8月
24
2017
任意後見を決断した時、任意後見契約だけを結ぶ人は、実はあまり多くはありません。
もちろん任意後見契約のみを選択することも可能ですが、任意後見に付随する様々な契約の種類があるので、そのいくつかを同時に契約するのが一般的です。
付随する契約の種類には、
見守契約
財産管理委任契約
死後事務委任契約
などがあります。
任意後見は必ず公正証書で契約します。
作成するときは公証役場へ行きますから、ついでに、と言っては何ですが、公正証書遺言も一緒に作ろうかと考える人も多いです。
見守契約
見守契約とは、定期的に(月に1回程度)司法書士(または委任された人)が依頼人に電話等で連絡を入れて健康状態などを確認するという契約です。
半年に1回程度は直接、依頼人の自宅に伺って様子を見るという条項も付けることが多いです。
目的は、財産管理や任意後見などを開始する必要があるかどうかを判断することです。
定期的に連絡を取ることで、認知症を発症していないかを確認したり、詐欺被害に遭っていないかなども確認することができますね。
財産管理委任契約
財産管理委任契約とは、頭ははっきりしていて判断能力は充分なのですが、運動能力の衰えのために各種の事務手続きが困難になった場合、信頼できる人間に財産の管理を任せると言う契約です。
任意後見は判断能力の衰えにしか対応していないので、この契約も同時に結ぶことが多いです。
例えば、意識ははっきりしているけれど、何らかの事情で寝たきりになってしまったときに、依頼人の財産を守りながら、依頼人のために財産を管理することになります。
財産管理委任契約が発効した後に認知症等になった場合は、途中から任意後見契約に切り替わることになります。
死後事務委任契約
死後事務委任契約とは、死後の事務処理を信頼できる人に委任する契約です。
未払いになっている各種費用の支払いや官公庁への届出、葬儀・埋葬・永代供養などの手続です。
近くに親族がいない方、あるいは、いても何らかの事情で頼りたくない方が契約する傾向があります。
最近では、両親が他界し、本人も60代を過ぎた「お一人様」にも需要があります。
財産管理委任契約や任意後見契約が、依頼人の死亡により終了する契約なので、死後の事務処理に対応していないために、死後事務委任契約でそれをカバーします。
以上で紹介したような様々な種類の契約を組み合わせることによって、任意後見制度を依頼人のニーズにより近づけることが可能になります。
8月
17
2017
公正証書遺言を作成すると原本と正本と謄本の3種類の書類が出来上がります。原本は公証人が保管し、正本と謄本は遺言者に渡されます。ではこの3種類の書類は、どのような違いがあるのでしょうか。
- 公正証書遺言の原本
いわゆるオリジナルの書類のことです。
作成した時の遺言者と証人の生の印鑑が押されています。
署名も直筆で書かれています。
そして、ここが肝心ですが、原本は公証人が保管しますので、紛失する可能性が極めて低いです。
- 公正証書遺言の正本
正本は原本の写しで、この意味では謄本と似ていますが、謄本よりも法的効力が強く、特別な写しです。
法的には原本と全く同じ効力があるとされていますので、原本と生き写しの書類と考えると良いでしょう。
末尾に公証人が「これは正本である」と記載してあるものです。
相続手続は、ほとんどが謄本でも可能ですが、中には正本が要求される場合もあります。

- 公正証書遺言の謄本
謄本は、戸籍謄本が分かり易い例だと思いますが、原本の写しで、公証人に請求すれば何回でも発行してもらえます。
法的には、原本と全く同じ内容を写した複製で公証人が発行したもの、ということになります。
戸籍謄本が、あらゆる場面で使えるように、公正証書謄本も、ほとんどの相続手続で使用可能です。
公正証書遺言を作る場合、たいていは遺言執行者を選任していると思います。
実際の実務の現場では、遺言執行者が正本を保管し、遺言者が謄本を保管しているケースが多いと思います。
相続が発生したときには、遺言執行者が相続手続を行うので、このように保管しています。
遺言についてもう少し詳しく知りたい方はこちら
8月
10
2017
登記事項証明書(登記簿)の権利部を見てみると、名義人の住所の欄のマンション・アパート名が登記されているケースが少ないことに気付きます。
これは不動産登記のルールがそうなっているからです。
物件の所在地を表す表題部のことではありません。誰が所有者かを表す権利部の所有者の住所のことです。
ルールでは、「権利者のマンション・アパート名や部屋番号は登記することも出来る」となっています。
これは、「登記しないことが標準であり、登記することが例外」と言っている訳です。
従って、所有権移転登記を申請する際にも、申請書の権利者(登記名義を新しく受ける人)の住所の欄にマンション・アパート名や部屋番号は記載しないのが一般的です。
我々司法書士も、特に強い希望が無ければマンション・アパート名は記載しません。
実際に希望される方も、あまりいないのが実情です。

唯一例外なのが、銀行で住宅ローンを借りて購入するケースです。
この場合は、本人ではなくて銀行が部屋番号までの記載を求めてくることがあります。
生前贈与のように、銀行が介在することが無い所有権移転登記の場合は、ほとんどが記載しないケースとなりますので覚えておくとよいでしょう。
もちろん記載することも可能です。その場合は事前に司法書士に希望を伝えましょう。
生前贈与とその登記についてもう少し詳しく知りたいかたはこちら
8月
01
2017
病院で入院中に遺言を残すことは珍しいことではありません。
何らかの危機感のようなものを脳が察知するのでしょうか。
例え命に別状はないような入院であっても、「この機会に遺言を書こうか」という気になる人は多いようです。
では、入院中に公正証書で遺言を残すことは可能なのでしょうか。
結論から言うと可能です。
公証人に出張依頼をして病院に来てもらって、病院のベッドで本人が口述したものを、公証人が作成することになります。
現実には、前もって用意された文案と本人の口述が一致していることを確認して、署名押印がされて出来上がることになります。
通常の費用に加えて、公証人の出張費が加算されますので、公証人に支払う料金が若干高くなります。
ここで公証人あるあるですが、彼らは公共の交通機関で来ることが少ないです。
タクシーを利用することが圧倒的に多いです。
なぜでしょうか。
万が一、公共の交通機関が動かなくなってしまったとき、大事な遺言作成に間に合わなくなっては困るからでしょうか?
調べてみる必要がありますね。
出張費は近いほど安くなりますので、なるべく病院から近い公証役場に依頼すると良いでしょう。
>>>公証人の交通費はどのくらい?タクシーを使う理由がわかった!<<<
文案は事前に公証人に送付しておきます。
不備があれば公証人から訂正を求められます。
心配な方は専門家に文案を作成してもらいましょう。
また証人を2人用意して、当日、病院に来てもらう必要があります。
公正証書遺言の証人についてはこちら
マメ知識として、ぜひとも覚えておいていただきたいのが、認知症の検査についてです。
病院で遺言を作成するのなら、公証人が来る直前に認知症の検査をしてもらうことをお勧めします。
そこで診断書を発行してもらえば、後々のトラブルを防ぐことになります。
遺言のトラブルで最も多いのが、作成時に意識がはっきりしていたかどうか、だからです。
このように入院中であっても公正証書で遺言は作れます。
診断書のように、入院中の方が入手しやすい書類もあります。
人生、何が起こるか分かりません。退院してからでは手遅れになる可能性もあります。
生きていても認知症になってしまったら遺言は作れません。
気が変わったら後で書き直すことも可能なので、入院をひとつのきっかけとして、遺言作成を考えてみてはどうでしょうか。
遺言についてもう少し詳しく知りたいかたはこちら