1月
17
2013
自動車の取り扱いの変更で、自動車が手元に残ったのが印象的な事例です。
Tさん、男性、住宅ローン有り
40代、会社員
借入先 6社、 借入総額 約900万円
当初、住宅ローンを組んだ時には問題なく返済できていたんですが、途中、転職になりボーナスの額が大幅に減ってしまった時から住宅ローンのボーナス払い分の返済が苦しくなりました。それで、ボーナス払いをのりきる為にクレジットカードや消費者金融のキャッシングを利用するようになりました。今、考えると、これが全ての始まりだったように思います。
一向にボーナスが上がる気配も無いので、貸金業者への返済のたしになるかもと思い、パチンコを始めてしまいました。学生時代は結構、勝っていたので、何とかなるかもと思っていたのですが、現実はそんなに甘くはなく、かえって借金を増やすことになってしまいました。
悪いことは続くもので、こんな苦しい時に入院が必要な病気にかかってしまいました。退院した後も元の体力は戻らず、前と同じようには働けなくなってしまいました。それが原因で、結局、再び転職することになり、今度はボーナスだけでなく毎月の給料も減ってしまいました。ただ、体力的には前の会社よりも楽だったので、徐々に体調は良くなっていきましたが、その代わり、経済的には一層、苦しくなり、借入の金額が増えていきました。
丁度、この頃、子供の学費がかかる時期に重なりました。とても貯金では対応できず、日本政策金融公庫から学資ローンを借りることになりました。自分のせいで子供の将来を狭めるようなことは、どうしてもしたくなかったのです。
より生活が苦しくなり、毎日、借金の支払いをどうするかを考えるようになり、精神的にも追い詰められていきました。夫婦ゲンカも多くなり、妻とは別居するようになりました。妻の収入があてにできなくなったので、ついに住宅ローンの支払いが苦しくなり、このままでは住宅を失ってしまうという危機感が高まり、もう普通の方法で借金を払っていくのは無理だと観念して債務整理を考えるようになりました。ネットで調べるうちに住宅を維持しながら他の借金を減らせる方法があることを見つけ、司法書士の先生にお願いすることにしました。
最初は、住宅が守れるなら、車はあきらめるしかないかと思っていましたが、先生に聞くと、「最近、取り扱いが変わったので、車は残るかもしれない」と言われました。それで手続を進めていくと、本当に車が残りましたので、すごく助かりました。正直、都会ではないので、車がないと生活が非常に不便なのです。
無事に支払える金額に減額され、住宅も車も残り、妻も最近では理解してくれるようになってきました。本当に手続をして良かったと思っています。
○司法書士からのコメント○
相談に来られた時には、かなり切迫した状況でした。もう少し遅くて住宅ローンの滞納が始まっていたら、これほどスムーズには進まなかったかもしれません。(他の借金の滞納はありましたが、住宅ローンの滞納はありませんでした)
車の件では、最高裁判所の判決が出てから取り扱いが変更になり、現在では、車検証の所有者名義がローン会社になっていない場合は、ローン会社は車を引き上げることが出来ないということになっています。今回の件は、これに該当した為、ローン会社も車の引き上げをあきらめました。ラッキーだったと言えるでしょう。
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9月
20
2012
住宅金融支援機構という組織があります。住宅金融公庫という昔の名前の方がなじみのある人も多いかもしれません。住宅ローンを組んでいる人のうち、かなりの割合でここのローンを利用しています。日本では最も有名な住宅ローンを提供する組織と言ってよいでしょう。
住宅ローン特則付個人再生を検討している人も、多くは住宅金融支援機構のローンを組んでいます。私が依頼を受けた経験で言うと8割から9割の人が当てはまるのではないでしょうか。
個人再生を検討している人は当然、住宅ローン以外にも多額の借金がある人ですから、少しでも返済額を減らしたいという要求があります。特に個人再生の場合、裁判所で支払可能性についての審査がありますので、収入に対する住宅ローンの割合が多すぎる場合、審査で引っかかる可能性が出てきます。
こういう場合に役に立つのが住宅金融支援機構のりスケジュールの制度です。簡単に言うと、支払いが苦しくなった人に向けて返済計画を変更する制度のことです。略してリスケと呼ぶこともあります。
これには、一定期間(3年のことが多い)支払額を減らしてくれる変更が含まれていますので、個人再生との相性がいいのです。個人再生は、3年間で他の借金を減額して返済する計画になっていますから、3年間、住宅ローンの返済額を減らしてくれたら、3年後には他の借金は無くなっている訳ですから、ちょうど良いのです。
実は、この制度は普通の民間銀行の場合、なかなか取り扱っていないのが実情です。民間銀行の場合、苦しいから返済計画を変更してくれと言いに行くと、なんと、「じゃあ、自宅を売却して返済して下さい」とか平気で言ってきます。血も涙も無いとはまさにこのことでしょう。(こんな調子だから民間銀行は嫌われるのでしょう。よく官から民へと言われますが、すべてに当てはまることではないという、いい例です)
私は、この制度がある為に、多少、金利が高かったとしても、住宅ローンは住宅金融支援機構を利用すべきだと考えています。今の時代、先行きがどうなるかは誰にも分かりません。いざという時に返済計画の変更に応じてくれない民間銀行は非常にリスクが高いと言えます。
同じ理由で、頭金が少ない為に、複数の住宅ローンを組む場合には、住宅金融支援機構から限度額一杯まで借りてから、残りを民間銀行にするのが良いでしょう。
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8月
30
2012
個人再生を選択する場合、3年間かけて減額した債務の支払いをすることになるので、定期収入があることが条件になります。しかし、長引く不景気の為、雇用が不安定になり、定期収入の確保が難しくなっているのが実情です。
その場合、例えば、派遣社員や契約社員は個人再生が可能なのかという質問がよくあります。結論から言うと、可能です。ただし、手取り給与の額が、減額された後の債務額を月割にした金額に生活費を加えた額を上回っていることが必要です。この条件を満たしている限り、正社員でなくても個人再生は可能なのです。
もちろん、3年間支払っていく手続きですから、3年以内に派遣や契約の打ち切りの見込みが低いことも重要な条件になります。まあ、これに関しては未来のことは誰も正確には分かりませんから、現時点での見込みということになります。(明らかに来年、打ち切りの予定があったりする場合はダメということです)
では、派遣社員・契約社員の給料だけでは個人再生の支払条件を満たさない場合は、あきらめるしかないのかと言うと、そうとも限りません。こういう場合の方法としては、次の二つが考えられます。
一つは、同居の家族の収入を合算することです。同居の家族の収入は、個人再生の支払可能性を判断する際に、加えることが認められています。配偶者が働いていれば最も分かりやすいですが、祖父母の年金収入でも祖父母の了解があれば加えることが出来ます。依頼人の中には、個人再生の条件をクリアする為に、祖父母と新たに同居した人もいます。
一方、子供が働いている場合の収入は、裁判所は辛く見る傾向があります。何故なら、子供は自分の収入を全額、自分のために使ってしまう場合が多いからです。今どき、実家に収入の一部を入れる子供は珍しいと裁判所は判断している訳です。
二つ目は、副業(アルバイト)をすることです。正社員ではありませんから副業は禁止されていない場合も多いでしょう。これで実質の収入を増やす訳です。もちろん長期的に勤めることを裁判所に納得させることは必要です。
このやり方の注意点は、あまり、はりきりすぎると健康を害してしまい、元も子もなくなる可能性があることです。あくまで、長期間、続けられる程度にしておかないと、後で取り返しのつかないことになりますので気をつけましょう。
あと、付け加えると、現在は無職の人であっても、就職の内定の証明が出来れば(ハローワークの証明書など)、個人再生の手続きは可能です。
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8月
02
2012
日本政策金融公庫という、政府系の金融機関があります。かつての国民生活金融公庫と中小企業金融公庫が統合されて成立しました。民間銀行から貸し渋りにあいやすい中小企業向けの融資を中心に手がけているので、中小企業経営者には、おなじみの金融機関だと思います。
ここは、企業向けの融資が中心ではありますが、一部、個人向けの融資も行っています。その代表が子供の学費を融資する教育ローンです。最近は不景気の影響で、どこの家庭でも学費の負担が大変になっていますので、公庫の教育ローンのお世話になっている人も多いのではないでしょうか。(最近では民業圧迫の批判もあり教育ローンの規模は縮小傾向のようです)
しかし、不景気は予想以上に長引き、公庫の教育ローンが返せなくなっている人が増加しています。公庫の利率は当然、適法ですから任意整理という手段は使えません。法的に解決しようと思ったら、どうしても自己破産か個人再生という手段になります。
今回は公庫の教育ローンを個人再生で処理した場合についての、お話です。実は、国民生活金融公庫と呼ばれていた時代は、小規模個人再生を申し立てた場合、公庫の融資はリスク要因でした。何故かと言うと、小規模個人再生は裁判所の審査の後、書面決議と呼ばれるものがあり、ここで全債務額の過半数の反対が出ると不認可になってしまうからです。
公庫の教育ローンは個人の債務の中では金額の大きいことが多いので、公庫一社で過半数を超えてしまうことがよくありました。しかも、この頃の公庫は書面決議によく反対をしてきたのです。つまり、公庫の為に小規模個人再生が出来ないという事態が、よく起こった訳です。
ところが日本政策金融公庫になった頃から、公庫の態度に変化が訪れました。書面決議に同意するケースが増えてきたのです。これは個人再生を希望している債務者にとっては朗報と言えるでしょう。
何故、公庫の態度が変化したのか詳細は不明です。公庫の担当者に電話したところ、「反対して個人再生をつぶして、その結果、破産になってしまったら、より大きな損失になるから」と答えていましたが、それが理由なら国民生活金融公庫の時代も同じではないかと思いますので、実際には何か事情があるのでしょう。
しかし、個人再生が申し立てやすくなったことは事実なので、ここは素直に喜ぶべきところでしょう。ただし、担当者はこうも言っていました、「借りた後、ほとんど返済していないとか、明らかに不正の疑いがある時は今でも反対します」と。ですから、どんな場合でも同意してくれる訳ではないようなので、その点は注意しましょう。
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7月
27
2012
個人再生の申立件数は、全国の裁判所の発表を見ると、だいたい破産申立件数の10分の1くらいになっています。私は、これは少なすぎると考えています。
何故なら、個人再生は破産に無い多くのメリットがあるからです。例えば、
1 完全に支払不能の状態ではなくても申立が可能。個人再生の申立要件は「支払不能の恐れがある」状態です。
2 免責不許可事由が無い。100%ギャンブルで作った借金でも法的には制限が無い。
3 手持ち財産の換価手続きが無い。破産だと40万円以上の財産は換価しなくてはならないが、個人再生の場合は3年間の支払額の合計が手持ち財産の価格以上ならOK。その支払いも給料から支払えば財産の換価は不要。
4 何と言っても一番のメリットはこれ。住宅ローン特則が使える。これを使えば住宅を維持したまま、他の借金だけ減額できる。
5 小規模個人再生の場合(9割がた小規模個人再生です)、制限期間が無い。破産は一度免責を得ると7年間は申立が出来ないが、小規模個人再生の場合は、このような制限期間が設けられていない。
以上のように、様々なメリットが個人再生にはあるにもかかわらず、何故、申立件数は破産の10分の1しか無いのでしょう。これは、私は、多くの司法書士や弁護士の怠慢にあるのではないかと考えています。
私は愛知県司法書士会で、新人向けの個人再生の講義をしていた時期があります。この時に、破産に比べて個人再生の講義を引き受ける司法書士が圧倒的に少ないという事実がありました。単刀直入に言って経験者が少ないのです。実は債務整理の看板を掲げている事務所の中にも、実際には個人再生を経験したことが一度も無いという人が結構いるのです(この点は弁護士も同じだということを、ある弁護士さんから聞いたことがあります)。
最初は誰でも経験が無いのは同じです。しかし、新人でも1年もたてば、破産や過払金請求は一通り経験して出来るようになっていきます。ということは、個人再生の経験者が増えないのは別の原因がありそうです。ようするに、意識的に個人再生を避けている人が多いということです。
個人再生は債務者にとっては様々なメリットがありますが、扱う司法書士にとっては専門的で難しい部分が多くあります。また破産と違って手続きが長期間かかるので事務的にも大変です。そのような理由で避けられる傾向があるのでしょう。しかし、これは本末転倒です。
もちろん個人再生の条件に当てはまらない人は断っても仕方がありません。しかし、明らかに条件に当てはまっているにもかかわらず、他の事務所で断られたので私の事務所に来たという相談者がいるのです。このような状態だから申立件数が伸びないのでしょう。
少なくとも債務整理の看板を掲げている事務所は、条件に当てはまる人を断ることが無いようにして欲しいものです。
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10月
24
2011
久々に個人再生の話題です。
平成22年6月4日の最高裁判決の影響で個人再生における自動車ローンの扱いが変化した裁判所があるようなので注意が必要になりました。(まだ全国の裁判所に広がっているのかどうかは不明です)
注意すべきケースは車検証の所有者の欄にディーラー(販売店)が書かれている場合です。
理屈から考えるとローンが払い終わっていない場合、自動車の所有権はローンの担保としてクレジット会社に留保されている状態です。従って、多くのケースでは車検証の所有者の欄はクレジット会社になっているでしょう。
ところが、ローン未払いの時の車の引き上げや売却の関係で、この所有者欄がディーラーになっている場合も少なくないのです。これが問題をややこしくしています。何故なら、クレジット会社はローンを組んでいる以上、正統な所有権を主張する権利がありますが、ディーラーには無いからです。所有者欄がディーラーになっている法的な根拠を問われても、ディーラーは回答に困ってしまうでしょう。要は事務手続上の問題に過ぎないからです。
しかし、裁判所は法律を厳格に解釈して以下のような判断をくだす可能性があるのです。(実際に名古屋地裁本庁の再生係で、下された判断のようです)
その判断とは、車検証の上でディーラーが所有者となっている以上、クレジット会社に自動車の引き上げや、換金の権限は無い。従って、個人再生の際、クレジット会社が自動車を引き上げて換金するのは、特定の債権者に対する偏頗弁済(一部の債権者に対して多く弁済すること)となり違法である。もし、これを行うならば、クレジット会社が換金して返済された分を清算価値として計上(財産に加えて支払額を増やせということです)するべき、というものです。
このとおり処理すれば、換金された自動車の時価相当額は丸ごと清算価値に上乗せされることになり、自動車の価格によっては支払額の大幅アップに、つながりかねません。
以前の処理では、換金されても清算価値の増加は無く、クレジット会社のローン残額も減って、何の問題もありませんでした。今でも車検証の所有者欄がクレジット会社になっていれば問題なく、この処理が行なわれます。
要は、車検証の所有者欄がディーラーになっているか、クレジット会社になっているかで、やっている処理自体は同じなのにもかかわらず、著しく依頼人に不利になるケースが出てきた訳です。
ただし、清算価値は100万円までは支払額に影響を与えませんので、自動車の時価と、その他の財産を合わせても100万円に届かない場合は心配する必要はありません。今までと変わりがないと考えて良いでしょう。要は安い自動車に乗っている人は、あまり心配いらないということになります。(自分は軽自動車だから大丈夫とは思わないで下さい。軽自動車は最近、人気なので意外に時価は高かったりするので事前に調べた方が良いでしょう)
それにしても、単に引き上げ売却の際の都合で習慣化していた制度を、厳格に解釈して依頼人の経済的再生を、やりにくくしてしまっている裁判所の判断は疑問を感じます。今後、処理を重ねていくと多くの矛盾が出てくると思われますので、その中で少しでも改善されていくことを期待したいと思います。
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9月
02
2008
今回は書面決議を無事に通過した後の流れについて説明しましょう。
書面決議を無事に通過すると認可決定書という書面が裁判所から送られてきます。めでたく再生計画案が認可された訳です。(この時から、案の文字が取れて「再生計画」になると考えられます)
依頼人は認可決定が出ると「先生、ありがとうございました。これで終了ですね。」と言われる場合が多いのですが、実はまだ終わってはいません。認可決定が出た後、約1ヵ月後くらいに確定通知が裁判所から送られてきます(ちなみに確定通知を送るのは裁判所の義務ではないようです。名古屋の場合はサービスで送ってくれます。送ってくれない裁判所では忘れずに請求する必要があるでしょう)。
この確定通知が送られたら、司法書士または弁護士は、各債権者に向けて振込口座を知らせてくれるように通知を出します。債権者は、いつ確定したか分かりませんから待っていても振込口座は教えてくれません。こちらから聞きにいかなくてはなりません。
振込口座が全ての業者から知らされたら、それをまとめて依頼人に知らせます。これで、ようやく個人再生の終了となります。(弁護士の場合、手数料を取って振込の代行を引き受ける場合もあります)
いかがでしたか。結構、大変だったでしょう。うまくいけば、メリットも多いので、自分が当てはまると思ったら経験のある専門家を探してトライしてみて下さい。
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8月
20
2008
お久しぶりです。今回は2回目の面談についてです。
2回目の面談をむかえるにあたって、前もって再生計画案と言う書類を裁判所に出しておかねばなりません。面談は、この再生計画案について審査するのが目的です。再生計画案とは個人再生のルールに従って減額された金額を、各債権者に対して、どのように支払っていくかを定めた書類です。
では、再生計画案における支払方法について説明しましょう。まず、支払年数は基本的には3年です。特別の事情がある場合は、最長5年まで認められる場合があります(常に認められる訳ではないので、3年と思っていた方が無難です)。支払回数は毎月払いか、3か月おきかを選べます。支払忘れを防ぐ為にも、私は毎月払いをすすめています。あと、少額債権(他の債権者に比べて特に少額の債権)には特例として一括払いが認められています。これは義務ではありませんから、同じように分割にしても構いません(ただ、月払いの金額が数百円になるような時は一括にした方が良いでしょう)。以上のような原則をふまえて再生計画案を作成します。
2回目の面談は、再生計画案が適法に作成されているかどうか、支払いに無理がないかどうかをチェックされます。実際には、計画案は事前に提出してありますので、再生委員も目を通してきています。面談では、簡単な確認だけで5分~10分くらいで済んでしまうことが多いです。(正直、2回目の面談は、やる必要があるのかなと思います。書類審査だけで済ませても良いのでは、というのが私の意見です) 前回に説明しましたが、裁判官の面談の場合は、再生計画案は書類審査になります。支部裁判所や地方の裁判所では、そもそも面談自体がありません。再生委員がついた時だけ2回も面談をするのは、あまりにも負担に違いがありすぎると思うのは私だけでしょうか。
2回目の面談でも1回目と同じように、再生委員のOKが出ると「この再生計画案で問題無い」という報告書が出されます。そうすると、裁判所は「書面決議に付する決定」を出します。
書面決議とは、各債権者に向けて裁判所が、再生計画案と、その計画案に反対するものは送り返すように書かれた決議用紙を郵送して、一定期間内に返送されなかった債権者は賛成したとみなされる一種の投票行為です。この場合、住宅ローン特則を付けた場合の住宅ローン債権者は投票から除外されます。
書面決議期間が過ぎた後に、返送された反対票をカウントして、以下の条件を満たした場合は再生計画案は否決され、不認可となります。要するに個人再生は失敗したことになるのです。
その条件とは以下の二つです。①再生計画案で示された債権総額(減額された後の金額のことです)のうち、金額にして過半数の反対があった場合 ②再生計画案で示された債権者数のうち、半数以上の反対があった場合(金額ではなく、頭数を問題にしています)
ここだけ読まれると不安になる人も多いかもしれません。しかし、実際には反対をする債権者は、ほとんどいません。たまにいたとしても、上の条件を満たすほどの反対票が集まることは、ほとんどありません。少なくとも私が今まで扱った事件では一つもありませんでした。それは何故かと言うと、個人再生を反対して、つぶしても債権者には何のメリットもないからです。仮に個人再生が、つぶれたとしたら、その債務者が次に考えるのは自己破産です。債権者からしたら、破産されたら一銭も取れない訳ですから、それなら個人再生を認めて、いくらかでももらった方が良い訳です。そのような背景があるので、反対する債権者は実際には、ほとんどいないのです。
実は、個人再生には2種類の手続があって、今まで説明してきた手続のことを小規模個人再生と言います。これ以外に、給与所得者再生という手続がありますが、あまり使われていません。給与所得者再生には書面決議がありません。一見、有利な手続に思えますが、残念ながら大きな不利益が一方にあります。それは、給与所得者再生では大抵の場合、支払総額が小規模個人再生よりも大きくなってしまうのです。要はたくさん払うことになる場合が多いのです。先ほども説明したように、書面決議は実際には反対する債権者は、ほとんどいません。それならば、支払総額が低い方が債務者にとって良い訳で、結局、小規模個人再生を選択するのが圧倒的に多くなる訳です。
では、次回は書面決議を無事に通過した後の流れについて話しましょう。
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8月
05
2008
前回からの続きです。申立以降の流れについて説明します。
最初の書類審査がOKになると1回目の面談日が決められます。名古屋地裁本庁の場合、通常は再生委員が選任されますので、面談は再生委員と本人、それに司法書士が付き添うことになります。名古屋地裁本庁では司法書士の付き添いが認められていて同席することが可能です。個人再生のような複雑な手続を本人だけでやられては指導するのが大変だというのが裁判所や再生委員の考えなのでしょう。ちなみに面談の場所は裁判所です。当たり前だと思わないで下さい。東京では再生委員の事務所(要するに弁護士事務所)で面談をすることが多いと聞きます。
面談では、いろいろなことが聞かれますが、圧倒的に多くの時間を占めるのが「支払能力があるか」と言う点です。この辺りは特定調停と似ていますね。この面談で再生委員のOKが出ると、再生委員が裁判官に対して「問題無い」という報告書を出します。そうすると裁判官は事務的に開始決定を出すことになっています。
ちなみに運良く再生委員が選任されなかった場合は、1回目の面談は直接、裁判官とすることになります。この場合も司法書士の同席は認められています。質問の内容やその後の流れは再生委員がいる場合と同じです。ただ一つメリットがあって、裁判官と面談した場合は面談が1回だけで済みます。これは大きなメリットです。
あと、本庁以外の支部裁判所や地方の裁判所だと、そもそも再生委員がいないので面談自体がありません。裁判官が面談できるじゃないかと思われるかもしれませんが、何故か裁判官も面談しません(するところもあるかもしれませんので、事前に調べた方がいいですね)。要するに、これらの裁判所だと書類審査だけで手続が進んでいくのです。従って、個人再生に関しては裁判所によって、本人や司法書士の負担が全然違ってきます。故に裁判所によって費用を変えている司法書士が多いようです(当事務所でも、そうしています)。
開始決定が出ると、債権者一覧表が各債権者に郵送されます。各債権者は一覧表に記載された金額に文句がある場合は、債権届を出すことが出来ます。債権届が出された場合、申立人は二つの選択をすることが出来ます。一つは何もせずに債権届の金額を認めることです。届けられた金額が債権額になります。もう一つは、債権届の金額に対して異議を出すことです。
異議を出すと、どちらの主張する金額が正しいのか決めなくてはなりませんから、その為の手続である評価申立が行われます。しかし、現実には異議を出すことは、ほとんどありません。何故かと言うと、500万円を超えない限り債権届を出されても総支払額に変化は無いからです。500万円までの支払額の決め方は、100万円または清算価値の、どちらか多い方ですから、債権額が変化しても支払額に影響がありません。利息制限法の利率に引き直した後の債権額が500万円を超えることは、めったにありませんから、異議を出すこともほとんど無い訳です。
このようにして債権届出期間が終了した後は、いよいよ2回目の面談になります。続きは次回に譲りましょう。
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7月
29
2008
6回目は、いよいよ個人再生申立以降の実際の流れについて説明しましょう。今回も名古屋地裁を例にして話をすすめます。
申立の際に必要なのが、申立書類一式(家計簿・財産目録・陳述書・債権者一覧表・清算価値算出シート・住宅特則を利用する人は弁済許可申立書)、証拠書類(第5回で説明した各種書類のこと)、債権者宛名シール(裁判所が債権者に郵便を送る時の為に提出)、債権者一覧表のコピーを債権者数分(開始決定が出た後で裁判所が各債権者に送る為に提出)、予納郵券(切手の事です)、収入印紙、予納金になります。
この中で予納金は、金額が大幅に変わる可能性があります。通常、名古屋地裁では再生委員という役職が選任されることになっていますが、この再生委員の費用が高い為に、予納金が10万円近くかかってしまいます。(と言っても首都圏よりは、これでも安い方です。いかに首都圏の費用が高いかが分かります)
しかし、事件の内容が複雑でない場合、再生委員が選任されない時があります。こうなると、予納金は3万円以下になりますので、ぐっと安くすみます。では、事件の内容が複雑でない場合とは、どのような場合かが当然、気になるところですが、残念ながら明確な基準はありません。その時、その時で裁判官が個別に判断しますので、出してみなければ分からないというのが現実です。まあ、あまり期待するとダメだった時にがっかりしますから、通常は再生委員がつくものだと考えておいた方が良いでしょう。
ここでちょっと補足しておきますが、郊外の支部裁判所や大都市圏以外の裁判所においては再生委員が選任されないのが普通です。何故かと言うと、再生委員にはたいてい地元の弁護士が選任されることになりますが、大都市圏以外は弁護士の数が少ない為、再生委員のなり手がいないからです。従って、上記の裁判所においては申立費用は大都市圏よりも安くなります。弁護士の都市偏在が理由で申立費用に10万円近い差が生じる訳ですから、これは大変に不公平な制度ではないかと私は考えています。
以上で申立は終了です。後は、裁判所が申立書類と証拠書類を審査します。名古屋地裁の場合だと1~2週間で審査の回答が送られてきます。郊外の支部裁判所だと審査期間はもっと短くて、早いところだと翌日のこともあります。
審査の結果、追加書類を求められたら追加書類を出すことになります。それで特に問題無いということになったら、いよいよ第一回の面談になります。
では、この後の話は次回に譲りましょう。お楽しみに。
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