司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2025年1月

1月 30 2025

被相続人の住所が変更されていた時 相続登記㉛

被相続人の住所が変わっていた時

登記簿に書かれた住所と現在の住所が変わっていた時、売買や贈与などの場合は住所変更登記を済ませてからでないと売買や贈与の登記はできません。しかし、相続登記は別です。被相続人(亡くなった人)の登記簿の住所と死亡時の住所が変わっていた時でも、住所変更登記は不要です。

住所をつなげる書面は必要

ただし相続登記であっても、住所が変わっていた時に何もしなくて良いわけではありません。登記簿の住所と死亡時の住所のつながりを証明する書面を提出する必要があります。通常は戸籍の附票などが、それに当たります。住所の変遷を記載した書面です。

町名地番変更証明書

引っ越しをしていなくても住所が変わる場合があります。例えば町名地番が行政の都合で変更になった場合です。引っ越していないんだから証明書は不要だろうと思われる人もいるかもしれませんが、残念ながら町名地番の変更でも証明書は必要です。

文字通り「町名地番変更証明書」という書類を役所で取得して相続登記の申請の時に提出する必要があります。名古屋市の場合、町名地番変更証明書は区役所の総務課で取得することができます。

住居表示実施の場合

「一丁目2番地」という住所が「一丁目2番3号」のように〇丁目〇番〇号と変わることを住居表示実施と言います。これも引っ越しをしていないのに住所が変わる場合に当たります。この時も「住居表示の変更証明書」という書面を役所で取得してから相続登記を申請することになります。

行政区画の変更

一方、隣接する市町村に合併されたり、政令指定都市になり新たに区ができたり、区の分割により住んでいる地域が別の区となった時などは行政区画の変更と言い取り扱いが異なります。これらの事例(行政区画)で住居表示の変更がなければ、変更証明書の提出は不要です。理由は行政区画の変更は公知の事実と考えられているからです。公知の事実とは公に広く知られている事実という意味です。

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相続登記

1月 24 2025

査定価格と実際の売却価格は違う 相続登記㉚

相続不動産の査定

相続した不動産を売却したいと思った時、まずは不動産業者に査定をしてもらいます。自分が相続した不動産がいくらくらいになるのか、相続人なら誰もが興味を持つでしょう。

ご存知ない方も意外に多いですが、不動産の査定は無料で行っている業者が圧倒的に多いです。地方だと費用がかかる場合もあるようですが、都会の不動産業者はほぼ無料だと考えて間違いないでしょう。よって不動産の査定は複数の不動産業者に依頼される方が多いです。実はここで注意して頂きたいことがあります。

査定価格についての誤解

不動産関連の仕事をしている方を除いたら、不動産の売買に関わるケースはそんなに多くないでしょう。ほとんどの方が不動産売買については素人だろうと思います。そして素人の方がよく誤解しやすいのが、「査定価格を高く出してきた不動産業者に頼めば高く売ってくれるだろう」というイメージです。このイメージで依頼して失敗してしまうケースがあるのです。

査定価格と実際に売れる価格は違う

まず知っておいてもらいたいのが査定価格どおりに売れなくても、基本的に不動産業者に責任は無いということです。
不動産売買は買手次第なので、どんな買手が見つかるかを事前に正確に予測するのは困難です。「この位の価格で売れると思っていましたけど、売りに出したら見つかりませんでした」と言われて、当初の価格を下げることになったという事例は珍しくありません。

一般の方は「査定価格が売れる価格」と思ってしまいがちですが、査定価格には何の保証もありません。査定価格と売れる価格は違うということを覚えておきましょう。

やたらと高い査定は注意した方がよい

このように査定価格には保証はないので、契約を取るために、やたらと高い査定額を提示する不動産業者もあります。周辺の取引事例を参考にして現実的な査定額を提示した誠実な不動産業者が、「査定額が低い」と思われて契約してもらえないということも珍しくありません。

それで高い査定額の業者と契約したら「買手が見つからないから下げてください」と1~2週間くらいで言って来て、結果的に現実的な業者の査定額よりも低い価格で成約したということもあるのです。

不動産業者には査定額の根拠を聞こう

失敗しないためには、不動産業者に査定額を出してもらったら、なぜその査定額になったのかという根拠を説明してもらいましょう。きちんとした査定額を出してくれたかどうかを判断するためです。
この時に査定の根拠の説明が要領を得なかったり、難解な言葉を使って分かりにくかったりする不動産業者は、不当に高い査定額を出している不誠実な業者かもしれませんので注意が必要です。

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1月 20 2025

不動産売買の媒介契約は3種類ある 遺産整理(遺産承継)㉕

遺産承継における不動産売買

遺産承継業務は不動産や預貯金・株式などの相続手続全般を取り扱う業務です。その際に不動産の売却のサポートを依頼されるケースがあります。売却して金銭に換えてから相続人に分配される場合もあれば、特定の相続人が不動産を相続して売却する場合もあります。

不動産を売却する時の仲介の仕組み

不動産を売却する時は、通常は不動産仲介業者に依頼して買手を見つけてもらいます。意外と知られていませんが不動産仲介は成功報酬システムです。買手と条件が合って売買契約を結んで始めて仲介手数料が発生する仕組みです。契約が結ばれない限り、何人の買手と交渉しても一切料金はかかりません。

不動産仲介契約の種類

売主と不動産会社の契約のことを不動産仲介契約と言います。不動産仲介契約は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。それぞれ次のような特徴があります。

一般媒介契約

一般媒介契約は複数の不動産会社に仲介を依頼することができます。報酬は成約した会社にだけ支払います。一見、最も良さそうに見えるので素人の方は選択しがちなのですが、実はプロはあまり利用しません。なぜなら大きなデメリットがあるからです。一つがレインズへの登録義務が無いこと、もう一つが売主への進捗状況の報告義務が無いこと、他にも仲介の優先順位が下がるという現実もあります。

不動産会社の立場から考えて頂ければ理解しやすいと思いますが、一般媒介契約は、他社で成約した場合はタダ働きになるリスクがある訳です。どうしても買い手を見つける優先順位が下がってしまいます。

レインズとは

レインズは正式名称を「不動産流通標準情報システム」と言い、売り物件が出た時にレインズに登録すると、会員になっている不動産会社は全てその情報を見ることができます。かなりの数の不動産会社がレインズの会員になっていますので、登録するだけで広範囲の買手探しにつながる訳です。
ちなみにレインズは一般の方が見ることはできません。あくまで不動産会社に特化されたマッチングシステムです。

専任媒介契約

専任媒介契約は不動産会社を1社だけに絞って仲介を依頼する契約です。メリットとしては7営業日以内のレインズへの登録が義務付けられています。他にも2週間に1回以上の売主への進捗状況の報告も義務付けられています。この2つのメリットは非常に大きいので、事情をよく知っている人は専任媒介契約を選択する傾向があります。

専任媒介にすると買手を探すのも依頼した1社だけだと誤解している人がいますが、レインズに登録してもらえれば事実上ほとんどの不動産会社に物件を見つけてもらえます。一般媒介でレインズに登録されないで複数の不動産会社に依頼するより、専任媒介の方が圧倒的に多くの買手の目に触れる可能性が高いのです。

あと専任媒介契約の特徴として、他社に仲介を依頼することはできませんが、依頼人が自分で買手を探してきた場合はその買主との契約は可能です。

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約は、専任媒介契約の特徴である自分で見つけてきた買主とは契約できるという部分を無くした契約です。つまり自力で見つけてきた相手とも売買契約はできません。それはさすがに厳しすぎると思われる方も多いでしょう。私もそう思います。個人的には専任媒介契約が最もバランスが取れていると考えます。

専属専任媒介契約のメリットとしては、一つは5営業日以内のレインズへの登録、もう一つは1週間に1回以上の売主への進捗状況の報告です。このメリットも専任媒介契約と比較して圧倒的とは言えないので、自力で見つけた相手との契約ができないというデメリットの方が大きいかなと思います。

両手と片手

不動産仲介の業界用語として「両手」と「片手」があります。両手は売主から依頼を受けた不動産会社が買手も見つけた場合、片手は買手は別の不動産会社が見つけた場合です。

不動産売買に詳しくない方が「一般媒介契約の方が良いのでは」と思ってしまう理由の一つが、不動産仲介は基本は両手だと思っていることです。確かに両手ならば複数の不動産会社に依頼した方が多くの買手が見つかるだろうと思ってしまいそうですね。

しかし実際には専任媒介契約と専属専任媒介契約ではレインズに登録しますから他の不動産会社の目に触れて、買手は別の不動産会社が見つけてきたというケースも多いです。レインズ会員の不動産会社すべてが買手を探してくれるなら、その方が良いという考え方もあると覚えておいてください。

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1月 13 2025

相続対策で養子縁組をすると死後離縁は難しい 死後離縁③

相続対策における養子縁組

相続税がかからない相続財産の基準として基礎控除があります。基礎控除は「3000万円+法定相続人の数×600万円」で算出できます。この式を見ると、法定相続人の数が多い方が基礎控除の金額は大きくなることが分かります。

このことに気付いた方は「養子縁組をして法定相続人の数を増やせば、相続税を減らせる」と考える場合もあるのです。

相続対策の養子縁組は死後離縁が難しくなる

相続対策の養子縁組は「相続税を払うくらいならば、ある程度の金額を養子に払った方がマシ」という考えで行われるケースが多いです。従って、相続発生時に、いくらかの財産を受け取っていることが多いことになります。

死後離縁は、実務上は養親が亡くなった後で養子が離縁するケースがほとんどです。ただし養親から相続財産を受け取っている場合は許可されないことが多いです。相続対策で養子縁組をした場合は、この許可されない条件に当てはまっていると考えられます。

相続対策での養子縁組は事前によく検討するべき

相続対策で養子になってみたところ「養親が亡くなった後で、養親の親族の扶養義務や祭祀が煩わしくなったので離縁したい」と思っても、死後離縁を家庭裁判所が認めてくれなくて困っているという人は珍しくありません。

家裁が離縁を認めてくれない限り、その人は養子であり続けることになるので、養子縁組をするかどうかは先のことも考えた上で決めた方が良いでしょう。

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死後離縁のページにリンク(相続)

1月 07 2025

「相続開始の日」とは 相続登記㉙

相続開始の日についての誤解

相続登記の相談を受けていて、よくある誤解の一つに「遺産分割協議がまとまった日が相続開始の日」だと思われている場合があることです。

確かに遺産分割協議がまとまらないと相続手続ができませんので、「手続が始められる日が相続開始の日だろう」と考えてしまう人がいるのは理解できます。

ただしこの考え方だと、法定相続分どおりに分ける場合は遺産分割協議が不要なので、その場合はどうなるのだろうという疑問が生じます。では実際にはどうなるのでしょうか。

相続開始の日は被相続人の死亡日

法的には相続開始の日は被相続人(故人)の死亡日になります。しかし実際には遺産分割協議が終わらないと手続はできません。一見、矛盾に見えますが、実は遺産分割協議の法的な性質を知れば、矛盾ではないことが分かります。

遺産分割協議の法的な性質

相続の基本的な考え方は、「被相続人の死亡日に全財産は法定相続分で相続される」というものです。最も誤解が多いのは「遺産分割協議が終了するまで財産は被相続人のもの」だと思われている場合です。

これは大きな間違いで被相続人が死亡した時点で法定相続分による相続は始まっているのです。ですから法定相続分による手続の場合は遺産分割協議書が不要になります。

では遺産分割協議とは何かと言うと、「一旦、法定相続分で相続された財産の分割方法を変更すること」になります。ようは遺産分割方法の変更を協議していることになります。この考え方ならば矛盾は無くなりますね。

よって相続開始の日は被相続人の死亡日になるのです。なるほどと思って頂けたら幸いです。

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