9月
26
2016
家族信託(民事信託)についてしっかりとした知識を持った専門家はまだまだ少ないのが実情です。
司法書士、弁護士などの法律専門家の中でも取り扱うことができる事務所は、現時点では限られています。
しかし、家族信託が注目を浴びてきていることから、家族信託について知識があまりないにもかかわらず、家族信託について対応可能とする事務所も見られるのが残念でなりません。
家族信託の組成(組み立て)は、ただ単に「ひな形」に修正を加えて契約書を作成するというものではありません。
もちろんそのような信託契約書でも契約は有効で信託は開始しますが、その後何らかの支障が起きる可能性がとても高いでしょう。
基本は、オーダーメイドでなくてはならないものだからです。
服や靴でも、オーダーメイドで作ろうと思うと、必ず詳しく細部まで採寸し、場合によっては途中で試して、できあがった後も、アフターサービスまで含まれています。
そこまですれば、自分にぴったりのものが、出来ますよね。
家族信託も同じです。
特に費用が安い(数万円や10万円~)事務所などは、どこまでサポートされているのか、しっかり確かめる必要があります。
(オーダーメイドの服や靴は安いですか?)
逆に、しっかりと知識を持ち、個々の事案に沿って最適な信託の組成を1から完全オーダーメイドで行う専門家であれば、そのような安い金額で家族信託の依頼を受けることはできないはずです。
家族信託は、依頼人の人生設計にかかわる重要な案件です。
本当に詳しい専門家を慎重に見極めましょう。
9月
15
2016
原則として、信託された賃貸不動産の賃料収入は受益者のものとなります。
受益者の収入として受益者が申告をしなければなりません。
賃料収入は信託財産として受託者が管理し、受託者の手元から受益権として受益者に分配されます。
年間を通しての収益全額が、その年にすべて分配されるとは限りません。
例えば、賃貸の収益は月30万円だけれど、受益者には生活費として毎月20万円ずつ給付している場合などが考えられます。
上記のような場合でも、実際に受益者の手元に分配されているかどうかは関係なく、あくまでその賃貸不動産の収益全体についてを所得として申告する必要があります。
また、信託による賃貸不動産の受益者が、受益者自身の固有財産として別の賃貸不動産を所有し収益を得ている場合は注意が必要です。
税務上、信託財産から得る賃貸収入と受益者の固有財産としての賃貸収入とは別々の扱いとなり、損益通算はできません。
どちらかが赤字になるようなら、特に気をつけなければなりません。
支払う税金にも差がでてくると思います。
すべての不動産を信託するのか、一部の不動産だけ信託するのか、判断は難しいですね。
少しでも迷ったら、専門家を交えて、とことん話し合ってから決めましょう。
9月
14
2016
不動産を信託した場合、受託者が名義人となりますが、受託者は形式的な名義人であり、経済的価値を有しないため不動産取得税は課税されません。
また、受益者についても、経済的価値は有するものの当該不動産の所有権を取得したわけではなく受益権を取得しているだけですので、やはり信託設定時に不動産取得税は課税されません。
この辺りは贈与税とは考え方が異なっています。ややこしいですね。
これは自益信託、他益信託いずれの場合も結論は同じです。
結果、不動産を信託した場合でも信託設定時には不動産取得税は課税されないということになります。
一方、信託が終了した時には、原則として、帰属権利者等に不動産取得税が課税されることになります。
ただし例外として、信託の終了時に、信託設定時の委託者がそのまま帰属権利者になる場合、または信託設定時の委託者の相続人が帰属権利者になる場合には不動産取得税は課税されません。
税金というのは、本当に複雑ですので、信託をするうえでは、事前によく準備をしなければなりません。
よく考えないで、詳しくない専門家にアドバイスを受けてしまったために、後々大きなトラブルになる事例も、見かけるようになりました。
信託自体は良い制度なのに、非常に残念に思います。
信託をお考えのみなさんは、法律に詳しい専門家と税金に詳しい専門家の両方ときちんと打ち合わせをしましょう。
9月
13
2016
信託の設定の際の課税関係は、どうなっているのでしょうか。
具体的には、誰が課税されるのでしょうか。
課税されるのは、名目上の受託者ではありません。
実質的な権利者である受益者に財産が移転したとみなして贈与税などが課税されます。
一方、信託が終了したときは、どうなるのでしょうか。
信託が終了したときは、原則として信託終了時の受益者から帰属権利者に対して財産の移転があったものとみなして贈与税の対象となります。
ただし、信託終了時の受益者と帰属権利者が同一の場合には実質的な財産の移転がないため贈与税は課税されません。
また、信託が受益者の死亡によって終了する場合には、信託終了時の受益者から帰属権利者に財産が遺贈されたものとみなして、贈与税ではなく相続税の対象となります。
このように、原則以外にも、さまざまな状況が考えられるのです。
信託行為の前に、どうするのがベストなのかを専門家に相談しましょう。
>>>家族信託について、詳しく知りたい方は<<<
家族信託(民事信託)の相談・手続代行は愛知県名古屋市天白区の橋本司法書士事務所にお任せください。
経験豊富な司法書士が対応いたします。
初回無料相談を受け付けています。
9月
12
2016
信託された財産は、受託者が名義人として管理・運用・処分などを行います。
「指図権」とは、この信託財産の管理・運用・処分の方法について受託者に指図することができる権利です。
指図権を有する者を「指図権者」といいます。
指図権の内容及び、指図権者に誰を指定するかは、信託行為(信託契約等)によって定めることができます。
指図権者は、信託財産を受益者に給付する金額や方法を、受託者に対して指図したり、信託された株式の議決権の行使についても、指図権者が指図することができます。
この仕組みは、どういうときに役立つのでしょう。
例えば、親が自社株について子を受託者として信託した場合です。
基本は、受託者として子が議決権を行使することになります。
しかし、まだ会社の運営を子にすべて任せるのは不安な場合には、親を指図権者とすることで議決権の行使について受託者である子に指図することができるのです。
もし親が認知症になった場合には子が受託者として議決権を行使することができるので、会社の運営に空白が生じることも防げます。
また、指図権者のほか、受託者が信託財産についてある行為をすることについて、同意を必要とする者として「同意者」を定めることもできます。
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9月
09
2016
受益者指定権とは、受益者を指定したり、受益者を変更する権利のことです。
受益者指定権を有する者はそれを行使することにより、新しい受益者を指定したり、受益者を変更することができます。
例えば会社の事業承継の場面において以下のようなことが起きたとします。
後継者予定の長男に対して、株式を所有権のまま贈与して、後に事情が変わり、二男を後継者にすることになりました。
このとき、長男の協力がないと株式を取り戻したり、後継者となる二男に株式を保有させることが困難になってしまいます。
ここで、信託の登場です。
受益者指定券は親である委託者が持ちます。
株式を所有権として贈与するのではなく、信託して、その受益権を長男に渡します。
これがどのように便利に働くのでしょうか。
後に事情が変わった場合に、親の判断によって、受益権を再び親自身に戻したり、長男から二男に受益者を変更したりすることができるのです。
事情承継では、途中で何が起こるかわかりません。
信託を利用することによって、経営者が事業承継を考える際に、途中の事情変更によるリスクに対して保険をかけておくことが可能となります。
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9月
08
2016
一度、発効した信託を、途中で変更することは可能なのでしょうか。
結論から言うと可能です。
ただ、いろいろと条件があります。
大原則 ⇒ 委託者、受託者、受益者の合意により変更可
信託の目的に反しない場合の原則 ⇒ 委託者の合意不要
信託の目的に反しない場合は、さらに以下の場合に分かれます。
信託の目的に反しない場合で受益者の利益に適合する場合 ⇒ 受託者のみで変更可
信託の目的に反しない場合で受託者の利益を害さない場合 ⇒ 受益者のみで変更可
となっています。
何度見ても、ややこしいですね。
また、信託行為(信託契約等)で変更について定めを置いておけば、その定めに従って変更することが可能です。
では、簡単に変更できるように、定めを置いておけばよいのかというと、そうとも限りません。
信託の目的や個別の事情によって、変更を簡単にできるようにするのか、変更しにくくするのかを検討する必要があるでしょう。
変更1つとっても、信託契約前に個別に考える必要がありますので、専門家に相談することをおすすめします。
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9月
07
2016
信託は、「信託」という言葉もそうですが、委託者、受託者、受益者など、次々にわかりにくい言葉が出てきますね。
今回は、「残余財産」についてです。
「残余財産」は、割と想像しやすいと思います。
信託が終了したときの、という言葉に続きますから、だいたいわかりますね。
信託が終了したあとの、残った財産のことです。
この場合、信託が終了するのは、委託者が亡くなることも信託終了事由の1つですが、それ以外にもあります。
>>>信託の終了時期について、詳しく知りたい方は<<<
信託終了事由の発生により信託が終了した場合、残った財産はどこへ行くのでしょうか。
信託行為(信託契約等)で指定された「残余財産の受益者」または「残余財産が帰属する者(帰属権利者)」に財産が帰属することになります。
この仕組みを利用して遺言と同じような機能を持たせることが可能となります。
財産を渡したい人を帰属権利者として指定しておくのです。
また、信託行為(信託契約等)にて残余財産受益者及び帰属権利者が定められていない場合には、委託者に帰属することになります。
この時、委託者が死亡している場合には委託者の相続人に帰属します。
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9月
06
2016
お話の前に、おさらいから。
委託者、受託者、受益者が、何度もでてきますね。
混乱しないように確認しておきましょう。
委託者:財産を預ける人のこと。
受託者:財産を預かって管理する人のこと。
受益者:財産から生まれる利益を受け取る人のこと。
信託が終了するのは、どういうときでしょうか。
信託が終了するのは、信託行為で定めた事由や信託法の規定による終了事由が発生したときです。
また委託者と受益者の合意により任意に終了させることもできます。
信託契約の合意は、誰トクで考えよう
信託契約を設定する時は、委託者と受託者の間で契約は可能であり、受益者は契約に関与する必要はありませんでした。
しかし、終了させる時は、委託者と受益者の合意で可能となり、受託者の同意は不要です。
ほんとうに複雑でややこしいですね。
なぜ、受託者の同意はいらないのでしょう。
受益者は信託によって利益を受ける存在です。
利益を受けるときは、信託の設計の段階で同意が不要です。
利益を受けるのだから、まさか断るなんてことしませんよね、ということです。
では、信託終了のときはどうでしょう。
信託が終了したら、受益者は、利益が得られなくなりますよね。
だから合意が必要という構造になっている訳です。
一方受託者は、信託が終了すればどうなりますか?
管理責任から解放されるのです。
だから同意が不要と考えられるのですね。
自由度の高い信託で注意すること
信託は、自由度が高いです。
たとえば、信託行為(信託契約等)の中で、信託を終了させる権限を誰に与えるかを自由に規定することが可能です。
「受託者と委託者の合意により終了することができる。」とか
「受益者の意思表示により信託を終了することができる。」といった形で規定できます。
注意が必要なのは、遺言による信託 の場合です。
遺言による信託の効力が発生したときには、委託者(=遺言者)は亡くなっています。
さらに遺言による信託は、原則として委託者の地位は相続によって承継されないとされているため、委託者が存在しないこととなります。
そうすると、委託者と受益者の合意を得ることが出来なくなってしまいます。
これでは合意による終了が不可能となってしまいます。
誰の権限で終了できるかの規定を置いておかないと、後で困った事態になる可能性がありますので、遺言による信託を考えている場合は、この点を検討しておく必要があるでしょう。
信託を任意に終了させる規定を置くときは、よく検討する必要があります。
任意に信託を終了しやすくすると委託者の考えに反して信託を終了させられてしまう可能性もあります。
逆にあまりにも信託を任意に終了しにくくしてしまうと、当事者全員が信託を終了させたいと思っても終了させることが事実上できないという事態が発生しかねません。
信託の目的や事情などによって、終了を容易にできるようにするのか、あるいは終了しにくくするのかを検討する必要があります。
このように信託の設計というのは、簡単ではありません。
簡単ではないですが、その分、今まではできなかったようなことが、できるようにもなります。
それぞれの家族の事情によって個別に考えていく必要があるでしょう。
基本はオーダーメイドだと思ってください。
じっくり時間を取ってコンサルティングしてくれる事務所に依頼することをお勧めします。
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9月
05
2016
家族信託が終了するのは、2パターンあります。
信託行為(信託契約等)などで定めた事由の発生によって終了する場合
例えば、終了事由を
受益者の死亡まで
受益者が成年に達したとき
信託契約から10年
と決めた場合、それぞれの事由の発生によって信託は終了することになります。
なぜ、信託が必要なのかを考えれば、その信託が必要な期間も決まってくるということですね。
信託法の規定により信託が強制的に終了する場合
例えば以下のような規定があります。
信託の目的を達成したとき、または達成することができなくなったとき
受託者が受益権の全部を有する状態が1年間継続したとき
受託者が存在しない状態が1年間継続したとき
特別の事情により裁判所が信託の終了を命じたとき
などです。
さらに一歩進んで、信託が終了したあとはどうなるのかといいますと、残った財産をどうするのかを、信託契約等で決めておき、その通りに実行するのが普通です。
遺言と似たような機能を持たせることも可能ということですね。
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