司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

12月 5th, 2024

12月 05 2024

法定相続人の意思は必ず確認しよう 遺産分割⑭

最近多くなっている相続人トラブル

最近多くなっているトラブルに、法定相続人全員の同意があるかの確認が取れていないケースがあります。

例えば、夫が亡くなって妻と長男が同居していて実家を長男に相続させようとする場合を考えてみましょう。次男や長女などの他の兄弟姉妹にきちんと確認をとらずに、「同居しているんだから次男や長女も当然に同意するだろう」と思い込んで相談に来られる人が多いのです。

実際には次男や長女にもそれぞれの事情があって、手続を始めようとすると「長男の単独相続には同意できない」ということが発覚するというケースが増えています。

法定相続分での不動産の共有

不動産を法定相続分で複数の相続人が共有する場合は、法定相続人全員の同意は不要です。

ただしその場合、上記の例でいうと「妻6分の3、長男6分の1、次男6分の1、長女6分の1」で一つの不動産を共有することになります。

もし売却する時には共有者全員の同意が必要になり、極めて売りにくい不動産となります。こうなることを嫌って現実には共有にするケースは少ないです。

特定の相続人が不動産を単独相続するためには遺産分割協議書が必要

特定の相続人が不動産を単独で相続したい場合(今回の事例だと長男)、必ず遺産分割協議書が必要となります。

遺産分割協議書には法定相続人全員の署名押印が条件となっています。一人でも欠けてはいけません。また押印は必ず実印で印鑑証明書の添付も必須です。

このように厳しい条件が付けられていますので、同意していない相続人がいる限り単独相続は難しいことになります。

遺産分割協議書を不要にするには遺言書を書きましょう

法定相続分と異なる相続を希望する場合は、相続人全員が遺産分割協議で合意するか、それでなければ生前に遺言書を書いてもらうしかありません。遺産分割協議で揉めないためにも遺言書はできるだけ書いておいた方が良いと思います。

ただし相続人が配偶者や子の場合は遺留分がありますので、遺言書で特定の相続人に単独で渡せるかは分かりません(遺言で指定されていない相続人が遺留分請求をするかどうかは分からないので)。

一方、遺言者に子どもがいない場合は兄弟姉妹甥姪が相続人になるケースが多くなります。兄弟姉妹や甥姪には遺留分がありませんので、遺言に書かれたとおりに相続が実現する可能性が高くなります。子どもがいない人ほど遺言は絶対に残すべきだと言えます。

遺言が残されていない時は相続人全員に必ず意思確認しよう

現実には遺言を残さないまま亡くなられる方のほうが多いです。その場合は法定相続分どおりに分けるか、誰かに単独相続させたい時は相続人全員の同意を取るしかありません。
どうしても同意してくれない相続人がいる場合は、代償分割と言う方法をとるしかないでしょう。

代償分割とは

代償分割とは、「不動産の単独相続を認めてもらう代わりに金銭で支払う」という方法です。かなり広く行われている遺産分割の方法となります。

相続財産に預貯金が多くある場合は、不動産をもらわない相続人は預貯金の相続分を多くするという方が簡単でしょう。相続財産のほとんどが不動産の場合は(トラブルになり易いのはこの場合)、不動産を単独相続する相続人が自腹で他の相続人に金銭を支払うことになります。

換価分割

相続財産が不動産しかなく、単独相続したい相続人が金銭を自腹では支払えない場合、換価分割しか方法がなくなります。
換価分割は、不動産を売却して金銭に換えて売却代金を法定相続分で分ける方法です。法定相続分通りに分けることができるので法的なトラブルが起きにくい方法だと言えます。ただし元々住んでいた相続人が引っ越さなくてはならなくなりますので、感情的なトラブルになる恐れはあります。

遺産分割は甘くない

色々と説明しましたが、この仕事をしていると遺産分割で揉めるケースは驚くほど多いというのを痛感します。なぜか皆さんその時が訪れるまで甘く考える傾向があります。

裁判にまで持ち込まれるケースも非常に多く、そうなると時間と費用を多大に使い精神的にも負担が大きくなります。
トラブルを防ぐためには法定相続人との連絡はできるだけとり、相続についてはどのような考えを持っているかを把握しておくことが重要です。

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