10月
26
2018
遺産分割が相続人の間の話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。調停になるような遺産分割案件のほとんどが不動産がらみです。何故なら、預貯金は簡単に分割することが出来ますが不動産はそうはいかないので揉めやすいのです。
結果、調停が終了した後、不動産の相続登記が必要になります。たまに誤解されている人がいますが、家庭裁判所は相続登記まではしてくれません。終了後に相続人が自分で司法書士を探して登記をすることになります。
遺産分割調停による相続登記は通常の相続登記とは異なりますので、いくつか注意が必要です。
まず、最終的に話し合いがまとまると家庭裁判所から調停調書が発行されます。この場合は調停調書を添付書類として相続登記を申請します(他にも添付書類はあります)。
しかし、遺産分割調停をして結局話し合いがまとまらない場合は、遺産分割審判になります。このケースではほとんどの場合、裁判所による競売になりますので相続登記は不要になります。
ただし、数は少ないですが審判で相続登記をするケースもあります。その場合は家庭裁判所が発行する審判所謄本が必要になりますが、他に確定証明書も添付しなくてはなりません。これは忘れやすいので気を付けましょう。
調停調書にしても審判書謄本にしても、そこに書かれている不動産を取得する予定の相続人が単独で相続登記をすることが出来ます。これが遺産分割調停による相続登記の最大の特徴です。他の相続人の協力が不要なのです。この特徴があるからこそ、遺産分割調停をする意味があるとも言えます。
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相続登記
10月
17
2018
公正証書遺言については意外と知られていないポイントが、いくつかあります。
皆さんが勘違いしやすいポイントについて、お話したいと思います。
①自筆の署名が必要
自筆証書遺言と違って、公正証書なんだから自筆は一切いらないだろうと思っていると実は違います。公正証書であっても自筆の署名は必要です。
②実印は自分で押す
自筆証書遺言は認印でも構いませんが、公正証書遺言は実印が求められます。押印も遺言者が押すことを求められます。
③必要書類で原本が必要なのは印鑑証明書のみ
遺言者の体調が悪く急いでいる時など、必要書類をファックスで公証役場に送ることは良くあります。そんな場合でも、後ほど原本を要求されるのは印鑑証明書のみです。(ひょっとしたら他の公証人では異なる対応の場合もあるかもしれませんが、少なくとも私が良く担当してもらう公証人は書いたとおりです)
④公正証書遺言は証人二人が必要ですが、証人の押印は認印で構いません。
⑤遺言者と公証人がやり取りをしている間は、他の親族は入室が出来ません。もし病院に出張している場合でも、一旦、病室から出されます。
どうでしょう。意外と知らないことがあったのではないでしょうか。
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遺言
10月
09
2018
公正証書遺言は、公証役場へ行けば自分は何もしないでも、希望さえ伝えれば公証人が作ってくれるというイメージを持っている人が多いかもしれませんが、現実は違います。だいたいの文案は自分で考えてメモしていく必要があります。
そこで注意すべきなのは、明らかな法的な間違い以外は公証人は指摘してくれない、ということです。
法的な間違いを指摘してくれれば、それで充分じゃないか、と思われるかもしれません。しかし、実際の相続の現場に居合わせた経験から言うと、「法的には間違っていなくても、後で非常に面倒なことになった」という事例は数多くあります。
例えば、了解を取らずに親族の一人を遺言執行者にして記載したところ、相続が開始したら「私は遺言執行者になんて、なりたくない」と言って辞退してしまって、新たな執行者を決める時に揉めてしまった、と言う事例がありました。
このような場合、公証人は「遺言執行者に了解を取ってありますか」とはアドバイスはしてくれません。
他にも、「遺言執行者は、その業務を第三者に委任することが出来る」という一筆が入っていなかった為に、遺言執行者が専門家に依頼することが出来なくなってしまった事例もあります。(これも公証人は何も言ってくれなかったようです)
あと非常に印象に残っている事例としては以下のようなケースがありました。
遺言で指定した相続人が高齢だったため、遺言者よりも先に亡くなってしまって、その人の分だけ法定相続になったという事例です。
この事例が大変だったのは、法定相続人が16人もいたことです。当然、相談者が全く面識の無い相続人も複数いて、住所を探すのも一苦労でした。また16人に経緯を説明して各種書面に署名押印をもらわなくてはなりませんから、これも大変な作業でした。
実はこの事例のトラブルは、「遺言で指定した〇〇が、遺言者よりも先に死亡した場合は、△△に相続させる」という一筆が入っていれば(専門用語で予備的遺言と言います)、防ぐことが出来たのです。しかし何度も言うように、公証人はこのようなサービス的なアドバイスはしてくれません。(この一筆が無くても法的には問題ないからです)
この依頼を受けた時も遺言執行者の方が、「遺言を作る時にも依頼をしていれば良かった」と大変悔しがっていました。一筆入っていなかったために膨大な手間と時間が余分にかかることになったのですから無理もありません。
このように遺言には「法的に間違っていなくても、一筆入れておいた方が良いこと、あるいは注意しておいた方が良いこと」が他にもいくつかあります。
後々の手間と時間と余分にかかる費用を考えたら、やはり遺言の作成段階から専門家の意見を聞いた方が良いと思います。
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遺言
10月
03
2018
遺言による相続手続で最も揉めるのが、遺言者が遺言を残した時に認知症になっていなかったかどうか、という部分です。
日本では欧米に比べて、ぎりぎりまで遺言を残さない傾向があるため、どうしてもこのようなトラブルが起こりやすいと言えます。遺言に反対する相続人からすると、。遺言をひっくり返せる唯一の手段とも言えます。
実際に、「遺言作成時に認知症ではなかったのか」という訴訟は全国で起こっていて増加傾向にあります。(遺言の場合、他に争う手段が余り無いという実情もありますが)
これを防ぐ最も確実な方法は、遺言作成時に医師の診断書をもらっておくことです。医師が作成した「認知機能は問題ない」というお墨付きがあれば、後で万が一、訴訟を起こされても勝てる確率が高いでしょう。
後は出来るだけ公正証書遺言で残すべきです。公証人は面談の際、遺言者に対して質問をします。例えば以下のような質問です。
(1)本人確認として住所・氏名・生年月日を聞く
(2)どのような遺言を残したいかを聞く
(2)の質問では「はい」「いいえ」で答えられる聞き方をしません。遺言者自らが残したい遺言の内容の概略を答えなくてはいけません。認知症だったら、まず答えられないでしょう。
しかし、公正証書遺言ならば必ず裁判になっても勝てるという訳ではありません。公証人が当時の事情を忘れてしまっていて、しっかりした証人になってくれるとは限らないからです。
ですから相続人の中で遺言の内容に反対しそうな人がいる場合は、①公正証書で残して、更に②医師の診断書をもらっておく、という2段構えで備えておくのがベストな方法だと思います。
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遺言