司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

1月 30th, 2010

1月 30 2010

シリーズ 過払金⑩ 最近の過払事情(1)

 今回は司法書士事務所の面談について話をする予定でしたが、予定を変更して最近の過払事情について話をします。

 何故、予定を変更したかと言うと最近の過払金請求をめぐる情勢が以前と比べて大幅に変わってきたからです。このブログで過去に書かれた説明の中で実態と合わなくなっている部分が出てきているので、ここで最近の変化について説明しておく必要があると考えました。

まず最大の変化は各業者の支払状況が急激に(本当に急激に)悪化してきているということです。

この傾向は昨年の秋以降から顕著になってきました。まず、引き直し計算をした後の任意の和解が、ほとんど出来なくなりました。

以前は任意請求(訴訟をしないで請求すること)をしても、元金ならば満額で支払ってくる業者が、ほとんどでした。ところが、今では任意請求の段階では、元金の5割くらいしか提示されません。それでもマシな方で、ひどい場合は1割や2割と言ってくる業者も現れています。

それでも大手は大丈夫だろうと思われている方もいるかもしれませんが、今回の変化は大手も含めて起こっている現象なので事態が深刻なのです。武富士・アコム・アイフル・プロミスと軒並み任意請求の段階では以前には考えられなかった大幅な減額を主張してきます。

こうなると当然の結果として、まともな事務所ならば、過払請求のほとんどが訴訟になってしまいます。今や訴訟にならない事務所は、かなり低い金額で和解している可能性がありますので注意が必要です。

つい最近ニュースで昨年1年間の裁判所に持ち込まれた過払金請求事件が過去最高の件数になったと報道されていました。どうもマスコミ関係者は過払金の件数自体が昨年に急激に増加したと考えているようですが、これは間違いだと思います。

実は過払請求の件数は頭打ちになっています。むしろ業者の支払が悪くなっていますので、1件あたりの支払額は低下しています。要するにマスコミで騒がれているような過払金バブルは、もう峠を越しているのです。では、何故、裁判所の過払事件の件数が過去最高になったのでしょうか。

ここまで読んできた皆さんには、もうお分かりでしょう。そうです。今まで任意請求で終わっていた過払事件が、ほとんどすべて裁判所に持ち込まれるようになってしまったからです。訴えないと払わない訳ですから、まともな事務所ならば訴訟にせざるを得ません。こうして全国の司法書士・弁護士事務所から膨大な数の過払訴訟事件が裁判所に提起されました。今や、裁判所は大混雑で、口頭弁論期日が2ヵ月後、3ヵ月後になってしまうケースも出てきています(通常は1ヵ月後)。

裁判所だけ見ていると、「ああ、相変わらず過払事件は多いんだな」と思ってしまうかもしれませんが、現実はそうではありません。先ほども述べたように件数は頭打ちで、1件あたりの金額は減っているというのが真実なのです。

 では、このような状況の中で依頼する側が注意すべき点を次回は説明したいと思います。