司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2017年10月

10月 23 2017

名義預金には注意しよう (相続税④)

相続税の税務調査が入った時に、税務署員から非常に指摘されることが多いと言われているのが名義預金です。

名義預金とは、子どもや孫の名義で預金しているにもかかわらず、実質的には親が預金者であると判断されてしまう預金のことを言います。
財産を何年もかけて、少しずつ子に移して、相続税の負担を減らそうという発想から、よく行われています。

しかし、やり方を間違えると、名義は子や孫でも、実質は親の預金であるとして、亡くなった後に相続税の対象になってしまうことがあります。

特に問題になり易いのが、子どもや孫名義の口座であるにもかかわらず、その通帳の印鑑を親が保管していて、印鑑のありかを子供や孫が知らない場合です。これは、親の相続財産とみなされる可能性が高い行為ですから注意が必要です。

子が通帳を持っていたとしても、印鑑がなければ、実質何も動かせないですよね。
そうすると、誰が管理しているのか?ということになり、印鑑を持っている親が管理している=親の財産となるわけです。

また、そもそも子どもや孫が自分名義の口座を親が用意していたことを知らないような場合も、上記の例と同様に相続税の対象になる可能性が高いです。
子どもや孫が税務署員に、「この口座知ってる?」、「いくらあるか知ってる?」と聞かれて、「知らない」と答えたりすると、アウトになる確率が高いようです。
これは、簡単に理解できますよね。

このようなことにならないためには、預金口座は通帳も印鑑も子どもや孫に管理させて、中身がどうなっているかも、しっかり把握させておく必要があるでしょう。

また、贈与税の年間控除額の110万円以内で毎年決まった時期に預金を移動させていると、「相続税のがれ」とみなされて贈与と認めてもらえない可能性もあります。

これを防ぐには、110万円よりも少し多い金額を贈与して、毎年確定申告で少額の贈与税を払い続ければ、税務署も文句を言いにくいようです。
贈与税の申告とともに、公正証書で贈与契約を結んでおけば、なお良いと言えます。
ただし、贈与税を支払っていても、名義預金と認定されてしまうときもあります。
例えば、通帳や印鑑を親が保管しているようなときですね。

いずれにせよ、これで100%名義預金にはならない、と言い切ることはなかなか難しいですが、最低限の注意を怠って、親の財産(相続財産)だと認定されてしまわないように気を付けたいものです。

10月 19 2017

相続税の生命保険控除 (相続税③)

前にも触れましたが、生命保険は民法上は相続財産ではありません。
従って、遺産分割協議の対象にはならず、受取人に全て渡りますので遺言と同じような効果が期待できます。

しかし、税法上は相続税の対象として扱われますので、一定の控除額を超えた場合は相続税がかかります。
ややこしいですね。

知っておきたい生命保険と相続

では一定の控除額とは、いくらかと言うと、
500万円×法定相続人の数
ということになっています。
この計算のときの法定相続人の数には、相続放棄をした人も含まれるという取り扱いです。

勘違いしやすいのが、保険金受取人1人あたりに500万円の控除があると思ってしまうことです。
しかし、この考え方は間違いなのです。勘違いしたままだと損をする可能性がありますので注意しましょう。
意外と多い間違いですよ。

具体的な例で説明しましょう。
例えば、父が亡くなって、母と子ども2人が法定相続人だとしましょう。
父が契約者の生命保険が2000万円で、受取人が子ども2人だった場合、いくらの控除がうけられるのでしょうか。

500万円×2人で1000万円の控除……ではありません。
正解は、子ども2人の受取保険金額の合計が1500万円まで控除が受けられます。
なぜなら、法定相続人は3人なので500万円×3で1500万円になり、この金額は生命保険を受け取らない相続人(この場合は母)がいても変わらないからです。

このように相続には勘違いしやすい制度がいくつもあります。
勘違いしたまま生前対策や相続手続をしてしまうと非常に損をしてしまう可能性があります。これを避けるためには、素人判断せずに専門家に相談に行かれることをお勧めします。

10月 12 2017

小規模宅地の特例で注意すること(相続税②)

小規模宅地の特例は、宅地の相続税評価額が最大で80%ほど減額されるという、相続人にとっては非常に魅力的な制度です。

ただし、効果が大きいだけに要件も厳しく、利用するには注意が必要です。
例えば、相続人が、相続後にすぐに宅地を売却してしまった場合、小規模宅地の特例が使えなくなる可能性が高くなります。

なぜなら、小規模宅地の特例の適用を受けるためには、原則として、その特例の対象となる宅地等を相続税の申告期限まで保有していないといけないからです。
保有していないといけないことを、保有継続要件といいます。

今後、住む予定が無い親の宅地を、子どもが相続してすぐに売ってしまうというのは、いかにもありそうな話です。
しかし、上記の注意点を知らないと、後でかなりの金額の相続税を支払うことになりかねません。

「相続税の申告期限まで」というのが法律の縛りなので、もし売却したい場合は、申告期限が過ぎるまで待つのが得策でしょう。
ちなみに申告期限は、被相続人の死亡後10か月です。

※小規模宅地の特例には、他にも様々な要件がありますので自分で判断するのは危険です。安心して利用するには専門家に相談するのが一番だと思います。

10月 06 2017

不動産の相続税評価額 (相続税① )

不動産には、時価、公示地価、固定資産税評価、相続税評価など、様々な価格が設けられています。その中でも最も分かりにくいのが相続税評価でしょう。

固定資産評価は毎年支払う固定資産税の通知書に評価額が記載されていますよね。
目にする機会も多く、これが相続税の評価額だと思っている人も多いです。

実際、建物は相続税評価は固定資産評価を、そのまま使いますので同じ価格となります。分かりやすいですね。
しかし、土地は非常にややこしい仕組みになっていて、正確な金額は税理士でも、すぐには出てきません。
ただし概算ならば素人でも計算できます。

まず都市部の土地の場合は、国税庁が発表している路線価というものがあります。
この路線価というのは道路に価格が付いていて、その道路に面した土地の価格を計算する元になる金額です。

具体的には、計算したい土地の路線価を調べて、その路線価に土地の面積をかけると相続税評価の概算が出ます。路線価は1平方メートル当たりの価格を表しているからです。

国税庁 路線価図・評価倍率表

何故、概算かというと、間口の狭い土地などの場合、概算の金額に修正が加えられることになっているからです。
他にも土地の状態により修正になるケースがあるため、正確な金額はすぐには出てきません。
修正では、概算より減額になるケースがほとんどなので、概算金額が上限(マックス)だと考えておけば、それほど間違えることは無いでしょう。

一方、地方の土地の場合は、路線価が付いていません。
ではどうするかと言うと、倍率方式という計算方法になります。
固定資産評価額に国税庁の発表している地域ごとの倍率をかけることで、金額を出します。

このように土地の相続税評価額は計算が複雑になっていて、正確な金額が分かりにくい構造になっていることを覚えておきましょう。

あと余談ですが、良くアパートを建てると相続税対策になると言われます。
これは、どうしてでしょうか。

理由は、アパートが建っている土地は上記で計算した相続税評価額よりも更に減額になるからです。
これは、アパートが建っている土地は換金性が低いと税務当局が考えているからだそうです。
アパートが建っている土地を、土地だけ買う人は通常いませんよね。
アパートごと買うということになりますので、すぐには売れないであろうという考え方なのです。
高収益物件なら換金性が高いような気がしますが、何故かそういう考え方はしないようです。

更地や現金で持っているよりも相続税評価が低くなるので、資産家の方は、利用していない土地にアパートを建てるのです。