司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2024年12月

12月 27 2024

戸籍謄本の廃棄証明や滅失証明 相続登記㉘

相続登記における戸籍謄本

相続登記の手続は、まず法定相続人を確定する作業から始まります。そのためには大量の戸籍謄本を取得する必要があります。戸籍謄本をたどっていくことによって法定相続人を探していきます。場合によっては相談者が予想もしない相続人が現れることも稀にあります。

ところが戸籍謄本をたどっていくと、廃棄や滅失によって全部が取得できないケースがたまにあります。どのような場合に廃棄や滅失されたりするのでしょうか。

戸籍謄本の廃棄や滅失

戸籍謄本は様々な理由で廃棄や滅失されている場合があります。例えば保存期間の経過です。現在は戸籍の保存期間は150年に延長されていますが以前は80年でした。これだと2代前から相続登記を放置していた場合は廃棄されている可能性が出てきます。

他には戦時中の戦災や、地震や津波などの自然災害などによって役所が被害を受けて戸籍が失われるケースもあります。この場合は戸籍が滅失されたことになります。

戸籍の廃棄や滅失があった場合の相続登記

戸籍の廃棄や滅失があると全ての戸籍謄本がそろいません。その場合、法定相続人が確定しないことになります。では相続登記はどなるのでしょうか。

廃棄や滅失があった時は役所から廃棄証明(廃棄済証明)や滅失証明と言った証明書を役所から発行してもらえます。これらの証明書を添付していくことで相続登記を進めて行くことが可能になりました。
以前は、全ての戸籍謄本がそろっていない場合、判明している相続人全員から「他に相続人がいない旨」の上申書を提出しないと法務局は相続登記を受け付けてくれませんでした。

しかしルールが改正されて、今は廃棄証明(廃棄済証明)や滅失証明を提出すれば相続登記を受理してもらえます。ただし、このやり方が通用するのは判明している相続人の生死が証明できる場合になります。

相続人がいることは判明しているが生死が不明な場合

一方で「取得できる戸籍謄本から相続人の存在は確認できるが、途中の戸籍が廃棄または滅失しているため、その相続人の生死が判明しない」というケースがあります。この場合は廃棄証明や滅失証明では解決しません。

この場合は相続人がいることは確定しているので、失踪宣告の申立や不在者財産管理人の選任申立などの手続を取る必要があります。かなり複雑な手続になりますので早めに司法書士に相談しましょう。

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相続登記

12月 26 2024

法定相続情報一覧図で被相続人の住民票除票が廃棄されていた場合 法定相続情報証明⑤

法定相続情報一覧図における住民票の除票

法定相続情報一覧図の必要書類の中に「被相続人の住民票の除票」があります。被相続人とは亡くなった人のことです。亡くなった人の住民票は生存者の住民票から除かれて別に保存されるため除票と呼ばれます。

住民票の除票には保存期間があって、この期間を過ぎると廃棄されてしまい提出できなくなることがあります。

住民票の除票の保存期間

令和元年6月に法律が改正されて、住民票の除票の保存期間が、それまでの5年から150年に延長されました。改正後は廃棄される可能性は当分ないでしょう。

しかし問題は改正前です。平成26年6月以前に亡くなられた場合は既に廃棄されているので発行されません。これ以前に亡くなられていて相続手続を放置してしまった場合は、法定相続情報一覧図の必要書類を出せないことになります。

法定相続情報一覧図の住民票除票が廃棄されていた場合

法定相続情報一覧図の住民票除票が廃棄されて出せない場合、一覧図に被相続人の住所を書くことができません。その代わりに被相続人の本籍を必ず記載することになります。本来、法定相続情報一覧図の本籍の記載は任意なのですが、住民票除票の廃棄の結果記載ができない時は必須となりますので覚えておきましょう。

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12月 23 2024

数次相続の場合の法定相続情報一覧図 法定相続情報証明④

数次相続とは

今回は数次相続と法定相続情報一覧図についての2回目となります。
数次相続とは、一度起こった相続の相続人の一人が、遺産分割協議を決着させる前に亡くなってしまった場合のことを言います。2回相続が発生しているので数次相続と呼ばれています。

この数次相続は手続が非常に大変です。手間は単純に2倍ではなく、3倍~4倍というのが経験からくる印象です。この数次相続を避けるために、最近では法律が改正され相続登記が義務付けられるようになりました。

法定相続情報証明とは

相続手続には銀行や証券会社や法務局などに大量の戸籍謄本を持参する必要があります(特に数次相続の場合は量が多くなります)。途中で1通だけ抜けて忘れたり、汚してしまったり、紛失してしまう可能性もあります。何よりも、持参された金融機関が大量の戸籍謄本をチェックしなければならないため、手続に非常に時間がかかってまいます。

解決するには、法定相続情報証明として「法廷相続情報一覧図」を発行してもらう方法があります。大量の戸籍と申出書と一覧図を法務局に1回持ち込んで審査が通れば、一覧図に登記官が認証文を付けて公的な書類として法定相続情報一覧図を発行してくれます。この公的な認証が付いた法定相続情報一覧図は銀行や法務局でそのまま相続手続に利用することができます。大量の戸籍謄本を持ち歩く必要がなくなるわけです。

また持ち込まれた金融機関にとっても一覧図の方がはるかに見やすくチェックも早くできるので時間の短縮につながるでしょう。

もちろん法務局の審査を通すためには書き方に注意すべきポイントがいくつかありますので、一覧図の作成と申請は司法書士に依頼した方が確実でしょう。

数次相続の場合は法定相続情報一覧図は2枚になる

数次相続の場合、法定相続情報一覧図は2枚作らなければなりません。この点、相続登記の際に添付する相続関係説明図とは異なります(相続関係説明図は通常1枚で作ります)。

法定相続情報一覧図において、1回目の相続が起こった時点では、まだ相続人全員が生きていたはずなので、1枚目はその状態を記載することになります。つまり、2回目の相続で亡くなっている相続人も生きているものとして記載されます。当然、2回目の相続の死亡日の記載はしてはいけません。

次に2回目の相続についてだけの法定相続情報一覧図を作ります。2枚目には後で亡くなった相続人の相続関係だけを記載します。従って、1枚目と2枚目を合わせなければ数次相続が起こっていることは分からないようになっています。

法定相続情報一覧図は相続人全員の生存を証明していない

法定相続情報一覧図は、このような仕組みで作られているので、記載されている相続人が現在生きているかどうかは証明されていないことになります。例え数次相続が起こっていても、法定相続情報一覧図の1枚目だけ提出されたら通常の相続に見えてしまいます。

ですから銀行や法務局では手続の際に、法定相続情報一覧図以外に相続人の印鑑証明書や住民票を要求します。こうすることで、既に死亡している相続人がいないかをチェックしているのです。

最初の相続の法定相続情報証明を2回目の相続の相続人が申請できる

2回目の相続が起こった時の新たな相続人は、1回目の相続の法定相続情報証明の申出(法務局では法定相続情報証明の申請のことを申出と呼びます)をすることができます。

2回目の相続の相続人は、1回目の相続の法定相続情報一覧図に出てきませんので、申出自体ができないように思えますが、2回目の相続で亡くなった相続人の地位を引き継いでいるので申出が可能なのです。

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12月 20 2024

自筆証書遺言を紛失してしまったら 遺言㉚

自筆証書遺言を紛失してしまった場合

実際にあった事例で、相続手続を一通り済ませたと思った数年後に故人の通帳が押し入れから見つかったということがありました。

ご主人の自筆証書遺言が残されていたケースで、家庭裁判所で検認をしてもらい、遺言の通りに相続手続を済ませていました。しかし、それから数年後に新たな通帳が見つかった時には、検認済みの自筆証書遺言は紛失していて見つからなかったのです。このような場合は、あきらめるしかないのでしょうか。

※自筆証書遺言は家庭裁判所で検認をしてもらわないと相続手続に使うことができません。(ただし法務局の遺言書保管制度を利用している場合は検認は不要です)

検認期日調書謄本とは

実は検認が済んでいれば自筆証書遺言の代わりになるものがあるのです。

それが検認期日調書謄本です。これは自筆証書遺言を家庭裁判所で検認すると、家庭裁判所に記録が残り、その記録の謄本をいつでも請求することができるのです。

そしてこの謄本は自筆証書遺言の原本と同じように相続手続に使うことができます。

検認期日調書謄本の内容

検認期日調書に記録されている内容は、「担当した裁判官の氏名、検認期日に出頭した相続人の氏名、裁判所で陳述した内容、遺言書の外観(封が空いていたとか、字がにじんでいたとか)」などです。

この検認期日調書と一緒に遺言書原本の写しも家庭裁判所に保管されます。

検認期日調書謄本で助かった事例

最初の事例ですが、相続人は故人の妻で自筆証書遺言の内容は「全財産を妻に相続させる」というものでした。子どもがいなかったので遺言が無ければ、妻と兄弟姉妹甥姪の遺産分割になります。兄弟姉妹甥姪の数が多かったので遺産分割がスムーズにいかない可能性がありました。ですから遺言による相続手続が必要だったのです。

検認期日調書謄本のおかげで自筆証書遺言を紛失しても、無事に後から見つかった通帳の口座の相続手続が済みました。本当に助かった事例でした。

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遺言

12月 05 2024

法定相続人の意思は必ず確認しよう 遺産分割⑭

最近多くなっている相続人トラブル

最近多くなっているトラブルに、法定相続人全員の同意があるかの確認が取れていないケースがあります。

例えば、夫が亡くなって妻と長男が同居していて実家を長男に相続させようとする場合を考えてみましょう。次男や長女などの他の兄弟姉妹にきちんと確認をとらずに、「同居しているんだから次男や長女も当然に同意するだろう」と思い込んで相談に来られる人が多いのです。

実際には次男や長女にもそれぞれの事情があって、手続を始めようとすると「長男の単独相続には同意できない」ということが発覚するというケースが増えています。

法定相続分での不動産の共有

不動産を法定相続分で複数の相続人が共有する場合は、法定相続人全員の同意は不要です。

ただしその場合、上記の例でいうと「妻6分の3、長男6分の1、次男6分の1、長女6分の1」で一つの不動産を共有することになります。

もし売却する時には共有者全員の同意が必要になり、極めて売りにくい不動産となります。こうなることを嫌って現実には共有にするケースは少ないです。

特定の相続人が不動産を単独相続するためには遺産分割協議書が必要

特定の相続人が不動産を単独で相続したい場合(今回の事例だと長男)、必ず遺産分割協議書が必要となります。

遺産分割協議書には法定相続人全員の署名押印が条件となっています。一人でも欠けてはいけません。また押印は必ず実印で印鑑証明書の添付も必須です。

このように厳しい条件が付けられていますので、同意していない相続人がいる限り単独相続は難しいことになります。

遺産分割協議書を不要にするには遺言書を書きましょう

法定相続分と異なる相続を希望する場合は、相続人全員が遺産分割協議で合意するか、それでなければ生前に遺言書を書いてもらうしかありません。遺産分割協議で揉めないためにも遺言書はできるだけ書いておいた方が良いと思います。

ただし相続人が配偶者や子の場合は遺留分がありますので、遺言書で特定の相続人に単独で渡せるかは分かりません(遺言で指定されていない相続人が遺留分請求をするかどうかは分からないので)。

一方、遺言者に子どもがいない場合は兄弟姉妹甥姪が相続人になるケースが多くなります。兄弟姉妹や甥姪には遺留分がありませんので、遺言に書かれたとおりに相続が実現する可能性が高くなります。子どもがいない人ほど遺言は絶対に残すべきだと言えます。

遺言が残されていない時は相続人全員に必ず意思確認しよう

現実には遺言を残さないまま亡くなられる方のほうが多いです。その場合は法定相続分どおりに分けるか、誰かに単独相続させたい時は相続人全員の同意を取るしかありません。
どうしても同意してくれない相続人がいる場合は、代償分割と言う方法をとるしかないでしょう。

代償分割とは

代償分割とは、「不動産の単独相続を認めてもらう代わりに金銭で支払う」という方法です。かなり広く行われている遺産分割の方法となります。

相続財産に預貯金が多くある場合は、不動産をもらわない相続人は預貯金の相続分を多くするという方が簡単でしょう。相続財産のほとんどが不動産の場合は(トラブルになり易いのはこの場合)、不動産を単独相続する相続人が自腹で他の相続人に金銭を支払うことになります。

換価分割

相続財産が不動産しかなく、単独相続したい相続人が金銭を自腹では支払えない場合、換価分割しか方法がなくなります。
換価分割は、不動産を売却して金銭に換えて売却代金を法定相続分で分ける方法です。法定相続分通りに分けることができるので法的なトラブルが起きにくい方法だと言えます。ただし元々住んでいた相続人が引っ越さなくてはならなくなりますので、感情的なトラブルになる恐れはあります。

遺産分割は甘くない

色々と説明しましたが、この仕事をしていると遺産分割で揉めるケースは驚くほど多いというのを痛感します。なぜか皆さんその時が訪れるまで甘く考える傾向があります。

裁判にまで持ち込まれるケースも非常に多く、そうなると時間と費用を多大に使い精神的にも負担が大きくなります。
トラブルを防ぐためには法定相続人との連絡はできるだけとり、相続についてはどのような考えを持っているかを把握しておくことが重要です。

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