の表示には書かれないにもかかわらず、登録免許税の金額欄には規約共用部も含めた金額を書かなくてはいけません。
ややこしいですよね。
この金額を間違えると法務局から呼び出されることになります。

不動産登記(名義変更)には細かいルールがたくさんあります。わからないまま提出すると、法務局から呼び出され、二度手間になります。
不明な点があれば、専門家に任せるのも1つの方法ですね。

より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

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11月 15 2016

自筆証書遺言を開けてしまったら(遺言④)

自宅から亡くなった方の自筆証書遺言を発見した!
このような場合、誰でも一刻も早く中身を見たいと思うのが人情でしょう。
私も、法律家という仕事をしていなかったら、同様の場面で間違いなく開けようとしたと思います。

しかし、法律では、自筆証書遺言は開封前に家庭裁判所の検認を受けることを求めています。
でも、こんな疑問を持ったことはありませんか。
「そうは言っても、人間の自然の感情として開けてしまう人も結構いるんじゃないか。そんな時、どうするの」と。

開けたら無効?自筆証書遺言

結論から言うと、開けても、それだけで無効になる訳ではありません。
書かれている遺言の内容と形式が法律にのっとっているのなら、遺言自体は有効です。
ですから、「開けちゃった。しまった無効だ。もう意味が無い。」と考えて遺言を捨ててしまったりしないように注意しましょう。

この場合、開封された状態、あるいは裸の状態で、家裁に持って行って検認を受けることになります。
家裁は開封されていても検認はしてくれます。

では、開封されている遺言が有効だとすると、家裁の検認前に開封してしまうことに何も問題は無いのでしょうか。

相続人から異議が出されることも

実は全く問題が無い訳ではありません。
遺言自体は有効で、その遺言に従った相続手続を進めても構いませんが、法定相続人の中で遺言の内容に不満を持つ人がいる場合、その相続人から異議が出される可能性があります。
例えば、「検認前に開封されているなんておかしい」とか、「何か書き換えたんじゃないか」とかです。

不満を持った相続人が弁護士に相談に行ったりすると、場合によっては、「開封されているなんて、その遺言は中身が怪しい。無効の可能性がある」と訴訟を起こされる場合もあります。

結局1番良いのは公正証書遺言

訴訟を起こされた場合、筆跡鑑定などが行われて決着がつくことになりますが、例え勝っても大変なことに違いありません。

知らずに開けてしまった場合、あるいは故人が最初から封をしていなかった場合は仕方がありません。
それだけで無効になる訳ではないので、訴訟リスクも覚悟の上で、故人の意思を尊重すべきでしょう。

このブログを読んだ方は、自筆証書遺言を見つけた場合、少しでもリスクを減らす為に、開封前に家裁の検認を受けましょう。

あと、これから遺言を書こうと思っている方は、自筆証書遺言には上記のようなリスクが、どうしても残るので、出来る限り公正証書遺言にすることをおすすめします。

より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/testament/

11月 14 2016

子供がいない場合の遺言の検認は思ったよりも大変です(遺言③) 

自筆証書遺言と公正証書遺言で最も効果が異なる場面は何かというと、遺言の検認(注)があるか無いかでしょう。
自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認が必要で、公正証書遺言の場合は不要です。
自筆証書遺言は家裁の検認を受けないと、不動産や銀行預金などの名義変更をする時に使えません。
いろいろな手続きが、先に進まないのです。
(注)検認とは、家庭裁判所が遺言があるということと、その内容を確認するために行うこと。

膨大な必要戸籍

相続が発生すると様々な手続を同時に進めていかなくてはならないので、かなり忙しくなります。
そういう時に遺言の検認をするのは相当に手間がかかります。
家裁の検認手続なんて大したことないだろうと、甘く見てはいけません。
特に子供がいない相続の場合は、かなり大変な手続になります。
とにかく集めなければならない戸籍が膨大な数になるのです。

具体的には、

  1. 亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの全ての戸籍
  2. 被相続人の父の出生から死亡までの全ての戸籍
  3. 被相続人の母の出生から死亡までの全ての戸籍
  4. 被相続人の祖父母が110歳以内なら祖父母の現在の戸籍
  5. 被相続人の兄弟姉妹の現在の戸籍
  6. 被相続人の兄弟姉妹で亡くなっている方がいる場合は、亡くなっている兄弟姉妹の出生から死亡までの全ての戸籍
  7. 被相続人の兄弟姉妹で亡くなっている方がいる場合は、亡くなっている方の子供(おい・めい)の現在の戸籍

ざっと、これだけになります。
どうでしょう。集めるのが嫌になってきたのではないでしょうか。
正直、専門家でもすべて集めるのに、そこそこの時間がかかります。
1~7までの戸籍は一度に取ることができません。
順番に追って、取っていかなくてはならないからです。
順を追うごとに、戸籍が読みづらくなっていき、最後は手書きになります。
慣れていない方なら尚更大変でしょう。
途中で嫌になる人がいるのも、うなずけます。

公正証書遺言を残すべき理由

お子さんがいないということは、どちらかが亡くなったら、すべての財産を配偶者に、と思う方も多いでしょう。
ごく普通で、当然のことのようにも思えます。
ところが、いざ、そうしようと思うと、公正証書遺言を残しておかないと、とんでもなく手間がかかってしまうのです。

私たち司法書士が、「遺言を書くのなら公正証書にすべきです」とお勧めするのは、このような理由があるからです。
公正証書なら家裁の検認は不要なので、上記の書類は集める必要が無いのです。
相続で忙しい時に随分と助かるとは思いませんか。
特に子供がいない夫婦が遺言を書くなら、残された配偶者に大変な思いをさせない為にも、是非、公正証書を残しておきたいものですね。

より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/testament/

11月 11 2016

遺言があって本当に良かった (遺言②) 

先日、事務所に来られた高齢のご婦人が、ご主人の相続のことで相談に来られました。

ご主人の自筆証書遺言を持ってこられたのですが、これが有効か分からないので見てほしいという、ご相談でした。
遺言の内容は、妻に全ての財産を相続させるというものです。
拝見したところ遺言は有効なようでした。
自筆証書遺言は、気をつけないと、有効でない場合もあります。
実際に「あぁ、これはマズいなぁ」と思うこともあります。
せっかく、遺言を残したのにその通りにならなくて、非常に残念な気持ちなります。
ぜひ、一度、専門家の目を通してみてくださいね。

さて、お話を聞くと、お子さんはいません。
相続人は、老婦人と甥姪のようです。

甥姪の中には、それほど親しくはしていない人も含まれているようでした。
もし遺言が無かったら、典型的な争いになり易いパターンです。
ほとんどおつき合いが無かったら、甥も姪も、叔父の財産などいりませんよ、と言ってくれるのでしょうか。
……そうとは限らないのですね。
人にはそれぞれの事情があるのでしょう。と言うにとどめておきます。

こういう相談に出会うと「本当に遺言があって良かったなあ」と、つくづく思います。
このご婦人の場合、「ご主人に感謝」ですね。

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https://www.hashiho.com/inherit/testament/