1月
26
2021
今回は、相続登記における固定資産評価証明書の取り扱いに関するお話です。
固定資産評価額とは?
日本の不動産には固定資産税という税金がかかります。1年に1回、毎年4月から5月頃に固定資産税通知書(納付書)と言う書類が役所から発行されて、不動産所有者のもとに郵送されてきます。この固定資産税を計算する元になっている不動産の価格を固定資産評価額と言います。
相続登記をする場合、登録免許税という税金がかかります。実はこの登録免許税も固定資産評価額を基準にして計算するようになっています(相続登記の登録免許税は固定資産評価額の0.4%です)。
固定資産評価証明書
固定資産評価額を公的に証明した書類のことを固定資産評価証明書と言います。通常は市町村役場の税務課で取得できます。場所によっては市町村税事務所で取得する場合もあります。(固定資産税は市町村税なので)
固定資産評価証明書は土地と建物に分かれているケースが多いので、通常の土地付一戸建の場合、2通取得する必要があります(1通にまとまっているケースもあります)。
ちなみに、毎年送られてくる固定資産税通知書(納付書)に固定資産税の明細が必ず添付されているので、その明細でも固定資産評価額の公的な証明になります。こちらの方が無料ですし、役所に行く手間も省けるので便利です。
名古屋市の場合、原本の添付が不要です。
この固定資産評価証明書や明細は、相続登記の必須添付書類です。なぜなら登記申請の際に支払う登録免許税の計算の元になっているからです。そして、相続登記の添付書類は原則として原本を添付しなければなりません。
しかし、名古屋市の不動産の場合、例外的にコピーの添付が法務局で認められています。オンラインで原本の確認ができるようになったからだと説明されています。
現在、内閣の方針としてオンラインを進めていくと明言していますから、今後は原本不要の地域が増えていくことが予想されますね。
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相続登記
1月
20
2021
今回は、婚姻期間20年以上の夫婦の居住用不動産の生前贈与が相続法の改正によって行い易くなった、という話です。夫婦間の贈与を考えている方には朗報だと思います。
配偶者の住み慣れた家の相続の問題
相続が開始したら、「他に分配する財産が無いから配偶者が住み慣れた家を売らなくてはならないんじゃないか」とか、「家に住み続けるために遺産分割協議で配偶者が家を相続したら、老後の資金であてにしていた預貯金の相続分を配偶者が大幅に減らされてしまうんじゃないか」、という心配をされている方も多いと思います。
実はこの心配は当たっていて、配偶者が住み慣れた家を売却するために出て行かされたり、預貯金の相続分をかなり減らされたり、といったことは実際に相続の現場では起きています。
特別受益の持ち戻しとは?
このような心配を解消するために、配偶者に居住用の不動産を贈与してしまう、という方法は人気があり良く行われています。しかし、この贈与には重大な落とし穴がありますので注意が必要です。それが「特別受益の持ち戻し」です。
特別受益の持ち戻しとは、「生前に贈与された財産は遺産の前渡しに当たるので、相続の時の遺産分割の際に、贈与された財産を差し引いて遺産を計算しなければならない」というものです。そうしなければ、特定の相続人に集中して生前に贈与された場合、不公平になるから、というのが法律の考え方なのです。
特別受益の持ち戻しという制度があるために、実際には生前贈与がうまくいかなかったというケースが珍しくありません。最終的に相続財産を減らされてしまうからです。
特別受益の持ち戻しの免除
近年、相続法が改正されて、婚姻期間20年以上の夫婦の場合、生前贈与された居住用不動産については、特別受益の持ち戻しが免除されるという規定が新設されました。これは、高齢の配偶者が住み慣れた家を追い出されるのは問題だという考え方が以前からあって、この考え方を法律に適用したものです。高齢の配偶者にとっては大変有益な制度だと思います。
今後の夫婦間の生前贈与
この法律ができたことによって、婚姻期間20年以上の夫婦の場合、居住用不動産は積極的に生前贈与した方が良い、ということになるでしょう。
例え生前贈与しても、その分を相続の時に清算しなくても良くなったからです。
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生前贈与
1月
19
2021
今回は、民法の改正で新しく認められた「配偶者居住権」について解説します。
配偶者居住権とは?
配偶者居住権とは、民法の改正により令和2年4月1日以降に開始した相続から新しく認められるようになった権利のことです。法律の条文では以下のように書かれています。
「相続の際、被相続人の配偶者が被相続人の財産に属した建物について取得する権利であり、その配偶者が相続開始の時に当該建物に居住していた場合において、その全部について無償で使用および収益をすることができる権利(民法1028条1項)」(下線については筆者が記載しました)
ようするに、相続が開始した後に、配偶者が他の相続人から「その不動産を売却して分配したいから出て行ってくれ」と言われないために設けられた制度だと考えて頂ければ分かり易いかと思います。
配偶者居住権が成立するための条件
残された配偶者にとっては大変ありがたい配偶者居住権ですが、無条件に認められる訳ではありません。以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 遺言に書かれていること
配偶者居住権が認められる最も確実な方法は、被相続人(故人)が生前に遺言に書いておくことです。配偶者が住み慣れた家に住み続けられるように、遺言を残しておきましょう。
ちなみに、配偶者居住権を遺言に書く場合の書き方には、ちょっとした注意がいります。発生原因を「相続」ではなく「遺贈」にしなくてはいけません(このように法律で決められています)。この部分は専門的な話になりますので、遺言を書く時には専門家に相談されることをオススメします。
- 遺産分割協議で認められること
配偶者居住権の取得について遺言が残されていない場合、遺産分割協議によって認めてもらわなければなりません。遺言に比べると一気にハードルが上がります。
そもそも他の相続人から「売却したいから出て行ってくれ」と言われる可能性があるから新設された制度なので、売却したい相続人がいた場合、遺産分割協議が進まない恐れがあります。
- 家庭裁判所で認められること
遺言が残されていなくて、遺産分割協議もまとまらなかった場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。その結果、家庭裁判所で認めてもらえれば、配偶者居住権は成立します。ただし、これには時間と費用が余分にかかります。
これら3つの条件を比べた場合、やはり最も確実で手続が早いのは遺言が書かれていた場合です。残された配偶者のためにも、できるだけ遺言を残してあげたいものです。
配偶者居住権の特徴①「登記が第三者対抗要件」
配偶者居住権の取得が決まった場合、登記をしないと第三者に主張することができません。従って、登記は必ずした方が良いと言えます。その時の注意点として、配偶者居住権設定の登記の前には、相続登記がされている必要があります。覚えておきましょう。
配偶者居住権の特徴②「譲渡することはできない」
配偶者居住権は残された配偶者にのみ認められた権利です。従って、他の人に譲渡することはできません。
配偶者居住権の特徴③「賃貸に出すことができる」
配偶者居住権を持ったままで、その建物を賃貸に出して賃貸料をもらうことが可能です。
「建物に住み続けることが目的の権利なのに、それはおかしいのでは?」と思った方がいるかもしれません。しかし、次のような場合を考えてみてください。
「2階建ての家で、1階で夫婦で飲食店を営んでいて2階に住んでいた。夫が亡くなって1階の飲食店を止めてしまったが、スペースがもったいないので他に飲食店をやりたい人に貸して賃料をもらいたい」
というようなケースが考えられます。
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