司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

1月 19 2021

配偶者居住権とは 遺産分割⑫

7:15 PM 遺産分割

今回は、民法の改正で新しく認められた「配偶者居住権」について解説します。

配偶者居住権とは?

配偶者居住権とは、民法の改正により令和2年4月1日以降に開始した相続から新しく認められるようになった権利のことです。法律の条文では以下のように書かれています。

「相続の際、被相続人の配偶者が被相続人の財産に属した建物について取得する権利であり、その配偶者が相続開始の時に当該建物に居住していた場合において、その全部について無償で使用および収益をすることができる権利(民法1028条1項)」(下線については筆者が記載しました)

ようするに、相続が開始した後に、配偶者が他の相続人から「その不動産を売却して分配したいから出て行ってくれ」と言われないために設けられた制度だと考えて頂ければ分かり易いかと思います。

配偶者居住権が成立するための条件

残された配偶者にとっては大変ありがたい配偶者居住権ですが、無条件に認められる訳ではありません。以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  1. 遺言に書かれていること
  2. 配偶者居住権が認められる最も確実な方法は、被相続人(故人)が生前に遺言に書いておくことです。配偶者が住み慣れた家に住み続けられるように、遺言を残しておきましょう。
    ちなみに、配偶者居住権を遺言に書く場合の書き方には、ちょっとした注意がいります。発生原因を「相続」ではなく「遺贈」にしなくてはいけません(このように法律で決められています)。この部分は専門的な話になりますので、遺言を書く時には専門家に相談されることをオススメします。

  3. 遺産分割協議で認められること
  4. 配偶者居住権の取得について遺言が残されていない場合、遺産分割協議によって認めてもらわなければなりません。遺言に比べると一気にハードルが上がります。
    そもそも他の相続人から「売却したいから出て行ってくれ」と言われる可能性があるから新設された制度なので、売却したい相続人がいた場合、遺産分割協議が進まない恐れがあります。

  5. 家庭裁判所で認められること
  6. 遺言が残されていなくて、遺産分割協議もまとまらなかった場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。その結果、家庭裁判所で認めてもらえれば、配偶者居住権は成立します。ただし、これには時間と費用が余分にかかります。

これら3つの条件を比べた場合、やはり最も確実で手続が早いのは遺言が書かれていた場合です。残された配偶者のためにも、できるだけ遺言を残してあげたいものです。

配偶者居住権の特徴①「登記が第三者対抗要件」

配偶者居住権の取得が決まった場合、登記をしないと第三者に主張することができません。従って、登記は必ずした方が良いと言えます。その時の注意点として、配偶者居住権設定の登記の前には、相続登記がされている必要があります。覚えておきましょう。

配偶者居住権の特徴②「譲渡することはできない」

配偶者居住権は残された配偶者にのみ認められた権利です。従って、他の人に譲渡することはできません。

配偶者居住権の特徴③「賃貸に出すことができる」

配偶者居住権を持ったままで、その建物を賃貸に出して賃貸料をもらうことが可能です。
「建物に住み続けることが目的の権利なのに、それはおかしいのでは?」と思った方がいるかもしれません。しかし、次のような場合を考えてみてください。
「2階建ての家で、1階で夫婦で飲食店を営んでいて2階に住んでいた。夫が亡くなって1階の飲食店を止めてしまったが、スペースがもったいないので他に飲食店をやりたい人に貸して賃料をもらいたい」
というようなケースが考えられます。

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