司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2017年4月

4月 28 2017

相続放棄の期間と借金の行方(相続放棄⑦)

相続放棄の期間と借金の行方(相続放棄⑦)

相続放棄ができる期間は、被相続人が死亡したのを知ったときから3カ月以内、というのは結構有名になっていて、かなりの人がご存知だと思います。
しかし、詳しく知らないと意外な落とし穴があるのです。

基本は3か月以内

例えば亡くなった方が債務超過(借金の方が多い状態)で子どもと配偶者が相続人の場合、子どもと配偶者の両方が3カ月以内に相続放棄をしたとしましょう。
このとき、被相続人の両親がご存命の場合、借金は両親に相続されてしまいます。
これを防ぐためには両親も相続放棄をする必要があります。
では、両親の相続放棄は、いつまで可能なのでしょうか。

この問題は、勘違いされている人が多いので注意が必要です。
多くの人が、両親も、配偶者と子どもの相続放棄と同様の期間だと思っているようです。
現実には、両親の相続放棄は、子どもの相続放棄が家庭裁判所に認められてから3カ月以内にすればOKです。

理由は、子どもの相続放棄が認められるまでは両親は相続人ではないからです。
子どもの相続放棄の申述が家裁で受理されて初めて両親は相続人となりますので、そのときから3カ月となるのです。
むしろ、子どもの相続放棄と一緒に両親の手続をしても、家裁から拒否されます。
現時点で相続人でない人の相続放棄は出来ないからです。

もちろん、子どもがいない場合は両親は初めから相続人ですから、亡くなったのを知った時から3カ月です。
このとき、被相続人の兄弟姉妹がいる場合は、両親の相続放棄が認められてから3カ月以内に兄弟姉妹の相続放棄をする必要があります。

転々とする借金の行方

相続放棄の場合、第一順位(子)の相続放棄をすると第二順位(両親)に、第二順位の相続放棄をすると第三順位(兄弟姉妹)に、借金が移っていきますから、先に相続放棄をした人は、次の順位の相続人に連絡をすることが大切です。
これを怠ると後で大きなトラブルになりますので注意しましょう。

例えば、税金の滞納があった人が亡くなって、その後、子、両親と借金が移り、ついに兄弟にまで税金の請求がきた事例があります。
まさか自分のところまでは借金はこないだろうと、たかをくくっていると、実際に請求されてびっくりすることになるかもしれません。
心の片隅に、とどめておいてください。
請求が来ても相続放棄は可能ですが、油断して3か月を過ぎないようにだけは、注意しましょう。

より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/renounce/

4月 19 2017

回答書って何?(相続放棄⑥)

以前、相続放棄の照会書の話をしました。

>>>相続放棄の「照会書」って何?<<<
照会書と一緒に同封されているのが「回答書」です。
本当に本人の意思で相続放棄をしているのかを裁判所が確認するための書類です。

回答書には、いくつかの質問が書かれていますが、質問の数や内容が各裁判所によって異なっています。

実際に受けた依頼の中で、放棄をする相続人は名古屋の人ですが、被相続人が九州に居住していたケースがありました。

相続放棄は被相続人の居住する裁判所に提出する必要がありますので、この場合は、九州の裁判所に書類を出すことになります。

手続を進めて行くと照会書が届きました。同封されている回答書を見ると、随分と名古屋の裁判所とは違うという印象でした。

質問の数も多く、内容も細かいことを聞いていました。
名古屋の書式がシンプルだったので、意外な感じでした。
地方の裁判所の方が、審査が厳しい印象を受けたからです。

従って、ネットに上がっている回答書の質問を見て、同じものが届くと思っていると、それはどこか特定の裁判所のものである可能性が高いです。
後で違うものが届いて驚くことになるかもしれない、ということは知っておかれるとよいでしょう。

より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/renounce/

4月 10 2017

相続放棄の戸籍収集(相続放棄⑤)

相続放棄の戸籍収集は、簡単でしょうか。
それとも、大変なのでしょうか。

相続放棄の場合、単独で出来る手続なので、他の相続人が何人いるかは基本的に証明する必要がありません。
従って、不動産や預貯金の相続手続のようにすべての相続人を確定するだけの戸籍は必要とされません。
具体的には、被相続人の死亡の事実を証明する戸籍と、申述人(相続放棄をする人)が相続人の一人であることを証明すれば足ります。
ここまでなら、難しくなさそうですね。

第二・第三順位の相続放棄

ただし、第二順位(被相続人の両親・祖父母)、第三順位(被相続人の兄弟姉妹・甥姪)などの相続放棄の場合は、それほど簡単ではありません。

なぜなら、第二順位の場合は第一順位(子供・孫)の相続人がいない(あるいは相続放棄している)か、あるいは全員死亡していないと、そもそも相続人にはなりませんので、そのことを証明する必要があるからです。

少しややこしいですね。別の言い方をしましょう。
第一順位の人たちが確実にいない(あるいは相続放棄している)ことを証明しなければならない、ということです。
確実にいないことを証明する、ということはどういうことでしょうか。

  • 最初から存在しない(子どもがいない)
  • 子どもは存在したが、既に亡くなっている
  • 子どもは存在しているが、既に相続放棄している
  • この3パターンが考えられます。

    これには、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍、更に既に亡くなった子どもがいる場合は、孫(亡くなった子どもの子)がいないことを証明するために、亡くなった子どもの出生から死亡までの全ての戸籍が必要となります。
    注意が必要なのは、子どもが複数いるときです。
    たとえば、裁判所に、3人の子どもの相続放棄が出されていたとしても、子は3人かどうかは、調べないとわからないのです。実は4人目が存在するかもしれません。子の数を確定する必要があるということです。

    第三順位となると更に大変で、上記の戸籍に加えて第二順位の相続人がいないことも証明しなくてはなりません。

    第一順位でも要求された事例

    また、裁判所によっては、第一順位でも追加の戸籍を要求する場合もあります。

    私が依頼を受けた事例で、お住まいは名古屋市ですが、亡くなった親が長崎県の方がいらっしゃいました。
    相続放棄は、被相続人の住居のある裁判所に申述しますので、長崎の家庭裁判所に出すことになります。

    そこで、長崎の家裁に出したところ、「当裁判所では、第一順位の場合でも、親と子が一緒の戸籍に入っていたときから現在までの戸籍を要求しています」と言われました。

    この依頼人さんの場合、親も子も一緒の戸籍に入っていたのは長崎でも名古屋でもない別の県でした。
    それから別々の戸籍に分かれてしまったので、双方ともたどっていくのは結構大変でした。
    3カ月の期限がせまっていたので、専門家に依頼して良かったと言っていただけました。

    このように裁判所によっては標準的な書類だけでなく、追加の書類を要求してくる場合もありますので注意が必要です。

    より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

    https://www.hashiho.com/inherit/renounce/

    4月 05 2017

    「配偶者は相続税がかからない」って本当?(遺産整理⑤)

    配偶者は相続税がかからないと思われているケースが多いようですが、これは本当でしょうか。

    実際には配偶者にも相続税がかかる場合があります。
    しかし、相続税がかかるケースが非常に少ないのも事実です。
    相続を経験した配偶者は、「自分は相続税を払わなかった」という記憶が残りますので、
    その情報が広がり、このようなことが言われるようになったのではないでしょうか。

    配偶者控除

    ではなぜ、配偶者は相続税がかかるケースが少ないのでしょう。
    それは、相続税に関する「配偶者控除」と呼ばれる制度があるからです。
    配偶者控除は、かなり優遇された制度で、ほとんどの配偶者がこの制度に当てはまります。ですから現実に相続税を支払う配偶者は、とても少ないのです。

    配偶者が実際に受け取る遺産の金額が
    (1)1億6,000万
    (2)配偶者の法定相続分

    のうち、どちらか多い方の金額以内であれば、相続税はかかりません。
    これが、配偶者控除です。

    しかし、無条件で控除が受けられる訳ではありませんので注意して下さい。
    この控除を受けるには、相続税の申告が必要なのです(基礎控除の範囲内なら不要)。
    税金を支払わないために、税金の申告手続をするということになります。

    相続税の申告期限

    相続税の申告には期限があります。
    被相続人が死亡してから10か月以内にする必要があるのです。
    そして、上記の配偶者控除を受けるには、遺産分割協議が終了していて、配偶者の受ける相続分が確定していなければなりません。(注)
    遺産分割で揉めていて申告期限に間に合わないと控除が受けられなくなってしまいます。
    (注)遺言がある場合は別です。

    10か月を越えてしまいそうになったときは、申告書に、3年以内に遺産分割をするという「申告期限後3年以内の分割見込書」というものを提出して期限を延ばしてもらうという救済措置があります。
    しかし、このような救済措置は最後の手段と考えて、出来るだけ期限内に遺産分割協議を終わらせて申告をするのが良いでしょう。

    尚、全ての税理士が相続税に詳しい訳ではありません。
    司法書士事務所へ相続の相談に行くときは、相続税に詳しい税理士を紹介してもらえるかどうかを一度確認した方が良いでしょう。

    遺産整理について、より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

    https://www.hashiho.com/inherit/isanseiri/