9月
26
2017
例えば、亡くなった親が交通事故などの加害者だったとして、保険に未加入で、被害者から損害賠償を請求されていたとします。
もし損害賠償を相続したら、莫大な金額を支払うことになりますね。
相続人は損害賠償請求を相続放棄できるのでしょうか。
損害賠償請求の相続放棄
この問題は、あらゆる損害賠償に共通しますが、結論は「相続放棄できる」が正解です。
被害者の立場からすると理不尽なように思えるかもしれませんが、相続放棄の法律効果は、「最初から相続人では無かったものとみなす」です。
相続する義務は無いのも当然と言えます。
このような強力な効果があるからこそ、3カ月という期間制限が付いているとも考えられます。
相続人は損害賠償請求を相続放棄できますが、それでは被害者は困ってしまいますね。
どうすれば良いのかというと、保険に入っておけば良かったということになるのでしょう。
自己破産の悪意で起こした損害賠償
自己破産の場合は、悪意で起こした損害賠償については免責されないことになっています。
(免責とは支払義務を免れることです)。
自己破産は、あくまで本人が行うものですから、加害者本人が悪意で起こした損害を破産することが許されてしまったら、被害者はたまったものではありません。
それこそ気軽に損害を与える人が出てきてしまう可能性も否定できないので、モラルハザードを防ぐためにも、このような規定になっているのです。
自己破産が上記のような規定になっているので、それを知っている人が損害賠償請求の相続放棄も同様に免れることはできないのではないかと誤解していることがあります。
しかし、相続放棄は加害者本人がするものではありませんので、全く考え方が異なるのです。
同じような件でお悩みの方は、なるべく早く専門家に相談しましょう。
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9月
20
2017
相続放棄は、相続が発生したときに借金が財産よりも多いことが分かった場合に、借金を支払わなくて済む非常に有効な手段となります。
ただし、相続放棄が認められなくなるケースもあります。
相続放棄は、財産も借金も両方とも受け取らないことを前提にした制度です。
従って、財産を一部でも受け取ってしまうと、ルール違反とういことになり、相続放棄が認められなくなる可能性がありますので注意が必要です。
この場合に相続人がよく迷うのが、今回のタイトルにもなっている
未支給年金
介護保険の還付金
健康保険の還付金
です。果たして、これらは亡くなった方の財産と言えるのかどうか、というのがポイントになります。
財産ならば受け取れない、財産で無ければ受け取れる、という訳です。
結論から言うと、未支給年金は亡くなった方の財産ではなく、相続人固有の財産だと考えられています。
従って、未支給年金を受け取っても相続放棄は可能です。
一方、介護保険や国民健康保険の還付金の場合は亡くなった方の財産だと考えられています。
そうすると、これらの還付金は相続放棄をする場合は受け取ってはいけない、ということになります。
やっかいなことに還付をする役所は相続放棄に詳しい人が対応するとは限りませんので、「受け取っても構わない」と答えたりすることがあります。
安易に受け取ると、取り返しのつかないことになりかねませんので、覚えておきましょう。
実際の実務の上では、家庭裁判所に相続放棄の申述をする段階では、上記の事実が問題になることはまずありません。
そのまま審査が進んで、相続放棄申述受理通知書が送られてくるでしょう。
では何が問題なのでしょうか。
借金の請求をする債権者(業者)が調査をして、上記の事実が発覚した場合に、相続放棄の効果が否定される可能性があります。
つまり支払いを拒否できないかもしれないということです。
もちろん発覚しなければ大丈夫ということにはなりますが、大きなリスクであることは間違いないので、専門家としてはお勧めできません。
役所に言われるままに知らずに受け取ってから気付いたというなら、リスクを承知でやってみるということも否定はしませんが、もし受け取る前に気付いたのならば止めておきましょう。
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9月
14
2017
不動産を相続して、その不動産を相続人の誰も利用する予定が無い場合、毎年の固定資産税の支払いが無駄になります。
評価価格の高い土地ですと、固定資産税もかなりの額になります。
相続人が1人でない場合は、誰が支払うのかでもめてしまうことも……。
このような場合は、換価分割を検討してみましょう。
換価分割とは、不動産をすぐに売却して金銭に換えてから相続人に分配する遺産分割の方法です。
分配方法が、かなり自由になりますから、よく使われる方法です。
換価分割の際の不動産の登記
換価分割の場合、一旦、法定相続人の1人に仮に名義を移してから売却します。
法定相続人が3人いたら、普通に登記をすれば3人の共有ということになります。
換価分割で、それをしないのは、1人の所有になっているほうが売却がしやすいからです。
なぜ1人の所有のほうが売却しやすいのでしょうか。
3人の共有ですと、誰か1人が売却に反対すると、買い手は困ってしまいますよね。
反対している1人がいつ賛成してくれるのか、それともずっと反対のままなのか非常に不安定な状態になってしまいます。
もちろん、3人とも賛成してくれれば問題はありませんが、買い手としてはリスクが少ないほうが良いのです。
それで、一旦1人に仮に名義を移すわけです。
そして売却後、金銭を分配すると言う方法を取ります。
換価分割の際の遺産分割協議書
遺産分割協議書の記載の仕方で注意する点が2つあります。
1つは、一旦、1人に名義が移った後の分配なので、税務署から贈与だとみなされないように記載する必要があります。
贈与とみなされた場合、贈与税がかかるからです。
贈与税は相続税よりも、はるかに高い税率ですから、大変困ったことになります
2つ目は、「仮に○○に名義を移す」というような表現を使うと、法務局での相続登記の審査が通らない、ということです。
換価分割の遺産分割協議書は、上記の2つのポイントを両方とも押さえていないと、うまくいきません。
意外と思われるかもしれませんが、弁護士さんに依頼すると、1つ目のポイントだけ押さえられていて、2つ目が配慮されていないので相続登記には利用できないというケースが実は珍しくありません。
これは、弁護士さんは不動産登記の専門家ではないために起こってしまうことです。
やはり「餅は餅屋」ということでしょうか。
逆に弁護士さんにしかできない仕事もありますからね。
上記のような理由から、換価分割を検討されている場合は、司法書士に相談されるのが良いでしょう。スムーズに進む可能性が高いと思います。
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9月
06
2017
ピンとこない出生から死亡までの戸籍
相続登記の必要書類の中で最も取得が大変なのが「出生から死亡までの戸籍」です。
相続を経験されたことが無い方は、言葉を聞いてもピンとこないかもしれません。
相続以外で「出生から死亡までの戸籍」を取得することは、まず無いからです。
銀行でもよく聞かれるのが、「お客様に戸籍や除籍の取り寄せをお願いすると、間違っていることがよくある」とのことです。
被相続人が死亡する直前に入っていた戸籍と相続人の現在戸籍の2通だけ持ってこられる方が多いそうです。
専門家の立場からしても、「出生から死亡までの戸籍」について説明するのは非常に大変です。
大半の人にとっては初めての経験なので、「戸籍の取得」と聞くと、普段、目にしている現在戸籍のことだと思ってしまうからです。
さかのぼるのは大変な昔の戸籍
戦後は「結婚」「引越による転籍」などで新しい戸籍に移ります。
(近隣の引越の場合は移らないこともありますが。)
また、戸籍法の改正があった場合も、新しい戸籍が作成されます。
戸籍法の改正は戦後を通じて数回あります。
そして新しい戸籍が作成されるたびに、その人の出生から死亡までの戸籍の数は増えていきます。
複数の結婚や引越による転籍を経験している人は、戸籍の数もかなり多くなりますね。
また戦前は、今とは全く違う「家督相続」によって戸籍が作られていますので、見慣れていないと、どこに何が書いてあるのかも分からない様式になっています。
戦前は、筆頭者ではなく戸主を中心に戸籍が作られていて、結婚しても戸籍を離れません。
一つの戸籍に何組もの家族が記載されることになり、ページ数も多くなっています。
また、昔は今よりも養子に出されたり、養子を迎えたりすることも多く、関係性が複雑になっています。
しかも、戸籍が機械化されたのは最近のことなので、少し古い戸籍になると手書きで書かれています。
これがときに達筆すぎて大変に読みにくい場合があります。
専門家は見慣れていますから何とか読み解くことが出来ますが、初めてだと相当に苦労するでしょう。
甥姪(おいめい)の戸籍は特に注意
日本は高齢化が進んでいますから、戦前生まれの方も、まだ多く生存しています。それらの方が亡くなった時、戦前までの戸籍を全て取得しなくてはいけません。私の経験では、平均して5~6通は取得していることが多いです。
亡くなった方に子供がいなかった場合は、より取得する戸籍の数が多くなります。
現在は、医療制度が発達していますから、高齢で亡くなる方が多くなりましたね。
その場合、両親や兄弟姉妹も高齢ですから、既に亡くなっていることが多くなります。
そうすると、亡くなった人に子供がいない場合は甥姪が相続人になりますね。
実際そういうケースが増えています。当然、必要な戸籍も膨大になります。
甥姪の数が20名以上になることもありますよ。
そうすると戸籍の数も3ケタにまで増える可能性もあります。
相続人が甥姪の場合
被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍
父親の出生から死亡までの戸籍、母親の出生から死亡までの戸籍
先に亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍
が全て必要になります。
揃えるには1か月以上かかることもあるでしょう。
特に遠方の場合は、出向くことはなかなかできないでしょうから、郵送で請求することになります。
このように「出生から死亡までの戸籍」を取得するのは、かなり大変な作業になります。少なくとも、普段目にしている現在戸籍(一番新しい戸籍)を取得するのとは訳が違う、と言うことは覚えておきたいですね。
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9月
01
2017
土地は新たに出現するものではないので、通常、未登記というのはありえません。
しかし、車庫や倉庫などの場合、未登記になっている建物がたまにあります。
未登記を登記するタイミング
未登記になっている場合、もちろん登記をするのが法的には最も正しい方法ですが、そのまま放置してしまう人も結構いるのが現実です。
これが母屋の場合ですと、登記をしないと売れませんので、いずれ登記をすることになるでしょう。
登記が無いということは、自分の名義になったことを公的に証明できないということになるので、そんな物件を買う人はいないからです。
登記をするタイミングとしては、売却を考えたとき、あるいは銀行からお金を借りて抵当権を付けたりするときなどになります。
表示登記
実際の未登記の物件の登記はどのように行われるのでしょうか。
登記には2種類あって、表示登記と権利登記に分かれます。
未登記の場合、まずは表示登記をしなくてはいけません。
表示登記とは物件の物理的な状態を登記簿に記載する仕事です。
表示登記を取り扱っているのは土地家屋調査士という資格を持った人です。
建物や土地の測量をして図面を作成しなくてはいけませんので、どちらかと言うと技術系の仕事です。
土地家屋調査士さんはスーツよりも屋外で作業服でいる時間の方が長いくらいです。
室内だけで処理できる仕事ではありませんので、一般的に費用が高額になる傾向があります。
権利の登記
表示登記が終わってから権利の登記をすることになります。
権利の登記は登記簿では甲区、乙区と呼ばれているもので、甲区は所有者、乙区は抵当権者などを記載します。
権利の登記は司法書士が取り扱います。
このように未登記の物件に登記をする場合は、表示の登記と権利の登記をする必要がありますので、時間も費用も結構かかります。
これが、車庫や倉庫のために、そこまでしたくないという人が出てきてしまう理由となっているのです。
未登記状態で相続が起きたら?
このような未登記の車庫や倉庫に相続が起こったら、どうなるのでしょうか。
相続の後、売却するのでなければ、そのままにするケースが多いでしょう。
では固定資産税はどうなるのでしょう。
通常、評価証明書には未登記の建物も記載されています。
この場合、母屋と一体になるように役所が処理している物件は、母屋の相続登記が行われれば、自動的に車庫や倉庫の名義も変わるようになっています。
(あくまで固定資産税の名義の話です。)
一方、役所で一体となる処理がされていない物件は、未登記物件の名義変更の手続を申請する必要があります。
一体となる処理がされているかどうかは、役所に聞く必要があるということですね。
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