6月
27
2017
一口に任意後見と言っても実は様々な種類があります。その中でも、大きく分けると、
1 将来型、2 即効型、3 移行型の3種類になります。
それぞれについて、簡単にご説明します。
- 将来型
最もシンプルな任意後見で、将来、認知症になったときに契約の効果が表れるようにするものです。
それまでは何のフォローもありません。
締結するのは任意後見契約のみか、任意後見契約と死後事務委任契約の二つか、のどちらかになります。
- 即効型
現在、判断能力は失っていないけれど、運動能力に問題があるため外出や書類の記入などが困難な場合を想定しています。
すでに本人による手続が困難な状態が発生していますので、すぐにでも対策を取らなければなりません。
締結するのは財産管理等委任契約と任意後見契約、必要ならば死後事務委任契約も追加します。
- 将来型
最も多いパターンです。
現在は問題なく本人が暮らしていけている場合に、将来の運動能力の低下や判断能力の低下に備えるものです。
保険のようなものと考えると分かり易いかと思います。
締結するのは、見守契約・財産管理等委任契約・任意後見契約で、必要ならば死後事務委任契約も追加します。
このように任意後見は、本人のその時の状態に合わせて色々なパターンの契約類型があります。
オーダーメイドで作成していくというのは、まさにこういうことです。
ただし、もし本人が契約前に認知症になってしまったら、任意後見は利用できなくなってしまいます(軽い症状なら利用できる可能性はあります)。
もし興味があるなら、ご家族でご相談のうえ、必ず本人の意識がはっきりしているうちに結ぶようにしましょう。
知って得する任意後見のメリット
任意後見についてもう少し詳しく知りたい方はこちら
6月
23
2017
一昔前までは「任意後見」と言っても、「何、それ」と言われるくらい知名度が低かったのですが、最近ではだいぶ知られるようになってきました。
「任意後見について話が聞きたい」、という相談も少しずつ増えてきています。
法定後見よりも使い勝手の良い、任意後見のメリットについてご紹介します。
法定後見の不都合
高齢者が認知症になって判断能力を喪失した場合、それまで何の対策もしていなかった場合、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てるという選択以外ありません。
他に方法が無いのです。
では認知症になった後も放置しておけば良いのでは、という意見もあるかもしれませんが、現実には認知症になると、不都合が生じます。
銀行の引き出しがストップされる
入院する時に病院に申し込みが出来ない(病院から後見人を選任してくれ、と言われる)
施設入所のときの契約が出来ない場合がある
などです。
なぜこのような不都合が起こるのでしょうか。
世の中のあらゆる契約が、判断能力があることが前提になっているので、判断能力が無い状態では契約は結べないからです。
従って、しばらく認知症の状態のまま何もしていなくても、結局、最終的には成年後見の申立をすることになります。
ほとんどの成年後見の申立が、このような「仕方なく」で始まっています。
しかし、やっかいなことに、この家庭裁判所に申立てる成年後見制度(法定後見と呼びます)は親族の方には評判が良くありません。
家庭裁判所は全く見ず知らずの第三者を成年後見人として選任してくるケースが多いのです。
特に財産が多い人ほど、そうなる傾向が強いです。
1000万円を超えている場合は、そうなると思っていた方が良いでしょう。
その場合、当然のことですが、親族や本人と相性の良くない人が成年後見人になることも珍しくありません。
そのような人が、本人の通帳・キャッシュカード・不動産の権利証などを全て預かることになり、一切の支出は成年後見人に管理され、後見人の許可なしには何も支払うことは出来なくなります。
しかも、これが本人が亡くなるまで一生続くのです。
途中で、成年後見人が合わないから変更してくれ、と家裁に言っても、まず変更になることはありません。
その後見人が法的に不正なことでもしていない限り、ずっと就任し続けます。
任意後見のメリット
このような悲惨なケースを防止するために、任意後見があるのです。
任意後見のメリットはどういうものでしょうか。
本人が判断能力を失う前に(意識がはっきりしているうちに)、前もって自分の指定する人物を後見人に決めておくことが出来る
後見人に代理してもらう内容も前もって決めておくことが出来ます。
「こういうことが起こったら、このようにして欲しい」と希望を出しておくことが可能なのです。
人物や代理の内容について、かなり融通が利くため、家庭裁判所が選任する成年後見制度よりもトラブルが少ない
このようなメリットがあります。
ただし、認知症が悪化する前に契約を結んでおくのが必須条件です。
判断能力を失ってしまったら、もう任意後見は利用できません。
任意後見契約は公正証書で作成する必要があります。
内容も様々なバリエーションがありますので、オーダーメイドで進めていく契約です。
ご希望を聞きながら決めていくため、ある程度の時間はかかります。
意識がはっきりしているうちに、早めに動き出した方が良いでしょう。
任意後見についてもう少し詳しく知りたい方はこちらをどうぞ
6月
15
2017
亡くなった人(被相続人)が保険料を支払っていた死亡保険金の受取人が相続人だった場合、保険金は相続財産になるのでしょうか。
結論から言うと、「相続財産にはならないけれど相続税の計算の対象にはなる」というのが答えになります。
ややこしいですね。
初めて聞いたら分からないと思いますので、順を追って説明しましょう。
相続財産にはならない
まず、「相続財産にはならない」の部分ですが、死亡保険金は受取人の固有財産と考えられていて一般的には相続財産には含まれません。
従って、遺産分割の対象にもならない、ということになります。
後から相続人同士の遺産分割協議で分配を決めることは出来ない訳です。
ただし例外もあります。あまりにも相続財産に比べて死亡保険金が高額だった場合(例えば、相続財産全額よりも死亡保険金の方が高額だったような)には、最高裁の判決で、「特別受益と考えて、遺産分割の際に考慮する」ことを認めています。
ですから、残す財産と比較して高額すぎる生命保険をかけるのは、後々の相続人の争いの元になる可能性がありますので注意しましょう。
相続税の計算の対象になる
次に相続税の計算ですが、税法と民法では同じ現象に対して異なった考え方をすることが良くあります。
今回の生命保険の場合もそのケースで、死亡保険金は民法上は相続財産にはなりませんが、税法上は「みなし相続財産」と呼ばれ相続税の計算をするときには含める必要があります。
そんなの勝手にみなさないでくれ、と思ってしまいますが、税務当局も鬼では無いので、生命保険が相続人にとって緊急時をしのぐための大切なお金であることを考慮して、計算上かなり有利な保険金控除というものを認めています。
具体的には、「相続人の数×500万円」が控除できる金額です。
例えば相続人が妻と子供2人で合計3人だとします。
3人×500万円=1500円が控除できる金額、つまり税金がかからない金額です。
妻が1000万円の死亡保険金の受取人になっていた場合、1500万円を差し引くことが出来ます。
従って、妻が受け取る保険金には相続税はかからなくなります。
合計で1500万円なので、妻が受け取る金額が1500万円以上だったり、子どもが受け取る保険金が合計で500万円以上なら、税金の計算に含めることになりますね。
もし相続放棄をしたら控除は?
この控除制度を利用するには受取人が相続人である必要があります。
つまり、もし妻が相続放棄をしてしまったら、妻は相続人ではなくなってしまうので控除は使えません。
(相続放棄をしていても、保険金は受け取ることができます。)
しかし、受取人以外の相続人が相続放棄をするのは問題ありません。上記のケースで子供の一人が相続放棄をしても、控除額は500万円の3倍の1500万円のままです。計算するときの相続人の数には相続放棄をした相続人も含まれます。
今回ご説明したのは概略になります。
他にも細かいルールがありますので、実際に相続が発生したら、お近くの専門家に相談に行かれるのが安全です。
相続税についてもう少し詳しく知りたい方はこちらをどうぞ
6月
07
2017
家族が亡くなって、相続手続を考えたとき、誰もが思い浮かべるのが、
「ひょっとして遺言が書かれているんじゃないか」という疑問でしょう。
見つからないままになってしまったら、遺言を残した人としては、非常に悲しいでしょうね。
ただ、事前には内緒にしておきたいという思いがあったりすると、身内の誰かに「遺言はここにあるよ」と伝えておくのは、難しい場合もあるのでしょう。
自筆証書遺言を探す
もし書かれた遺言が自筆証書遺言ならば、どうやって探すのでしょうか。
- 相続人で徹底的に家探しをする
- 銀行に行って被相続人名義の貸金庫が無いかを調べてみる
この2つの方法になります。
貸金庫に遺言が入っていた、というのは良くあるケースです。
たまに、封筒に入っていなかったり、封がしてなかったりしてちょっと困ったことになる場合もありますが……。
公正証書遺言を探す
公正証書遺言ならば確実に探す方法があります。
それが遺言の検索です。
公正証書遺言が書かれた可能性が少しでもあるならば、必ず試してみるべき方法です。
公正証書かどうかがわからないけれど、遺言を残した可能性がありそうなら、調べてみてもいいかもしれません。

公正証書遺言は公証役場に保管してありますので、検索をすることが可能です。
検索だけならば料金は無料です。
見つかった後、謄本の請求をする時は有料です。
どこの公証役場で作ったのか分からない、という心配をされる方もいるでしょう。
でも心配はいりません。
どこの公証役場であっても、平成元年以降に作成された公正証書遺言は全国対応で探してくれます。
従って、検索を希望する方は近くの公証役場へ行けば良いのです。また、忙しい方は専門家に代理を頼むことも可能です。
公正証書遺言の意外な禁止事項
一つ注意して頂きたいのは、遺言者が生存中に将来の相続人(推定相続人と言います)が検索することは禁止されているということです。
従って、遺言の検索には、遺言者が死亡した事実を記載した戸籍の提出が義務付けられています。
例えば、親が生きている最中に、子供が遺言の有無を確認することは出来ない、ということです。
ちょっと、意外な感じがしますか?
検索くらいはいいじゃないかとも、思いますよね。
事前に遺言がわかっていた方が、心構えもできますし。
ともかく現状は、ダメということです。
例えば、本人が認知症になってしまって、成年後見人が事前に検索する、ということも、認められていません。
個人情報保護と関係があるのでしょうか。
遺言を残す立場から考えた場合、自筆証書遺言の場合は「相続人に見つけてもらえない」というリスクがありますが、公正証書遺言ならば検索によって調べる方法があるので見つけてもらえる可能性が大きい、ということは覚えておきましょう。
遺言についてもう少し知りたくなった方はこちらをどうぞ