9月
12
2012
会社破産をするには取締役全員の同意が必要となります。会社には様々な手続がありますが、通常は取締役の過半数とか株主総会の過半数とかで決定することが多いです。全員の同意が必要というのは、かなり珍しいケースで、それだけ重要な決定ということでしょう。(まあ、会社を廃業するのと同じことですから、これ以上、重要な決定は無いとも言えますが)
ちなみに重要な決定ですが、株主総会の決議は必要とされていません。ようは株主には知らされずに破産の準備は行われることになります。前のブログにも書きましたが、会社破産は迅速さが求められます。同時に出来る限り秘密に進めていく必要もあります。この迅速と秘密を考えた場合、株主総会などやっていたら、とても破産など出来ません。株主は取締役と違って、会社によっては膨大な数がいますので、召集するのにも時間がかかりますし、召集の過程で多くの人間に知られることになりますから。
そして、何より、これから破産する会社の株を持っている人はいませんので、投売りが始まってパニックになってしまうでしょう。
従って、株主から見ると理不尽のように見えますが、株主には何も知らされずに会社破産は準備されるのです。
一つ疑問なのは、取締役の中に株主がいた場合は、その人は当然、知っていることになります。この人は合理的な行動としては、即刻、全株式を売るでしょうが、これは果たして許されるんでしょうか。何だかインサイダー取引になるような気がするんですが、どうなんでしょう。
現在の会社法では取締役会を設置する会社と設置しない会社の両方が存在します。設置する会社の場合は、単純に取締役会を開いて全会一致で決めれば良いのですが、設置しない会社の場合は、取締役全員の同意書が必要になります。これは、持ち回りでも構わないので、全員から同意した旨の書面をもらっておくのです。
現実には、突然、切り出された場合、紛糾して収拾がつかなくなる可能性が高いので、事前に根回しをしておくことが必要でしょう。一人でも反対したら破産は出来ない訳ですから、きちんと説得した上で必ず同意してもらう状態でのぞむことが重要です。
9月
04
2012
会社の経営者が破産を決断するのは、個人よりも難しい場合が多いです。何故なら、自分一人だけの問題に留まらないからです。従業員にとっても取引先にとっても、会社が無くなるというのは大変な事態ですから、なかなか決められないのも無理からぬことでしょう。
しかし、この決断の遅れが原因で取り返しのつかないことになりやすいのも、また会社破産の大きな特徴なのです。
まず、会社破産には個人破産よりも多額の費用が必要です。裁判所の預納金や法律家への報酬などで100万円を超えることも珍しくありません。(前にもブログで書きましたが、事務手続きの大変さを考えたら決して割高ではありません。しかし、絶対額で大きいのは事実です)。しかも、会社破産の場合、代表者個人の破産もセットで行うのが通常ですから、個人破産の預納金や費用もかかってくるわけです。
ずるずると破産の決断を引き延ばして、手形の不渡りなどの決定的な要因により、ついに決心した時には会社にお金が残っていなくて、そもそも裁判所の預納金も確保できなかった、などということになりかねません。
「資金繰りが苦しいから破産するのに、お金が必要なんておかしい」という声が聞こえてきそうですが、これが現実です(個人的には医療における健康保険のような国家的な制度を破産にも用意するべきだろうと思います)。だからこそ、会社破産は早めの決断が必要なのです。
他には、決断が遅れることによって、偏頗弁済が発生しやすくなることがあげられます。偏頗弁済とは、「債権者平等の原則」に反する支払いのことです。破産では、「債権者平等の原則」により、特定の債権者に対して多く支払うことを禁じています。法律上は、消費者金融も、なじみの取引先も同じように扱わなくてはいけません。
資金に余裕がある時は問題ありませんが、資金繰りが苦しくなってくると、つい、なじみの取引先に優遇して支払ってしまったりするものです。これが後に破産手続で問題になります。
会社破産の場合、破産管財人が選任されます。個人破産同時廃止よりも厳しい審査をされます。破産管財人が上記の偏頗弁済を見つけたら、否認権を行使される可能性が高いでしょう。この場合、なじみの取引先から強制的に支払った金額を取り返すことになります。当然、裁判所に与える印象も悪くなるでしょう。
このようなことが起こらない為にも、やはり早めの決断が大切なのです。
6月
26
2012
最近はデフレ不況が長引いていますので、中小企業の倒産も増加しています。そこで以前よりも法人破産(会社破産)の相談が増えてきています。
会社破産は個人破産と比べると事務手続は膨大なものになります。正直、2倍や3倍ではきかないでしょう。あまりにも大変なので、取り扱っている事務所も少ないと思います。
従って、会社破産の報酬は一見、個人破産よりも高く見えますが、現実の事務処理の大変さを考えたら実は個人破産よりも割安だと思います。積極的に引き受けている事務所が少ないという事実が何よりの証拠になります。もし、報酬が割高だったら、喜んで引き受ける事務所がもっと増えるでしょう。
私の場合、司法書士で引き受けることが可能な規模の会社ならば出来る限り引き受ける方針です。もちろん、大規模な会社の破産などは会社破産専門の弁護士の領域ですから、私は手を出しません。無理に手を出せば、かえって依頼人に迷惑がかかりますから。(そもそも、そういう会社は最初から顧問弁護士がいるでしょうから、私のところに来る可能性がありません)
会社破産の難しいところは事務処理が個人破産よりも破格に多いにもかかわらず、大抵の場合、準備期間が短いことです。ようは莫大な量の事務処理を素早くやらなければならないのです。これは、会社の場合、利害関係人の種類が多く、個人と違って貸金業者以外の利害関係人がからんでいるからです。
例えば、会社の従業員は自分の勤めていた会社が倒産する訳ですから、おとなしくしている訳はありません。未払いの給料などがあったら矢のような催促をされます。
他には、買掛金のある取引先は、破産会社が買掛金を払わないことによって自分の会社の資金繰りが回らなくなってしまう可能性があります。下手をしたら連鎖倒産してしまうかもしれません。彼らにとっては死活問題ですから、会社破産における買掛金の取引先は、ある意味、サラ金よりも取立てが厳しいのが普通です。中には勝手に事務所に押し入ってきて什器・備品を持ち去ってしまうような取引先もいるのです。
こんな事情がありますから、事前に破産を準備していることを従業員や取引先には知られないように進めていく必要があるのです。引き受けたらすぐに、受任通知を債権者に送ってしまう個人破産とは、ここが決定的に違います。秘密にすると言っても限界がありますから、だからこそ、会社破産は早くやる必要があるのです。
4月
06
2012
一般的な認識だと、自己破産をすれば、全ての債権の請求からは解放されると考えられていますが、残念ながら一部の債権では支払義務が残るものがあります。
例えば、最も分かりやすいのが税金です。滞納した税金も債権の一つですが、この滞納税金に関しては破産をしても逃れることが出来ません。この辺はテレビドラマなどでも説明されていることがあるので、ご存知の人も多いかもしれません。
一方、あまり知られていないのが不法行為に基づく損害賠償請求権の一部が非免責債権(破産しても免責されない、ようするに支払義務が残ること)になっていることです。
これには2種類あって、一つは「悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権」です。この場合は、破産でも免責されないと法律で規定されています。
これは、悪意で不法行為を受けた被害者を守る為の規定です。もし、この債権を免責可能にしてしまうと、悪意で不法行為を他人に加えて、その後で破産すれば損害賠償から逃れられることになってしまいます。これでは、反社会的な行動を助長する恐れがあります。
もう一つは、「人の生命や身体に対して、故意または重過失による不法行為の損害賠償請求権」です。
故意または重過失とは、悪意よりも軽い意識で不法行為を加えたしまった場合でも、対象が人の生命・身体であれば、やはり破産しても免責は受けられませんよ、ということです。
これは、被害の対象が生命や身体の場合、ことの重大さを考慮して、例え悪意でなくても、故意・重過失であれば免責を許さないと法律で決めたものです。(この部分は、実は破産法が改正された時に新たに加えられたものです)
このように破産しても免責が受けられない債権というものがあります。今回取り上げなかった債権もありますので、知りたい方は専門家に、お聞き下さい。いずれにしても、破産すれば、どんな債権でも免責されるとは思わないでいて下さい。
1月
23
2012
ローンが払えなくなった時、「保証人に請求がいくのは困る」と考える人は多いと思います。しかし、ローン契約書に保証人の記載が無いと、ほとんどの人は安心してしまうのではないでしょうか。ところが、そういう場合にも思わぬ落とし穴がある時があります。それが本日のテーマ、保証委託契約の保証人です。
保証委託契約とは借主と保証人(保証会社であることが多い)が結ぶ契約のことです。文字通り、借主が保証人(保証会社)に対して保証してくれることを頼む契約です。
それに対して、良く知られる保証契約とは貸主と保証人が結ぶ契約なのです。借主は実は保証契約の当事者ではありません。一般的には借主から頼まれて保証人になることが多いので、多くの人は借主が保証契約の当事者だと勘違いしている場合が多いようです。
保証人が個人の場合は、保証契約のみのケースが多いと思います。一方、住宅ローンが代表ですが、高額で長期間のローンの場合は保証会社と借主が保証委託契約を結ぶことが一般的になっています。
実は、ここが問題なのですが、大元のローン契約自体に保証人がついていないにもかかわらず、保証委託契約に保証人がついている場合があるのです。
この場合、ローン契約書を眺めていても絶対に分かりません(ローン契約書には保証会社のことしか書かれていません)。しかも、保証委託契約による保証人への請求は、前回に説明した保証会社への代位弁済が行われた後でなければ起こりません。例え滞納していたとしても、代位弁済が行われる前の段階では銀行は保証人へ請求してきませんから(ローン契約に保証人が設定されていない以上、当然ですが)全く気が付かない訳です。(住宅ローンの場合、約6ヶ月間の滞納で保証会社へ代位弁済されるケースが多いようです)
このことから、住宅ローンが払えずに自己破産に踏み切った人が、しばらくして保証会社に代位弁済がなされ、その後、保証人に請求されてびっくりするということが起こりうる訳です。
従って、自分のローンに保証委託契約が付いているかどうか、付いていたら保証委託契約に保証人が付いているかどうかを、まず確かめることが重要だと言えるでしょう。
1月
16
2012
住宅ローンが返せなくなってローン会社から督促が来ている、けれども給料が大幅に下がった、あるいは失業したなどの事情で今後も返せるあてが無い、そういった人は現在、増えていると思います。
このような人は、やはり自己破産を選択するのが適切だと思われますが(個人再生は安定した給料が維持されていることが条件になっていますから)、問題は同時廃止で処理できるかどうかです。
破産には同時廃止と管財事件の2種類がありますが、このうち管財事件は裁判費用が約40万円と高額です(弁護士や司法書士の報酬とは別に裁判所に支払う費用です)。提出書類の数も多く期間も長期化しますので、出来れば同時廃止で済ませたいのが破産を試みる人の素朴な感想でしょう。一方、同時廃止ならば裁判費用は通常5万円以下と格安です。
しかし同時廃止を試みる時に障害になるのが不動産です。不動産は高額の財産なので同時廃止のような簡略化された手続ではなく管財事件で処理したいというのが裁判所の本音だからです。
その際、名古屋地裁の場合、こういうケースならば不動産を持っていても特別に同時廃止にして良いという基準を発表しています。それは以下のようなものです。
固定資産税評価額を調べて(市区町村役場の税務課という部署で調べることが出来ます)、その評価額を土地ならば2倍、建物ならば1.5倍して評価額の合計を出します。評価額の合計と住宅ローンの残債務額を比較してローンの残債務額の方が上回れば、その不動産は無価値とみなして同時廃止で処理して良いということになっているのです。
現在は不動産価格は下落傾向にありますので、この条件に当てはまる人は結構いるでしょう。住宅ローンが払えなくなって破産したいけど、管財事件の費用はとても払えないと考えている人は検討してみると良いでしょう。
1月
11
2012
代位弁済とは一般の人にとっては聞きなれない言葉だと思います。しかし、この言葉は銀行に対する借金が返せなくなると必ず耳にする言葉です。
銀行ローンを借りる時には、消費者金融とは違って、ほとんどの場合で保証人を要求されます。しかし、最近では少額のカードローンを銀行も用意していて、これに関しては保証人不要となっているケースが多いのです。
ところが、ここが銀行らしいところですが、決して銀行は損しないような仕組を作っているのです。これが保証会社と呼ばれるものです。
保証人が不要の銀行のカードローンであっても必ず保証会社は付いています。(最近では高額の住宅ローンでも保証人ではなく保証会社になっているケースが多くなっています)
保証会社とは債務者が返済できなくなった時、銀行に対して代わりに支払ってくれる存在です。だから銀行は絶対に損はしないようになっているのです。
保証会社を付ける時には保証料が必要です。保証会社は銀行が損しない為に付けるのですから、本来、保証料は銀行が負担すべきものだろうと私は思うのですが、現実はそうなっていません。保証料は借りる時に債務者が負担するのです。(いかに銀行が保護されているか良く分かるでしょう。彼らはリスクを一切取らないで稼いでいる訳です)
そして、現実に銀行ローンが返せなくなった時に保証会社が代わりに銀行に支払うことを代位弁済と呼ぶのです。
このように書くと代位弁済によって債務者は支払義務から解放されるものと勘違いされている人もいるかもしれません。残念ながら全く違います。
代位弁済の後は、銀行に代わって保証会社が債権者になって債務者に取り立てるのです。そして、一般的に保証会社の方が取立てが厳しいのが普通です(銀行は損しないように保護されていますから品良く振舞えるのです)。
銀行のカードローンの中には消費者金融が保証会社になっているものすらあります。銀行から借りているつもりが、返済が滞った途端、取立てが消費者金融になったという笑えない話が現実にある訳です。
債務整理の場合、銀行は法定利息で貸していますので、利息の引き直しで減額になることはありません。従って、任意整理で登場することは、ほとんどない訳です。
銀行ローンの債務整理と言えば、ほとんどが自己破産や個人再生となります。破産や再生を考えている人は代位弁済という言葉を覚えておいた方が良いでしょう。
4月
30
2011
名古屋地裁における自己破産同時廃止の際の自動車の扱いが変更になりました。
具体的には国産自動車の無価値基準(一定の条件を満たせば無価値と判断してもらえる)が新車登録から5年だったのが7年と延長されたのです。以前よりも評価が厳しくなったと言えるでしょう。
以前は登録から5年以上経過していれば、国産車であれば無条件で無価値と認められていました(ある意味、甘い基準だったと言えます)。故に、ローンが残っていなければ、5年以上の車は手元に残った訳です。今回、この期間が7年に延びてしまいました。(もっとも7年以内でも、車自体に価値が無いことを証明できれば車を残すことは可能です。無論、ローンが残っていないことは絶対条件です)
また、以前とは違って、7年経過していても無条件には認められなくなっています。新たに新車時の価格が300万円以下という条件が加わりました。(レクサスのような外国車なみの高級車が増えてきたのが原因と思われます) しかも、300万円以下であっても、中古車市場で高額の取引がされている可能性がある場合は例え7年経過していても査定書を裁判所に提出しなくてはならないという規定も加えられました。(随分と裁判所が疑り深くなったようです)
今回の変更により、高額の国産車を所有している場合は、以前よりも処分の可能性が高まったと言えるでしょう。
1月
06
2011
皆さん、明けましておめでとうございます。今年も、よろしくお願いします。新年は4日から営業しておりましたが、ブログは本日が今年の最初になります。
さて、破産の話題が積み残しになっていましたので、続きをやりたいと思います。
最近の破産では多額の費用がかかる管財事件が増加して、同時廃止事件が減少傾向にあるという話でした。今回は、そうなってきた原因について考えてみたいと思います。
これは、あくまで私の推測になりますが、近年の弁護士の大量増員が背景にあるのではないかと考えております。
何故、そのように考えるかと言うと、最近、新聞紙上でも話題になっている弁護士の卵の就職難が非常に問題になっているからです。
弁護士と言っても、すぐに仕事が出来るようになる訳ではなく、当然、何年かは先輩の事務所で修行をする期間が必要な訳です。また、全ての弁護士が独立開業する訳ではありませんので、そのまま事務所に就職して勤務弁護士になる人も当然います。都会の弁護士の場合は、独立よりも勤務の方が多いでしょう。特に都会において弁護士が増加した為に仕事が無くて就職できないケースが増えている訳です。
そして、ここからが肝心なのですが、破産の管財事件で管財人になるのは通常弁護士です。管財人の報酬は1回の破産で20万から40万になります。結構、良い報酬だと思いませんか。(まあ、弁護士の目から見たら安いのかもしれませんが) ということは管財事件が増えれば、今まで就職難で困っていた弁護士にとっては非常に、ありがたいことになります。
ここまでくると、私が推測を立てた理由も分かって頂けると思います。「弁護士の就職難が叫ばれるのと、ほとんど同じ時期から管財事件が増えてきた」 果たして、これは偶然でしょうか。偶然にしては出来すぎていると考えるのは私だけでしょうか。
もし、私の推測が一部でも正しかったとしたら、まことにケシカラン話です。管財事件が増えて困っている破産希望者は確実に増えているからです。少なくとも今まで同時廃止で問題なく通過していたのに、最近になって急に管財事件に回されるようになったことについて裁判所は明確な回答は出していません。だからこそ、このような推測が出てきてしまう訳です。
もし裁判所や弁護士会が、この推測を否定するならば、皆が納得できるような明確な理由を示すべきでしょう。このままでは明らかに破産希望者が不利益を被ってしまうからです。
(一部の弁護士法人、司法書士法人が大量に杜撰な書類を出すからだという噂も聞こえてきたことがあります。もちろん、それが真実なら早急に改めさせるべきだと思います。しかし、だからと言って裁判所が同時廃止事件を減らす理由になるかというと疑問です。それこそ、弁護士会や司法書士会が厳しく指導したり処分したりすれば良いのであって、裁判所が間口を狭くする理由にはならないように思えます)
12月
07
2010
過払いの話が続きましたので、本日は破産について話したいと思います。
任意整理や過払金請求が増加したからかもしれませんが、破産の件数自体は一時期よりも若干減っているようです。ただし、今後は業者の業績悪化や、改正法による利率の引下げなどによって任意整理や過払金請求は減少してくると予想されますので、破産が再び増加してくる可能性があります。そこで最近の破産の状況について説明しましょう。
このブログの破産のシリーズでも書きましたが、破産には大きく分けて管財事件と同時廃止事件があります。ところが実際に裁判所に申し立てられている破産の8割以上が同時廃止事件です。何故、このように偏った件数になっているのでしょう。
実は同時廃止とは財産を、ほとんど持っていない債務者(名古屋の場合は40万円以下)を、より簡単で安い費用で処理できるように定められた手続なのです。まあ、債務者の味方と言っても良いかもしれません。これに対して管財事件は裁判所に払い込む費用だけで40万近くかかるという(弁護士・司法書士費用は別)、破産を考えている債務者にとっては非常に厳しい手続となっています。
従って、これまでは圧倒的に同時廃止事件が多かったのですが、最近になって、ちょっと異変が起こっています。裁判所が今まで同時廃止として認めていたようなケースで管財に変更になる場合が増えてきたのです。何やら裁判所の方針として管財事件を増やす方向で考えているようなのです。
例えば、今までは事業主は管財事件になることが多かったのですが(事業主は売掛金や在庫などを持っている為、財産調査に精密さが求められる為です)、それでも過去に事業をやっていて破産にかかる借金が始まったのが事業を止めた後からのものであった場合は同時廃止が認められていました。あるいは、今現在、事業を継続中であっても、実質、一人で経営しているような従業員のいない零細の事業主や事務所は、やはり同時廃止が広く認められていました(一人ならば、売掛金や在庫も、それほど多くないのが普通ですから)。
ところが最近では、今まで認められていた上記のようなケースでも管財事件に回されることが圧倒的に多くなったのです。
これは正直、改悪だと私は思います。破産とは債務整理における最終手段です。他の手段では、どうしようもなくなった人が最後にたどりつくのが破産という手続なのです。医療で言えば手術のようなものかもしれません。それにもかかわらず、この最後の手段の選択のチャンスを非常に狭くしてしまっているからです。
任意整理や個人再生が選べなかった人は、他に破産という手段が残されていますが、破産が選べなくなったとしたら他に選ぶ手段がありません。これは大問題です。
では何故、このような傾向に裁判所が傾いているのでしょうか。次回は、これについて私の考えを述べたいと思います。