11月 02 2023
相続土地国庫帰属制度の問題点 相続登記㉜
相続したくない土地の増加
特に地方の土地において、相続したくないというケースが増えています。価値が無いため売却するのも難しく、管理責任だけかかるので負担にしかならないというケースです。
「それならば相続放棄してしまえば良いのでは」と思われるかもしれませんが、相続放棄をすると全ての財産を放棄しなくてはなりません。銀行預金などは普通に相続したいけれど田舎の土地は相続したくないという場合には、相続放棄は使えません。
このような悩みを解決する新たな制度として国が作ったのが「相続土地国庫帰属制度」です。
相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度とは、様々な理由により相続したくない土地があった時に、その土地を国に帰属させることができるという仕組みのことです。これならば相続放棄をしなくても、相続したくない土地だけを切り離すことができると期待されました。始まったのは今年(令和5年)の4月からです。
相続土地国庫帰属制度の問題点
しかし、始まってから半年ほどが経過しましたが、この制度の利用は伸び悩んでいます。「期待したほどの制度ではなかった」と言う声もよく聞きます。それは、この制度が数多くの問題点を抱えているからです。具体的には、「誰でも、安い費用で、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではない」という点にあります。
相続土地国庫帰属制度の問題点 1(利用者の限定)
まず利用者に条件が付いています。相続土地国庫帰属制度が利用できるのは「相続や遺言で土地を取得した方」です。ということは、「売買により購入した方」や「贈与によりもらった方」は対象外になります。
他にも共有で相続した場合は、共有者全員で申請しなければならないという条件も付いています。共有者のうち一人でも拒否した場合は、この制度は使えないことになります。
相続土地国庫帰属制度の問題点 2(費用の高さ)
相続土地国庫帰属制度は無料ではありません。
まず審査の段階で審査手数料がかかります。手数料の金額は土地一筆あたり1万4000円です。この手数料は審査を取り下げた場合や審査が不承認で終わった場合でも戻ってきません。
他にも負担金と言う費用がかかります。負担金は原則20万円となっていますが、土地の状況や面積などで変化します。20万円以上請求されることもありうるということですね。馬鹿にならない金額です。
相続土地国庫帰属制度の問題点 3(土地の条件)
どんな土地でも引き取ってもらえる訳ではありません。むしろ相当に細かい条件が付いています。以下に具体例をあげますが、これを見る限り「所有者が引き取ってもらいたいと思うような、やっかいな土地」は除外されていると思えます。
『そもそも申請自体ができない土地』
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①建物が存在する
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②担保権や使用収益権が設定されている
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③他人の利用が予定されている
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④土壌汚染がある
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⑤境界が明らかでない。所有権の存在や範囲に争いがある
※田舎の土地には境界線があいまいな土地が普通にあります
『申請しても承認されない土地』
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①一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる
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②土地の管理処分を阻害する有体物が地上にある
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③土地の管理処分のために除去しなければいけない有体物が地下にある
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④隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理処分ができない
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⑤その他、通常の管理処分に当たって過分な費用や労力がかかる
結論
この数多くの条件を見る限り「何も問題が無ければ引き取る可能性がありますが、少しでも問題があるようなら引き取りません」と国は言っているとしか思えません。そもそも問題が無い土地ならば自分で何とかする人が大半なのではないでしょうか。何かしら問題があるからこそ「国に引き取って欲しい」と考えるのでしょう。
これでは利用者が伸び悩むのも当たり前に思えます。むしろ伸び悩みを予想できなかったとしたら、その方が驚きです。利用者が増えるためにも、今後の制度改正を切に望みます。皆さんはいかがでしょうか。
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