5月
29
2017
休眠預金は毎年700億円もあるそうですよ(平成26年から28年の平均)。
ご存知でしたか?有効に活用して欲しいですね。
民間公益活動促進のための休眠預金等活用(内閣府)
ところで、休眠口座と呼ばれる、放置された銀行口座を持っている人は少なくないと思います。
中には残高が、ほぼ0円になっている口座もあるかもしれません。
この場合、相続手続は必要なのか、という問題がでてきます。
被相続人が亡くなった後に通帳の記帳をして、残高が0円であることが確実ならば、特に相続手続をする必要は無いように思えます。
手続にかかる手間と時間を考えたら、そのようにしたくなるのも無理はありません。
しかし、そうもいかない場合があるので注意が必要です。
例えば、被相続人の財産が相続税の基礎控除を超えてしまった場合です。
相続税の申告が必要になりますが、例え残高0円の口座であっても税務署に申告しなくてはいけません。
「残高が無い」ということを税務署に証明する必要があるからです。
従って、残高0円の残高証明書を銀行から取り寄せる必要があります。
もし、最新の通帳を紛失していたり、長い間通帳の記帳をしていなかったりすると、もっと大変です。
オマトメ記載をされて通帳に記録が残りませんので、この場合は、過去5年間の取引明細を銀行から取り寄せる必要も出てきます。
相続税の基礎控除を超えるかどうかによって、預金の相続手続が簡単になったり、面倒になったりすることがあるのです。
相続税についてもう少し知りたい方はこちらをどうぞ
5月
15
2017
2017年5月29日から全国の法務局において「法定相続情報証明制度」という新しい制度が始まります。
この制度の仕組みについてご説明します。
法定相続情報証明制度の概略
法定相続人を特定するための戸籍・除籍等と、法定相続人の一覧図を法務局に提出すると、法務局が公的な認証文を付けて法定相続人の情報を記録した証明書を発行してくれる、というものです。
提出した戸籍や除籍の原本は返してくれます。
この証明書は複数枚取ることができますので、そのメリットはあります。
今まで、不動産や預貯金の相続手続の際に、不動産屋と銀行それぞれに対して大量の戸籍や除籍を持参していました。
銀行は、複数の口座を持っている人も多いですよね。
やったことがある人はおわかりだと思いますが、相続手続きは、なかなか面倒です。
今回の法定相続人情報証明書の添付によって戸籍や除籍の代用にする、という活用の仕方が考えられています。
ただ、懸念もあります。
法務局と銀行の双方に手続をすることになるので、2度手間になる
最初から戸籍を銀行に持参した方が早い
などの意見が聞かれていて、実際にどれほど利用されるかは未知数です。
また、注意点もあります。
法定相続人情報証明書が証明してくれるのは、あくまで法定相続人の情報だけです。
一般的に行われる遺産分割後の相続情報は記載されません。
ということは、不動産や銀行で手続きをする際に、結局、法定相続人情報証明書だけでは、足りずに、遺産分割協議書や遺言書なども銀行に添付する必要があるわけです。
法務局が考えるほど便利ではないという意見もあるのは、これが理由です。
法定相続人情報証制度の使い方
では、まったく役に立たないのかと言うと、そういうわけではありません。
たとえば、以下のような使い方が考えられます。
- 預貯金の相続で最も大変な戸籍・除籍の収集の部分を専門家に依頼する
- 法務局に法定相続情報として登録してもらい、その後は、相続人本人が法務局から証明書を取得する
- 相続人が自分で相続手続を進めて行く
というようなケースでしょうか。これなら現実的な使い方だと思います。
今のところは、色々と不便な点も指摘されている法定相続情報証明制度ですが、今後、改善されていき、より便利になっていく可能性はあります。
今後の推移を見守りながら、また改善があったら報告したいと思います。
預貯金の相続についてもう少し詳しく知りたい方はこちら
5月
10
2017
配偶者の居住権の保護(住み慣れた家に住み続けるために)(相続法改正①)
で説明したとおり、被相続人が遺言で配偶者以外の者に、居住している不動産を遺贈した場合、現行の法律では、配偶者は無償で住み慣れた家に居住を続けることが出来ません。
この場合、配偶者は居住の権利を有していない為、不動産所有権を遺言で取得した者から明渡請求を受ける可能性があります。法律上、配偶者はこの明渡請求を拒否することは出来ません。
そこで改正が検討されているのは、被相続人の死亡から遺産分割の話し合いが成立するまでの間、配偶者の居住を保護する為の規定を設けることです。これを配偶者の短期居住権と呼んでいます。
しかし、それでは遺産分割の後はどうなるのか、と言う問題が残ります。それは、相続法改正①で取り上げた「長期居住権」という別の権利規定を設けることで解決しようと考えているのです。
長期居住権については別のブログで説明することにしましょう。
5月
08
2017
現在、相続法の大幅な改正が検討されています。
まだ確定ではありませんが、一応、このような改正が検討されているということについては知っておいても損はありません。
今回は、配偶者の居住権の保護の規定について紹介しましょう。
例えば以下のような事例を考えてみましょう。
夫が亡くなり、相続人は妻と夫の甥姪の4人です。
夫の姪とはほとんど会ったことも無く他人も同然です、夫の姪からは、家を売却したいから出て行ってほしい、と言われています。
妻は出て行かなければならないのでしょうか。

配偶者の一方が死亡した場合、残された配偶者は、それまで住んでいた家に住み続けたいと思うのが普通でしょう。
しかし、最近は子どものいないケースも少なくありません
高齢化も進んでいるため、配偶者の一方が亡くなったときには両親も亡くなっていることが多いでしょう。
そうなると、残された配偶者との共同相続人になるのは、亡くなった配偶者の兄弟姉妹か甥姪になります。
高齢で亡くなっている場合は、兄弟姉妹も同様に高齢で亡くなっているケースが多くなりますので、必然的に甥姪が共同相続人になるケースが増加しているのです。
自分の甥姪ではなく、配偶者の甥姪ですから、あまり面識がなく他人も同然というケースも多くなります。
このとき、相続財産に預貯金が多くあれば、あまり問題にはなりません。
めぼしい財産が居住している不動産だけ、あるいは不動産が占める割合が高いと問題が生じます。
あまり面識の無い配偶者の甥姪に対して何らかの財産を渡す必要があるのに、元手が無いということになるからです。
この場合、甥姪からは、不動産を売却して現金に換えて分配して欲しいという要求が来る可能性が大きくなります。
預貯金が多くあれば、預貯金を分割する方法もありますので、住み慣れた家を売却することを避けることができます。
(預貯金は減ってしまいますが……。)
また、事例のケースで夫が妻以外の者に不動産を遺贈していた場合、遺贈された者から妻に対して建物明渡請求をされる可能性があり、現状の法律では、この明渡請求を拒むのは難しいとされています。
これらの不都合を一発で解決する方法があります。
甥姪には遺留分が認められていませんので、「妻に不動産を相続させる」という遺言が残されていればよいのです。
しかし、残念ながら日本では遺言を残す習慣が確立しておらず、まだまだ少ないのが現状です。
最近は、徐々に増えてきていはいますけれど。
それで、このような場合の配偶者の保護規定として、現在、改正が検討されているのが、一定の期間、配偶者に住み慣れた家に住む権利(居住権)を認めよう、というものです。
検討されている居住権には、短期居住権と長期居住権の2種類があります。
これについては、別のブログでご紹介しましょう。
配偶者の短期居住権について