司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2025年12月

12月 23 2025

小規模宅地の特例を利用する時は、すぐに売却してはいけない 遺産整理(遺産承継)㉝

Q 小規模宅地の特例とは何ですか?

A 相続不動産について相続税の計算をする時、要件に当てはまれば「小規模宅地の特例」と言う制度を使うことができます。小規模宅地の特例を使うと、不動産評価額が8割減になるという大幅な相続税の減税につながります。当てはまる場合は必ず使うべきです。

Q 小規模宅地の特例を使う時には、すぐに売却してはいけないのですか?

A 小規模宅地の特例を使う場合は様々な要件がありますが、その中でも間違えやすいのが売却時期です。不動産の相続に当たって売却して換金するというのは頻繁に行われることですが、うっかり売却時期を間違えると小規模宅地の特例の要件を満たさなくなり大きな損失を被ることになります。

Q では小規模宅地の特例の要件を満たす売却時期とはいつですか?

A 被相続人の居住用宅地、つまり自宅不動産の場合、原則として「相続開始時から相続税申告期限まで保有していること」という要件があります。相続税の申告期限は、相続発生を知った日の翌日から10ヶ月以内です。そのため、相続開始から10ヶ月以内に売却してしまった場合、要件をクリアしていないことになってしまうため、小規模宅地の特例の適用を受けることができなくなってしまいます。

Q では売却先を探すことも、しばらくはできないのですか?

A いいえ。売却先を探すことは問題ありません。買主を決めても売却さえ相続税申告期限まで待っていれば、この要件は満たします。不動産会社にも、このことは詳しく伝えておいた方が良いでしょう。

Q 売却時期さえ注意すれば良いのでしょうか?

A いいえ。小規模宅地の特例の要件は他にもあります。全て説明すると長くなりますので、今回は省略します。

Q やはり相続税の申告は専門家に任せた方が良いのでしょうか?

A そう思います。特に相続税は専門的な部分が多く、知らないまま申告して実は損をしているケースが多いと聞きます。余分に払った相続税金額が、税理士報酬よりも高額であったということも珍しくありません。(税務署は多く払った場合は絶対に教えてくれません。自分で気付かなければ、そのままです)

一方、本来の納税額よりも少なく申告してしまうと後から追徴課税を税務署から請求されます。追徴課税は本来の税率よりも高くなりますので、無理に自分でやろうとするとリスクが高い申告だと思います。

Q 税理士はどうやって探したら良いのでしょうか?

A 相続手続を司法書士に依頼した場合は、一般的に提携している税理士を紹介してくれます。実は相続税申告は全ての税理士が行っている訳ではない特殊な手続です。相続税申告をほとんど経験してない税理士も珍しくありません。しかし、相続手続を扱っている司法書士と提携している税理士は相続税申告の経験が豊富である場合がほとんどです。経験の浅い税理士に当たるリスクは少ないと思います。

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12月 19 2025

長期相続登記等未了土地の法定相続人情報 相続登記㊶

Q 長期相続登記等未了土地とは何ですか?

A 長期間、遺産分割協議や相続登記が放置されていて現在の所有者が登記簿からは不明になっている土地が数多くあります。その中で法務局が法定相続人に相続登記をするように促す通知を出した土地を長期相続登記等未了土地と言います。
長期相続登記等未了土地は登記簿に付記登記として記載されますので、登記簿を確認すれば分かるようになっています。

Q 確か相続登記が義務化されたと思ったのですが、今後は解消していくのでは?

A 今後は少しずつ解消していくでしょう。しかし全国には非常に多くの長期相続登記等未了土地が存在するので、解消を促進するために新たに設けられたのが法定相続人情報と言う制度です。

Q 法定相続人情報とは法定相続情報一覧図のことでしょうか?

A いいえ違います。名称が似ているので勘違いする人も多いと思いますが、全く異なる制度です(もう少し区別しやすい名称にした方が良いように個人的には思いますが)。

Q では法定相続人情報とは、どんな制度なのですか?

A 法定相続人情報とは、長期相続登記等未了土地に指定されて通知が出された土地については、法務局が亡くなっている登記名義人の戸籍等を調べて法定相続人の関係図を作成してくれるという非常にありがたい制度です。
通常は相続関係図は相続人が自分で戸籍等の調査をして作成するか、司法書士に依頼して作成してもらうかになります。しかし、長期相続登記等未了土地の通知をもらった場合には、その必要が無くなるわけです。

Q では法定相続人情報を取得するには、どうすれば良いのでしょうか?

A 法定相続人情報の依頼書を法務局に提出して取得することができます。費用は無料です。しかも管轄ではない法務局で取得することも可能になっています。ここまで優遇するのは役所では珍しいですね。その位、所有者が不明の土地を無くすことが重要な課題になっているということでしょう。

Q 他にも長期相続登記等未了土地の相続登記で優遇されていることはありますか?

A はい、あります。上記に添付した登記簿の写真を見て頂くと、長期相続登記等未了土地の付記登記に「作成番号」と言う記載が見つかります。相続登記をする時に、この作成番号を法務局に提供すると何と通常は必要な戸籍や住民票などの書類は不要になるのです。これは大きな優遇措置ですね。

Q 長期相続登記等未了土地の相続登記の流れを教えてもらえますか?

A はい。順番に流れを説明しましょう。
①法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知」が届く。

(法定相続人が複数の場合は任意の一人に届きます)
②法務局に依頼書を提出して法定相続人情報を取得する。
③法務局で該当する土地の登記事項証明書を取得する。
(司法書士に依頼するとオンラインで登記情報を取得します)
④取得した法定相続人情報で、他の法定相続人を確認する。
⑤法定相続人全員の遺産分割協議で、土地を相続する相続人を決める。

(複数で共有にするのも可能ですが、売却の時に不利になる可能性があります。
分配したい場合は一人に名義を変更して、売却してから分配する方法がオススメです)
⑥登記申請の必要書類の収集と作成をする。

(作成番号を提供すれば、一定の戸籍・住民票は省略可能です)
⑦不動産を管轄する法務局に相続登記を申請する。

(相続登記は管轄外の申請はできません)

Q 流れは分かりました。自分でもできますか?

A 長期相続登記等未了土地の相続は放置している間に相続人が増えていくパターンがほとんどなので、法定相続人が通常の場合よりも多くなるのが一般的です。すると戸籍や住民票以外にも必要となる書類も多く準備も大変になります。慣れている司法書士がやっても「大変だ」と思うケースも珍しくありません。ましてや一般の人がやり遂げるのは相当に厳しいと思います。法務局から通知が届いたら、相続登記に詳しい専門家にご相談されることをお勧めします。

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12月 11 2025

父と母の数次相続の注意点 相続登記㊵

父と母の数次相続になるケースは相続登記では珍しくありません。例えば父名義の不動産があり、父が先に亡くなって相続登記を放置していたら、次に母が亡くなったというケースです。

この場合、1回の登記申請で処理することができる場合があります。ただし遺産分割協議書には注意が必要なので、この事例で説明しましょう。子どもはAとB二人とします。

Q まずAが不動産を全て相続する場合はどうなりますか?

A 注意すべきは、父が亡くなった時に存命だった母は既に亡くなっていることです。この場合、AとBは本人の立場と、母の相続人という立場の両方で遺産分割協議書に署名押印することになります。協議書にも、そのことが分かるような書き方をしなければなりません。

Q ではAとBが法定相続をする場合は、どうなりますか?

A この場合、法定相続なんだから遺産分割協議書は不要だろうと勘違いしがちです。しかし遺産分割協議書は必要になります。

Q なぜ法定相続なのに遺産分割協議書が必要なのでしょうか?

A 落ち着いて考えると分かるのですが、父の相続の時点では母が存命なので母も法定相続人になります。従って、AとB本人と、母の相続人の立場のAとBで、「母は除外してAとBに相続させる」という遺産分割協議書を作る必要があるのです。こうすることで1回の申請でAとBに相続させることができます。

このように数次相続の登記はかなり複雑で専門知識が必要になります。司法書士に依頼されるのが得策だと思います。

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